QED～ventus～ 鎌倉の闇：高田崇史：かわいそうな源氏

「QED～ventus～ 鎌倉の闇」（91/2022年）

ＱＥＤ　～ｖｅｎｔｕｓ～　鎌倉の闇 (講談社文庫)

大河ドラマ、全録画でまだ初回しか見ていないのですが、これを読んでから見た方が面白いの確実です、良かった。

なぜ鎌倉か。それはなぜ江戸か、と同じ理由に決まってますよね。人気のない場所だから空いていた。人気のない人間が人気のない場所を押し付けられた。でも、大きく違う点があったのですね。家康は敢えてそれを承知で選んだ。しかし頼朝は北条氏に誘導された。
そして非常に攻め込むのが難しい難攻不落の都市鎌倉は、裏を返せば脱出も困難なのだという指摘は白眉。誰の目線で、どの立場で現実を解釈するかによって景色は一変するのですね。

まあ、3代で源氏が絶えている時点で「闇」だらけでしょうよ。言われてみれば当たり前ですよね、続けようと奮闘した人が皆無ってひどくないですか。いや、いたのか、きっと。でも、あまりにも非力だった。そして天皇と違って継続のメリットが非常に少なかった。かわいそうな源氏のみなさんです。

現代で起きた殺人事件に巻き込まれて失踪した社長もこの源氏と同じくかわいそうな方ですね、鎌倉の闇よりはマシですが。よくあるトリックでしたが、こうやって鎌倉幕府とシンクロさせると趣があって良いと思いました。

あと本作は観光ガイドとしても非常に優れていますね。行ったことのある鎌倉だからそう思ったのかもしれませんが。