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来春まで-お鳥見女房-:諸田玲子:やわらかな江戸もの

「来春まで-お鳥見女房-」(89/2022年)

たまには、こういう優しい物語にも触れないとね。「お鳥見女房シリーズ」ねんですね、2001年からスタートしてこれで第7弾、2013年発表です。前の流れは知らずとも、十分に、逆にあれこれ想像しながら読めたのでより楽しく読書が出来ました。

舞台は王道の日本橋界隈ではなく、雑司ヶ谷、鬼子母神界隈というのも素敵です。ちょっとテンポが違う。商人の影が薄くなるからかもしれません。
主人公の珠世が周囲に起こる様々な騒動を解決するわけですが、自ら率先して処理していくのではなく、見守って、流れの中でポンとサジェストしてあげて収束方向に誘導していくオトナな対応が粋です。

「女ごころ」「新春の客」「社の森の殺人」「七夕の人」「蝸牛」「鷹匠の妻」「来春まで」の7編。将軍の鷹狩りの下準備を担うお鳥見役の矢島ファミリーも色々と大変です。
中でも「来春まで」かな。たかがしゃぼん玉売り、身内でもない人に対するこの待遇は過剰かもしれません。でもいいじゃないですか、江戸ものの良い所じゃないですか。他の短編では、けっこう厳しい世間を反映しています。最後に、このくらいギュっと心を温めても。江戸もの、良いです。


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