マツリカ・マジョルカ:相沢沙呼:読者に一任してほしかったけど

「マツリカ・マジョルカ」(62/2022)

キャラ、強い。なので、この表紙のイラストは邪魔だと思います。ここまで強烈であざとい設定ならば、ビジュアルイメージは読者に一任してほしかったです。作家として、ここまで主人公のイメージを確定しておきたいという要望があったのならば仕方ないですが、このイラストがあるので、主人公を「人」として認識することが出来ず、二次元、アニメの世界での物語となってしまったのが残念です。
当然、作家の狙いがそこならば大成功だと思います。こんな「分かりやすい」キャラは現実には実在しないのだという前提が大事ならば、この表紙のイラストは効果的です。最初から非現実性を高めておくという一種のトリックですよね。

キャラが強い割りには、事件は見た目地味なんですね。高校で起こるちょっとした謎、事件を解決するというか、対処するというか。「原始人ランナウェイ」「幽鬼的テレスコープ」「いたずらディスガイズ」「さよならメランコリア」、4つの事件が登場します。表面的には地味なんですが、背景は意外と深刻だったりして。そのギャップを際立たせるためにこのイラストがあるのかもしれませんね。

イジメとか引きこもりとか、命の価値とか自分の存在意義とか、重いテーマをスーッと心に沁みこませるためのキャラなんですよね。でも、絵はいらないかな。いや、絵があることで救われるところもあるのかな。これは読者の年齢層にもよるかもしれない。四捨五入して100歳の読者とリアル高校生読者では、このビジュアルの意味も違ってくるでしょう。

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