非在:鳥飼否宇:自分の推理の正解、不正解を確認しながら、結末へ

「非在」(052/2020年)

鳥飼、初読です。2002年作品なので、ちょっぴり懐かしい時代設定。だって、海辺に「フロッピーディスク」がたどりつくんですから素敵ですよね。で、タイトルの重々しさから、純文学的なものを念頭に読み始めたら、なんと孤島を舞台にした本格ミステリでした。こういう自分勝手な番狂わせも、僕にとっては読書の楽しみの一つです。

人魚伝説がテーマになっています。人魚に関する記述を読むだけでも、この作品の価値があるかと思います。が、ただの人魚本ではありません。行方不明と大量殺人がシッカリついてきます。ご安心ください。

実に正統派のミステリです。流れ着いたフロッピーに書き込まれた日記と実際に起こった事件との差異がポイント。日記が全て嘘ではないことがポイントなわけです。読者は、もちろんそれを念頭に、疑いながら読み進めていきます。たくさんの「疑わしい」ワードに気を取られながら、自分の推理の正解、不正解を確認しながら、結末へ。

そして、ミステリ事案の間に差し込まれる様々な蘊蓄も楽しめます。そして、沖縄の孤島に旅立ちたくなります、きっと。早く、終われ、コロナ。

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