あの日の恋をかなえるために僕は過去を旅する:西澤保彦:穏やかなタイムスリップ
「あの日の恋をかなえるために僕は過去を旅する」(90/2022年)
こういう穏やかなタイムスリップもの、珍しいかもしれません。登場人物の設定は穏やかじゃないんところもあるんだけど、そこはサラリと流して、でも後々ボディーブローのように効いてくるんだけど、その辺は西澤節炸裂、でも全体的に非常に優しいんです。
20年前に『異邦人』という名で発表されていた作品の再発もの。ま、タイトルに関しては、、、ですが、あまり気にしないで良いと思います。
主人公は40歳の男性。あまり気の進まない里帰りの為、大晦日に空港にやってきた。そこのトイレに入ったことがきっかけで、いつのまにか20年以上前の世界にやってきます。
タイムスリップしたことを認知するまでの主人公が面白いです。驚愕するでもなく、否定するでもなく、ただ徐々に理解して、状況を受け入れ、さらにそれをちゃんと理性的に確認する手段を思い付き、実践していくところ、実に良いです。この穏やかな雰囲気が非常に不安定なんです。突如異常事態に巻き込まれたのに、ほどほどにしかこの異常に動揺しない主人公、ちょっと変じゃないですか。
でも、この変な主人公が生まれ変わるのがメインテーマなので、この序盤のおかしな感じがピリリと効くのです。
新タイトルには「恋」という文字が入っているので、読む前から恋愛要素があるという認識になりますよね。それが良いのか悪いのか、僕には分かりません。
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