燃える波:村山由佳:生きていくための手段

「燃える波」(155/2020年)

決して自分は彼のような行動、態度をしていない、と言い切れるものの、実際は、同じような事をしてしまっているのではないだろうか……非常に不安な気持ちに「なれる」作品でした。

仕事、結婚、恋愛、勉強、とかって、所詮、生きていくための手段であることを忘れてはいけないと思う。「仕事のために生きている」人は、ブラック企業で疲弊したり、過労死してしまったりする。「結婚(生活を維持)のために生きている」人は、自分をだまし続けているのかもしれない。

小説なんで、舞台設定は華やかであります。主人公はスタイリストの拡張版。ラジオのDJをしつつ、国民的大女優との仕事をきっかけに、生活を変えていく。

派手なので分かりやすい。本質が見つけやすい。村山由佳のプレゼンテーション能力は優れすぎ。大女優という設定が発する言葉や行動指針が効果的なんだな。発信者が恩師や子供、友人だったりする場合もあるけど、大女優が効いている。その設定のために主人公の職業をスタイリストにしたのではないだろうか。巧いな、本当に。

普通の人たちには、こんな経験は出来ないので、荒唐無稽な物語として楽しめば良いのさ!という読み方も否定はしない。がしかし、作品内の出来事を、自分の地味な日常に置き換えて、自分の中で物語を再構築してみる、という楽しみ方の方をオススメする。

生きることが一番大事であって、その為に、様々なピースをくみ上げていく。ピースの大きさは大小あると思う。バランスよく配置する生き方もあるだろうし、一個に集中する生き方もあるでしょう。でも、大事なのは、複数のピースの組み合わせであることと、それらの各ピースは、捨てて次を見つけるということをしても大丈夫だという事。どうしても捨てられない場合は、小さく小さくしてやり過ごすという戦法もありなんだな。

主人公、ナミはピースの交換に成功した(と思いたい)。交換対象のピースにならない生き方をしたいけど、出来るかな。


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