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指差す標識の事例:イーアン・ペアーズ:ハードル高いですが、知的興奮度MAX確定です

「指差す標識の事例」(46,47/2021年)

17世紀のイングランドが舞台の重厚な政治ミステリです。ピューリタン革命、クロムウェルの独裁政治、王政復古、そして名誉革命。今の英国の基礎が固まった激動の時代の裏側で、実は…というミステリです。なので、読む前にざっと当時の宗教的な流れやイングランド周囲の外国の状況を確認しておいた方が良いと思います。

本作品、同時代にオックスフォードですれ違った立場の違う四人の手記で構成されています。イタリアから来た医学を学ぶ男、父の受けた無実の罪を晴らそうとする男、暗号解読を得意とする密命を受けた数学者、そして最後に全てを明らかにする歴史学者。同じ事象を書いてるのに四人四様、まったく違う記述となっています。

本作品、歴史書ではなくあくまでもミステリなので、最後の手記が正解という前提で読んでください。最後に事件の真相が浮かび上がってきます。前の三つの手記で、明らかに嘘、嘘ではないけど敢えて一部だけをピックアップして書いている部分と、嘘ではなく純粋な思い違い、勘違い、誤解として書かれている部分が入り混じってます。この全てを解明しながら読むのが正しいのでしょうが、そこまでもしなくても大丈夫、17世紀の雰囲気にどっぷり浸りながらゆっくり読んでいけばOKです。

でも、正直ハードル高いかな。文庫で約1,100頁が四つの部分に分かれていて、それぞれ別の四人が同じことに対して、自分の立場から様々な角度で書いている体なので、どれが同じ事象なのかちゃんと分析していかないと理解出来ません。同じ場のことでも、手記の書き手によって全く違う見解になっていることもあるので、本当に注意して読んでいく必要があります。ハッキリ言って疲れますから(笑)。

これ、映像作品として、同じ場面で、それぞれの立場での思い、考えを、その場で描いていくような構成ならば理解しやすいと思いますが、敢えて文章にしているところがポイントです。あとから、ことの真相に気が付く。読んでいるというリアルな時間の経過があるから、より驚きが増す。まさに読書の醍醐味ですね。脳みそがフル回転するエンタテインメント、なかなか味わえませんよ。

最後の真相にたどり着いたときの爽快な読後感、体験してみて欲しいです。高い山ほど感動は大きいですから。

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