わざと忌み家を建てて棲む:三津田信三:一番のホラーは三津田信三自身

「わざと忌み家を建てて棲む」(083/2020年)

事故物件を4つ、出来るかぎりそのままの状態で移築する、それも4つをググっと無理矢理一つに「合体させて」一つの家として再構築るプロジェクト。

って言われても理解できないでしょ。何、それ…そう、そこが一番のホラーです。三津田信三の思考回路が最も怖いのです。それぞれの家でおこる怪奇現象や、このプロジェクトが実施された理由に関する謎解きも、読んでいてもちろんゾワゾワ、ホラーを感じます。でも、ふと思うと、そんなことを思いついて、文字にしてしまう人が怖いです。

作家の三津田と編集者の三間坂が、三間坂が偶然発見した上記のプロジェクトに関する資料を読みといていきます。最初はシングルマザーの「日記」という形。二つ目は作家志望者の「エッセイ」。三つめは大学生の「カセットテープ」。これだけ音声による記録。そして最後は超心理学者による「報告書」。

そして同時に三津田、三間坂にも何かが迫ってくる。これ以上、この謎に触れるなという警告なのか、それとも早く結果を世に知らしめて欲しいという思いなのか。

クールな抑えめのトーンが、より作家・三津田の怖さを際立たせる。作家って、リアルに怖い。



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