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ドックレース:木内一裕:お見事!エンタテインメント

「ドックレース」(60/2022年)

矢能シリーズだったんですね。まあ、この設定はシリーズものですよね。もと暴力団員の私立探偵、矢能さん、なんともエンタメなキャラクターです。その彼に、血の繋がらない娘ですから。このてんこ盛り設定を、よくぞスマートに捌いていますね。木内の筆力、凄いです。

コカインの売人が逮捕された。芸能人カップル殺人事件、まったく身に覚えのない冤罪で。その売人が頼ってきたのが矢能さんです。早々に裏の社会のつながりで完璧なアリバイがあることが判明し、売人の無実は確定します。しかし、その事情を表の世界で説明することは不可能、、、ってところから物語は高速回転していきます。

とにかく早い。次々に場面が展開していきます。矢能さんの過去のヤクザとしての「立場」「力」がなせる技なのですが、爽快感120%で調査が進んでいきます。
この展開が心地よいのが、ベースがオーソドックスな警察小説だからだと思います。手段は違えど、結局は地道な捜査を描いた警察、事件解決ストーリーなのです。
木内の凄いところは、警察前提で描けるエンタメの限界を知り、とっとと見切りを付けて、ヤクザの世界に振り切ってしまったところだと思います。これと同じようなスピード感の警察小説だと、陳腐な2時間ドラマになってしまいますから。

シリーズ全体の背景のもう一つの物語にも惹かれます。この先、娘はどうなっていくのでしょうか?最終的には娘の物語でクライマックスを迎えるのだろうという期待を持ちつつ、シリーズ、待ちます!

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