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月の裏に望む:ことわ荒太:ネタバレ無しで書いてみました

「月の裏に望む」(29/2021年)

短編集だと思って読み始めたら、連作集だった系の作品です。それ以外の先入観を持たないで読んだ方が楽しいと思うので、具体的な内容には触れないでおきます。

実に「中途半端」に終わります。ほとんどの登場人物が、決着を付けない状態で作品は終わります。要は、読者に丸投げです。僕はとても気持ち良かったです。

明確な主役もいません。読む人によって、主役は違うのではないでしょうか。それぞれの登場人物の人間関係が徐々に明らかになっていく感じはミステリっぽくて楽しいです。あ、あくまでも「ぽくて」なので、全ての人間関係が整理されるカタルシスは期待しないでください。でも、何度も読み返して確認したくなるのは間違いないです。

どちらかというと、心情的に寄り添えないタイプの人が多かったような気もします。でも、憎めない、応援したくなる、そんな微妙なキャラが多かったと思います。ただ一人だけ、誰が読んでも「キモイ」奴が出てきます。そのキモイ奴を取り巻く環境も、ちょっと複雑なのです。そのキモイ奴の直接関係者と読者以外は、その人のことを良い方向に評価しています。その辺の不安定な感じも楽しめます。

とりあえず読んでみてください。流し読みも出来ますし、深読みも可能な不思議で面白い作品です。

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