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パノラマ島奇談:江戸川乱歩:作家は凄い。

「パノラマ島奇談」(37/2021年)

何を今更、電子書籍でなければ絶対に読まないであろう作品を死ぬ前に読む計画、第五弾です。『新青年』1926年10月号から1927年4月号に5回にわたって連載された作品。

実は、子供版ではない江戸川乱歩を読むのは初めてかもしれません。まさに今更なのですが、不思議な気持ちがします。ミステリというよりファンタジーなんですね、ちょっとエロチックな。確か、昔、僕が小学生の頃なんで1970年代かと思いますが、俳優・天地茂が明智小五郎役をやっていた土曜日の2時間ドラマには、裸の女性が出てきてドキドキしていた記憶があります。

本作はエロというよりは耽美という雰囲気、退廃的美学の一歩手前、アメリカンではなくフレンチな感覚。入れ替わりのミステリなんですが、ただの「そっくりさん」という時点でファンタジーです。その前提で、主人公が生み出すアブノーマルな世界を楽しむ。1920年代にこの発想は凄いです。今では実現していることもありますから、何と言う先見の名でしょうか。やはり作家と言う職業の人は凄いんだな、と改めて思いました。

でも、ウィキペディアには下記の記述があります。

乱歩は探偵小説の王道というべき本格派を志向していたが、それらの作品は大衆からあまり支持されなかった。大衆は幻想・怪奇小説、犯罪小説に分類できる変格ものと称される作品を好んだ。

様々な思いで執筆していたのでしょう。次は「本格」を読んでみたいと思います。

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