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罪の余白:芦沢央:女子高校生サバイバル

「罪の余白」(4/2022年)

受賞作、そしてデビュー作なのですね。粗削りで不甲斐ないポイントもありますが、それを上回る勢いというか情熱というか。一気に駆け抜ける感じがしました。

高校生、いじめ、スクールカースト。よくあるテーマなのですが、娘を「事故死」で失った主人公の父親、安藤の同僚の助教授、小沢が強烈なアクセントになっています。彼女はアスペルガー的な症状、人の嘘を見抜けないし、自分で嘘をつくことが出来ない設定です。よって冗談とか理解出来ないし、ちょっとした言葉の言い回しも認識出来ない。つまり人とのコミュニケーションが非常に難しい人なのです。

それに対して死んでしまった娘を含む女子高校生たちは、いじめられないように、仲間外れにされないように、神経を尖らせて、過度に繊細なコミュニケーションでサバイバルしています。まさに命をかけた戦いを日常生活で展開しているのです。傍から見れば、年を取ってから振り返れば、なんて些細なことなのだろうと思っていましたが、この作品を読んで考え方を変えました。彼女たちの精神状態は正常であり異常です。もちろん、全ての女子高校生がこの状態ではないと思いますが。。。

父は娘の死の謎に迫ります。死の鍵を握る二人の少女も、その時点における最大のパワーを使ってサバイバルします。そのサバイバル方法は正しい方向ではないものに、彼女たちのもがきは非常にリアルです。他人のことより自分のこと。人の気持ちなんて関係ない、自分がいかにサバイブするかに全てを注力する様は愚かなのですが、それこそが若さなのかと思うと切なくなります。

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