身分帳:佐木隆三:情弱はよくない、猛省。

「身分帳」(98/2020年)

ノンフィクションなんですね、という非常に情弱な感想をもってしまいました、すみません。佐木隆三という作家、もしかしたら初読かもしれません。ノンフィクション、エッセイ系を頑なに避けてきた弊害で出てしまいました。ジャンルで差別するのは本当によくないことだと、再認識。

四十になって刑務所から出てきた男の物語。人生の半分以上を刑務所(少年院)で過ごしてきた前科10犯の主人公。彼のキャラが本当に不思議。物凄く頭が良い。獄中から自力で法に訴え出るパワーは持っている。でも、うまくいかない。すぐに切れる。

出所しても同様。自分の立場はちゃんと理解している。人に相談したり、ちゃんと考える力はあるのに、何か切れてしまう。すぐに暴力を行使するようなタイプではないのに、なんかズレてしまう。

世の中に対して実直すぎるのかもしれない。ちゃんとしたいのだ。で、何かちゃんとしていないことに直面すると、自分の中の歯車の回転がズレてきて、バーストしてしまう。そのタイミングが悪いだけの人なのかもしれない。

それにしても主人公の生い立ちの激烈なこと。あまりにも凄すぎる設定だなと思っていたのだが、これ、リアルなんですね。事実は強い、強すぎる。こんな奇想天外、創作するの、難しいよね。

よくもまあ、こんな珍しい人を見つけてきたものだ、佐木隆三、凄すぎる。

そして、こんな凄い作家を見逃していた自分、情けなさすぎる。猛省。

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