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崖の上で踊る:石持浅海:これは、別れるでしょ

「崖の上で踊る」(42/2022年)

賛否別れる作品ですね。これは読者を選ぶ作品だと思います。

石持テイストが炸裂してます。そしてエンディングが最高なんです。でも、これは石持作品の傾向と対策を知っているからこそ味わえると思うんです。これが石持作品初読ではまった人は、早くもっと他の作品を読んだ方が良いですよ。
典型的な「孤島の連続殺人」設定です。現代が舞台なので、なかなか「孤島設定」(=ある限定された空間から抜け出すことが出来ない状況)は難しいのですが、本作品の設定は実にスマートです。これは書いてもネタバレにならないと思うので書きますが、とある別荘で集団で人を殺しているという所謂「オリエント急行」設定なんです。

それだけでは別に孤島でもなんでもないのですが、ここから先が石持マジックです。

限られた空間で、限られた人びとで、ひたすら会話が、思考が、何度も何度も、行ったり来たり繰り返される。そして、死体が増えていく。その様を作者は「崖の上で踊る」と表現しているのですが、実に地味なんです。本当に地味です。
地味さが石持の味をググっと引き立てます。余計なものが無いのです。なので、これを退屈、屁理屈という読者がいても、僕は納得します。石持テイストに気が付いてなければ、非常に疲れる物語かもしれません。

で、あのエンディング。なんて非ドラマチックなんでしょう。凄すぎます。これだけ人が死んでいるのに、ここまで低温をキープする度胸、素晴らしい。

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