見出し画像

暗黒自治区:亀野仁:設定の勝利

「暗黒自治区」(44/2021年)

設定の勝利です。設定が登場人物を生み出し、設定が物語を加速させていく。そして読者はこの設定の中で「妄想ワールド」を爆発させることが出来る。なんて楽しい読書なんだろうか。

巧妙なのが、どうして日本がこの設定の状況になってしまったのかをちゃんと説明していないところ。説明が無くてもスッと入り込むレベルのリアリティをキープしてるから可能な絶妙なバランス。流石です。

従来の日本という国が世界各国に浸食されてしまった近未来の話。個人的には2030年くらい想定かな。地域によって、支配層が異なるモザイク国家の状態の中での警察小説です。

で、実にシンプルな構成なんだけど、この設定があるから、非常にスリリングな展開になります。誰が敵で誰が味方かが本能的に判断出来ない、各集団の行動原則が瞬時に分からない。そこが面白い。また、実際の地名も、今のイメージを残しつつ、違う意味を持つから楽しい。

本作品は序章といった感じ。警察組織が舞台なんだけど、この組織自体の意味が不明なだけに、この先、どこに進むのか、ドキドキしてしまいます。犯罪者が犯罪者でなくなる可能性もある。統治者が一気に入れ替わるかもしれない。この「自治区」の行方から目が離せません。また、映像業界出身の作家だけに、実写化、いやアニメ化かな、それも楽しみです。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?