特捜部Q―自撮りする女たち─:ユッシ・エーズラ・オールスン:全てが解決する快感

「特捜部Q―自撮りする女たち─ 上」「特捜部Q―自撮りする女たち─ 下」(055,56/2020年)

シリーズ第7弾です。本作解説の霜月蒼も書いてますが、ここから読んでもOKです。そこが凄い。警察小説としての完成度が高いので問題ありません。

Qは過去の未解決事件を扱う、正直署内では日蔭のセクションです。オフィスも地下だし、スタッフも普通とは少し違う面々だし。でも、その部署が結果的には大活躍するという、まあ「よくある」パターンなのですが、その緻密に組み立てられた解決への道筋が素晴しい。

今回で言えば、10数年前の殺人事件が最近のモノと似ている点があるところに気づくところから始まるのですが、そこに強盗とひき逃げがからんでくる。この強盗とひき逃げがやっかいで、読者はそのつながりを当然知ってるけれども、あまりにも突飛なつながりなので、登場人物たちはその関連に気が付くわけがない。それを読者はやきもきしながら読み続ける。いつ、どうやって、主人公・カールたちは事件の本質に気が付くのだろうか?

逆に二つの殺人事件に関しては、読者も真実を知らない。カールたちが真実に迫るのを一緒に見守る。そこは王道の警察小説の醍醐味。

そして本作最大の問題。Qのローセの壮絶な過去が明らかにされる。その悲劇をひきずったまま生きるローセを救うために、カールたちはある事件に立つ向かうことになる。

全ての事件が解決されるまで、一気読みまちがいなし。デンマークが舞台ですが、その辺を気にすることはありません。事件の渦に引き込まれ、そこから抜け出した時の快感、是非味わっていただきたい。


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