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短編映画で地方の人口減少に向き合う高校生たちと、支援する伊達市の取り組み

福島県 伊達市役所

福島県伊達市、聖光学院高校の生徒が『ワンダテフルライフ』という短編映画を”伊達市高校生伊達なミライ創出プロジェクト”の活動で製作。

今回は、その担当である伊達市役所の未来政策部 協働まちづくり課に勤める原田 裕希さんと、高校生たちと共に映画の撮影・編集・共同監督を務めた佐久間鑑さんにインタビューをしました。

”伊達市高校生伊達なミライ創出プロジェクト”とはどういった取り組みなんですか?

伊達市役所 協働まちづくり課
原田 裕希さん

原田:伊達市を担う若者の育成を目的とした助成金です。学校1校あたり30万円を上限に、地域活性化のための取り組みや企画などに自由に取り組んでもらうというものです。助成金を渡して終わりではなく、最後には伊達市で開催する活動報告会で成果を発表してくださいねっていう交付要綱になっています。聖光学院さんは今回が初参加でした。

映画を作ると聞いたとき、最初はどう思われましたか?

原田:そうきたか!という感じでした。この助成金の制度は以前からもあって、これまでは個人企画でのイベント開催や、市内の商店街とコラボしての商品開発などが多かったんです。

なのでグループでの活動、さらに動画製作という取り組みも初めてでした。活動内容は自由な発想で決めて欲しいと謳っていて、私自身も交付要綱の目的に合致してさえいれば基本的には何でもアリだ思っているので、これまでにない意外な提案をしてくれたことは素直に嬉しかったです。

映画というアイディア自体は生徒の皆さんからですか?

原田:はい、そう聞いています。

そうなんですね。撮影機材はどうしたんでしょう?

佐久間:実は今回、私の撮影機材を一切使ってないんです。元々、私の映像スタイルを知っている人からは「今回も映像が綺麗だったよ」と褒めていただくんですが、生徒さんの私物で撮っています。その代わり撮ってくれた映像をいかに映画っぽくするかが私の課題でした。カメラの設定や画角なんかは相談しながら決めて、生徒さんにカメラを極力持ってもらい、半々ぐらいで一緒に撮影したと思います。

原田:そうだったんですね。佐久間さんの機材で撮っているのかと思ってました。そのくらい映像のクオリティは高いと、素人目ですが思ってたんです。

市の取り組みとしては、伊達市のPRという側面もありますが、この点についてはどのように思いましたか?

原田:劇中には伊達市の情景がふんだんに盛り込まれていて、純粋にすごく綺麗な映像なんです。普段、私も市内の桃畑とかを見たりしますけど、動画で撮るとこういうふうに映るのか…って。自分の働いている町の、川とか畑とか、日常の一部になってしまっていた景色まで美しく見えた。これを映像として届けられるのは、やっぱり効果があるんじゃないかと思います。

個人的に、映画の設定は少し難しく感じました。冒頭に説明パートを挿入するなど、工夫もしてくれています。

原田:そうですね、ちょっと難しいなっていうのは私も最初に見た時に感じました。ただ市の施策の一環なので、「伊達市をPRする」という条件をすごく上手にストーリーへ盛り込んでくれた結果でもあるのかなと捉えています。

佐久間:抽象的な表現が多い映画ではあるので、メッセージを伝えるのは難しいと伝えつつも、こういう作風になっています。なので「分かりづらい」っていう感想が一定数あるかもというのは、生徒さんも前提で考えています。

それでも製作を進める内にやっぱり分かりづらいよねって話になって、チラシを作ることになりました。レイアウトやコピーなんかの話を一通り教えて、デザインはPinterestというアプリで自分たちが良いと思うものを収集してもらい、それを参考に進めたら、次に会った時にはもうできていて。

映画『ワンダテフルライフ』チラシ

原田:チラシも生徒さんたちが作ってたんですね。本当の映画のチラシみたいだなと思ってました。

佐久間:目元のアップのデザインとか結構カッコ良いですよね。相当あちこちデザイン収集したんだと思います。文章とかは先生が見ているかもしれないですけど。

映画製作をスタートする際、まずは何から始めたんですか?

佐久間:生徒さんと初めて対面で会った時に企画書をもらったんです。「こういう映画が作りたい」と書いてあって。そしてまずは一緒に色んな映画を見ました。シンプルに好きな映画とか。

伊達市の風景に似た田舎の映像がある映画などを見て、こういうシーンいいね、これなら撮れそうだねとか、映像を見ながらイメージを膨らませていきました。

市役所での報告会の様子はいかがでしたか?

原田:最後の報告会でのプレゼンが特に立派でした。代表の生徒さんが毎回1人で説明していたんですけど、途中の報告会から回を重ねるごとに落ち着きが出てきて、立ち振る舞いとか話し方とかトーンとか、表情も全然違いましたね。

当たり前と言えばそうですが、市役所でのお仕事は法律や細かなルールをしっかり丁寧に確認しながら進める必要があると思います。今回の映画製作で調整が大変だったことなどはありましたか?

原田:大変だったというか、生徒さん達だけでの解決が難しい部分のお手伝いという意味では、使用楽曲に関する権利関係の整理ですね。

原田:作品の中で流れている曲には”伊達市歌”の歌詞が引用されているんです。

綺麗な挿入曲が流れてるなと思っていて、詳しく話を聞かせてもらうと、曲調は違うんですが歌詞は伊達市歌のものを使っていると。

で、ちょっと難しいのが、伊達市歌の著作権は伊達市にあるわけではないということなんです。最後の活動報告会の時期に「著作権的には大丈夫なのだろうか」と話が出たため、伊達市歌を所管している総務課に確認をすると、曲と歌詞の制作元にそれぞれ著作権があるとのことでした。

製作時の契約内容を改めて確認したところ、市の政策や取り組みで独自に活用したいときは製作元に許可を取った上でだったら認められるっていう内容だったので、それぞれ許諾をいただくためにコンタクトを取ることになったんです。

まず曲の版権元。曲調が元の伊達市歌と全く違うので、「伊達市歌」という名前を使うのはNGだが、歌詞側の許諾が下りれば映画で使う分には全く問題ないと承諾していただきました。一方、歌詞サイドですが、最初は「伊達市歌のために書いた歌詞だし、作曲側の先生にも申し訳ない。」というご回答だったんです。

そのため一度は歌詞の使用を諦める方向になったのですが、少し経って作詞家の先生から「改めて動画を見させてもらって、伊達市のPRという趣旨で作られた動画なので許可もらえないですかね。」とお電話がありまして。それまでやり取りしていた総務課ではなく、私の勤める協働まちづくり課に直接ご連絡いただいて、電話に出たのも私だったんですけど、びっくりしました。

個人的には歌詞を使わせてあげたい、何とか許可をもらいたいと思っていたので、私自身も嬉しかったです。

歌詞にアレンジを入れたのは何か理由があったんですか?

佐久間:先ほどもあったように、映画の設定が少し難しいので、キャッチーな部分を作らなきゃっていう使命感があったんです。あれこれ考えている時に、生徒さんから”伊達市歌”を使いたいって相談があって。

そのまま使っても変化がないなと思いながら、試行錯誤の結果、キャッチーな部分をその伊達市歌で作ろうと思いつき、アレンジ曲にさせてもらいました。伊達市の鳥は「セキレイ」で、原曲の伊達市歌にもセキレイが歌詞で出てくるんです。オマージュとリスペクトを込めて「はねのありか」という曲名になっていて、これはいくつか案を出し合って先生と決めました。

その引率の三瓶先生がすごくクリエイティビティな方だったんですよ。プロデューサータイプの。なのでスタッフクレジットにもついつい”プロデューサー”で勝手に入れちゃいました(笑)。

最後に、原田さんのこの映画のおすすめポイントを教えてください。

原田:繰り返しになっちゃうんですけど、やっぱり伊達市のきれいな風景が随所にちりばめられていてシンプルに美しいと思うので、この映画で伊達市の魅力を少しでも感じていただけたらなと。

そのきれいな風景と一緒に流れる歌もいいんです。使用にあたって奮闘しましたし、尚更ですね(笑)。


▼映画『ワンダテフルライフ』はこちらから

『ワンダテフルライフ』
~あらすじ~ 2050年。空間や時間の制約から解き放たれた世界。国としての人口の概念をなくし、4年に1度開かれる世界会議のプレゼンテーションによって、全世界の人々が魅力を感じた”マチ”に自由に住むことが可能となった。 4年前の世界会議のプレゼンテーションに大敗して喫してしまったマチ、それが“ダテシ”。それでも“ダテシ”を選択した高校生。 野球ができる人口さえいなくなってしまったダテシで、カイ(主人公)の「野球がしたい」という純粋な思いから、ダテシ代表として世界会議に挑戦することとなったカイ達。 万全の体制で臨むはずだった世界会議当日。予期せぬアクシデントが彼らを襲う。 果たしてダテシの運命は。 そしてカイの「野球がしたい」という想いは世界の人々に届くのだろうか。

福島県伊達市公式YouTubeチャンネルより引用

▼はねのありか『ワンダテフルライフ』主題歌

▼はねのありか『ワンダテフルライフ』劇中歌

▼聖光学院の生徒さんへのインタビュー記事はこちら

(写真:佐久間鑑)

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芦田央(DJ GANDHI)
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