ワン・モア・ヌーク:藤井大洋:今朝、読了するという運命

「ワン・モア・ヌーク」(032/2020年)

2020年3月11日(水)午前零時に、東京のど真ん中で原子力爆弾を爆発させるというテロリストの物語。これを今朝に読んでいるというのは、不思議なものです。

紛れもない震災小説です。この切り口で語るとは、ちょっと想像つかなかったです。もう一度、核の被害を受けろ、それも首都、東京で。そして、真剣に考えろ。そうでもしないと、ちゃんと福島の現状を見つめないだろ、永遠に、とテロリストは我々に攻撃を仕掛けます。ただ日本だけの話ではありません。あくまでも世界を語りつつ、日本をフォーカスしてくるところがリアルです。決して、日本だけが核の被害を被っているわけではないこと、認識しなくちゃいけませんね。自分たちだけが…という狭い視野でいることをデメリット、強烈に感じました。

テロリストが原子力爆弾を作れるのか、という問題に真摯に対応している作品です。また放射能の影響に関しても、実に冷静に書かれています。結局は爆弾や放射能そのものよりも、その周辺にいる人間たちが一番怖いのです。爆弾や放射能はある意味裏切りません。その性能通りのことをするだけです。だが人間は…平気で嘘をつき、裏切り、自ら壊れていきます。

あれから9年、私は直接的な被害は液晶テレビが割れただけでした。幸運でした。そう、ただ運が良かっただけです、本当に。ご冥福をお祈りいたします。


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