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契約書はいつ届く??誰も知らないお客様の意思決定4つのプロセスをハックする

今回は誰も知らないお客様の意思決定の4つのプロセスを徹底的にハックしていきます。

皆様にもこんなお困りごとやお悩みを抱えていらっしゃる方はいらっしゃいませんか?

・役員会で決裁されたのに、契約書は今月間に合わなかった!
・リモートワークが増えてお客様の上申が思うように進まない!
・法務部が出てきて契約書の文言チェックで完全にストップした!

よくある営業あるあるなのですが、こんなことは0にできるなら0にしたい。
優秀な営業ならあらゆるリスクを排除しろって言われても、契約書が届くまで本当になにがあるか分からない。
どこに落とし穴があるのか分からない。

そんな方に朗報です。

お客様がモノを買おうとしてから契約書があなたの手元に届くまでのプロセスを正確に把握すればよいのです。

ちなみに、この概念をググってみても出てこないので、完全にオープンに書いてしまう初めての記事かもしれません。

フェーズと何が違うの?

Salesforceの営業が最重要視するフェーズの考え方とは、
商談自体の進み具合を表し、

フェーズ=顧客の意思決定状況の進み具合
→自分たちが何をしたかではない

と、過去の記事にも書いていました。

もちろん、フェーズという概念はとても大切ですが、それだけでは抜け漏れが発生しているということを今回お伝えしたいです。

例えば、Salesforceの定義するフェーズは8段階あります。
(上記記事を参照ください。)

その中で漠然と存在する
フェーズ6:契約手続き

これ、なんかブラックボックス化してませんか?

この部分を含めてもっとお客様の意思決定のプロセスの裏側まで潜り込んでしまおうというのが、4つのプロセスです。

多くの営業は役員会で決裁をゴールにしている

相対するお客様が大きな組織になればなるほど、役員会の決裁はゴールでなくなります。
場合によっては、役員会を通さないことだってできます。

でも、考えてみてください。
以下のような質問と回答を貰い、安心したつもりが大失敗という事はありませんか?

営業:
役員会って今月の25日ですよね?そこで決裁されるんですよね?
お客様:
そうです、特に問題ないと思いますし、何かあれば連絡しますね!
営業:
ありがとうございます!お待ちしています!
営業の内心:
良かった、これで今月受注だ!
==========
25日の夜になって契約書が届かず電話

営業
:
役員会、問題なく通りましたか?心配になってしまって
お客様:
はい、役員会は通りました。後は法務や購買に調整をかけるので、それが終わったら契約書をお渡ししますね!
営業:
え、、、今月間に合わないのですか??

そう、ここで言いたいのはなにかというと、役員会で決裁が通るまでは、お客様の意思決定のプロセスの50%でしかないということです。

綺麗事を抜きに話すと、営業は契約書を手に入れてようやく数字が上がりますよね。
役員会の決裁はゴールではないのです。

では今から、
確実に契約書を手に入れるために、
お客様の意思決定4つのプロセスをハックしていきましょう。

意思決定4つのプロセス

まずいきなりですが、
AP/DP/LP/SPというぱっと見では暗号のようですが、これがお客様の意思決定の4つのプロセスです。

AP:Approval Process
→承認を取りに行く(上申)プロセス
DP:Decision Process
→上がってきた承認依頼を決定するプロセス
LP:Legal Process
→法務プロセス
SP:Supply Process
→購買・調達プロセス

そう、もうお気づきですよね?
いわゆる役員会、取締役会はDPなのです。
残るLPやSPを通過しないと契約書は手元に届きません。

また、なかなか役員会に議題を上げてもらえない!って方はAPの攻略ができていないわけです。

では、1つずつ解説していきます。

①Approval Process(承認/上申プロセス)

カリスマ的な社長が、俺が全部やるんだ!
という強い推進をしない限り、企業がモノを買うときには上申が発生します。

社長:
売上30%UPでやりきるぞ。
担当役員:
新規獲得に注力だな。営業プロセスの見直しするぞ。SFA入れよう。部長にリードしてもらおう
部長:
よし、SFA導入プロジェクト立ち上げるぞ!俺たちで選定して上申だ。

とまぁ、こんな感じですかね。
これはまだまだ良いパターンで、もっと実態に近いのはこんな感じですね。

社長:
会社の持続的な成長が鍵だ。不況に強いサブスクの新規事業を立ち上げろ
担当役員:
社長がサブスクっていっている。どうやって立ち上げればリサーチしろ!
部長:
サブスク新規事業って上から言われてるし・・・とにかく調べよう・・・

こんな状況になったら部長の立場としては、様々なビジネスをリサーチして、それに必要なツールも検討して、上申するプランを作って、役員会に通すってなるわけです。

となると!!
最初のAPは、この部長がリードし、自分たちでどのサービスが良いか比較検討をするわけです。
仮に比較検討していなかったら一瞬で担当役員から、
「それって他の案ないの?ちゃんと調べた?」と2秒で突き返されるわけです。

なので、競合無しで進める商談なんてほぼ皆無。

ここで営業がやるべきことは、自分たちが第一選択候補になり、
この部長に「色々検討した結果、我々はdigsasが良いと思っております」
という上申案を出してもらうことになるのです。

もっというと、競合他社は当て馬となるコントロールをしたり、
比較対象をエクセルや自社開発にしても良いのです。

ここでAPのポイントを2つ。

1.APはオフィシャルな会議ではない
→主管となる部署内の打合せで第一候補がきまる。
2.彼らが上申するための資料が必要
→つまり、自社から出す提案書は彼らの上申資料の素材集になる

そして、ここで言うところの部長はCoach(稀にChampion)である可能性が高く、担当役員はChampionである可能性が高いのです。

Championについてはコチラ

提案書のテンプレはコチラ

②Decision Process(決定プロセス)

無事にDPを終え、上申資料が出来上がりました。
さぁ、役員会に持っていくぞ・・・
とはなりません。

役員会では多くの意思決定がされるため、ぱっと持っていってもすぐに受け付けてもらえません。

役員会に至る前に、上申内容の稟議が発生します。
巷で話題になるハンコってやつですね。最近だとワークフローなどで電子化している企業も増えてきました。

今回のパターンだと、担当部長が上申者となり、そのオーナーとして担当役員の印鑑が押されることが一般的です。

その後は各社様々で、

・1000万円を超える時は役員会
・100万円までは取締役1人で決裁できる
・50万円までは事業部長でOK

だとか、様々なパターンがあります。

場合によっては、

・役員会の議題へのアジェンダ登録
・稟議審査委員会に持っていく
・緊急案件の場合、代表取締役の印鑑のみで役員会をパス可能
→稟議書の回送のみでOK

など、様々なパターンがあります。
ここは各社各様なので、明確に聞きましょう。

さらにポイントとなるのは、お客様も具体的に細かい対応を知らない事が多いです。

コレを読んでいる皆様も、自分が1000万円のシステムを導入したくて、上申するときにどんな社内ルールがあるのか完璧に把握している人ってほぼ皆無ですよね?

なので、お客様もブラックボックスになっている内容を、こちらから道標となって寄り添って確認をするのです。

その際には、

・稟議で誰まで回したらいいんですか?
・役員会っていつでしたっけ?
・役員会って誰が出てくるんですか?
・稟議審査委員会とかありませんか?

という、具体的なワードを差し込んで確認をします。
そして、それらを、
具体的な日時と登場人物をバイネームで把握してく必要があります。

お客様もわかっていない前提なので、カレンダーのスライドを持ってきて、
一緒に指差し確認で作るのが良いと思います。

ホワイトボードでディスカッションするのも良いと思います。

そして、登場する人物は可能な限り紹介の依頼をしましょう。
間に誰かがはいることで伝言ゲームが発生し、齟齬が発生します。

XXさんのお手間にならないよう、私が直接やり取りさせていただいても良いですか?

といえば、大体は紹介をしてもらえます。

そして、晴れてDPが終わってもまだ契約書は届きません。

③Legal Process(法務プロセス)

言わずもがな、契約書の文面チェックです。
絶対に忘れてはいけません。
お客様の法務部には進研ゼミやZ会顔負けの赤ペン先生がいます。
(しっかりとチェック頂くのはとても良いことなので褒め言葉です)

契約書に大量の赤ペンが入って戻ってきます。
また、純粋に文言を変えろとまでは言われないものの、具体的な解釈を教えてくれと言われる事が多いです。

そんな時に自分も自社の法務(これも赤ペン先生)に確認してやり取りをしてると、下手したら数ヶ月飛んでいきます。

僕の最長経験では、NDAを結ぶだけで4ヶ月赤ペンのやり取りをしたことがあります。

ここでお伝えしたいポイントは2つ。

・ストレートに通ることが稀であるという前提で挑む
・自分自身が契約書の文面を隅々まで把握しておく
→即時回答をして伝書鳩になる時間を減らす

ただ、このプロセスがザルな場合、後々揉めることもあるので、絶対におろそかにしない。むしろ大切なんだという心持ちを持ってください。

④Supply Process(購買/調達プロセス)

このプロセスはめちゃめちゃ大切です。
AP,DP,LPを通過した後にそびえ立つ最後の砦です。

そして死ぬほど堅牢な砦です。

このプロセスでは、ただ単に購買部が発注しますよ〜だけではなく、
新規取引の場合、以下のようなやり取りが発生します。

・新規取引口座の登録
・取引条件(入金サイト)の確認
・与信チェック
・最終の値引き交渉

まず先に、最終の値引き交渉はあるあるですね。
特に大手製造業の購買部はどれだけ安く調達するかがミッションです。

最終2%値引きしてもらうのが条件です。とか。

それ先に言ってよ〜となってしまう前に、このような事があるか確認をしておきましょう。(後述します)

そして、取引条件で引っかかったり、(月末締め90日後支払いに変えてくれとか)
大量の与信チェックシートの記入が待ち受けています。

逃げてはなりません。抜けもれなく完璧に書きましょう。

実は私もこのような経験をして会社の与信や認証資格って大切だなって実感をしたことがあります。

例えば、

セキュリティへの取り組みチェックリスト
・ISMSを取得している場合はその旨を教えて下さい。
・取得していない場合は以下項目を回答してください
→50項目くらいある

環境保全への取り組みチェックリスト
・ISO14001を取得している場合は教えて下さい。
・取得していない場合は以下項目を回答してください
→30項目くらいある

財務状況の確認
・上場している場合は証券コードを教えて下さい。
・上場していない場合は以下項目を回答してください
→30項目くらいある

とか。
認証資格や上場は圧倒的に信頼されるということです。

そして最後にポイントとなるのは、
最終の契約書の捺印をする人は、購買部のTOPだったりするケースも結構多いので、ここでめんどくさがって蔑ろな対応をしては絶対にいけませんよ。

購買部の方って、新規の口座開設は楽しくて、外部ベンダーとやり取りするのが好きな方って結構多いです。ただ、具体的に直接会話しようとする営業は少ないです。
ですので、積極的に直接コンタクトをとると、
「石井さんって購買まで律儀に連絡してくれるし、ちょっと急ぎで対応するからね〜」
なんて言われたりします。

4つのプロセスは並行させよう!

ここまで書いていて、勘が鋭い方はお気づきとおもいますが、
AP→DP→LP→SPと、1つずつ順番に対応する必要はありません。むしろ、積極的に並行させましょう。

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こういうことです。
多くの場合、APで第一候補となった場合は、LPとSPを先回りして対応することが可能です。

営業としてやるべきことは、お客様に自分からこう言いましょう。

今後のお手続きに当たって、
法務による契約書レビュー(LP)であったり、
購買による取引口座開設(SP)とか、
色々お手続き必要ですよね?先回りして進めることができませんか?
と、自分から聞くことです。大丈夫です。APDPLPSPを知っていたら、自分から積極的に聞くことができますからね。

これができていれば、DPに上がった際に、
APで作る上申資料に、

※口座開設手続き、及び契約書レビューは完了しています。

という1文が付け加えられるのです。

この1文がどれだけの威力があるか、今更説明不要ですよね?

まとめ

ここまでご説明してきた4つのプロセスですが、これを熟知している営業はほぼ皆無です。

僕もSalesforceのときにはエンタープライズ担当でなかったため、ここまで意識していませんでしたし、
日系SIerで大企業を担当していた時は当然できていませんでした。

知らなくて普通の概念です。
直近でお会いした200名ほどの営業の方でこれをご存知だったのは1名だけという、一部のトップセールスの門外不出の考え方なのです。

私がこれを知ったのは、Zuoraでエンタープライズ企業を担当するにあたって、その時の鬼軍曹である上司から教えてもらいました。目からウロコでした。

実際にこの概念を知った上で営業に取り組んだところ、
あるエンタープライズ企業でSaaSで数億円の案件を2ヶ月足らずで受注することができたり、その案件では契約書受領予定日を結果的に2日前倒しできたりした経験からどうしても共有をしたかったのです。
(この案件では4つのプロセスで総勢40名以上のステークホルダーがいらっしゃいました。)

他の企業様や、少数精鋭企業様でもこの確認を徹底することで、
契約書の受領日は一切ズレなくなりましたし、
むしろ、
「契約までの手続きを手伝ってくれてありがとう!」とまで言われたことがあります。
お客様がモノを買う時に意思決定するプロセスをハックしておけば怖いものなしですよね。

それをなぜ今公開したかと言うと、
日本のSaaS企業がエンタープライズ企業へのアプローチを始めたところで、様々な試行錯誤をしている最中であること。
コロナウィルスの影響により増加したオンライン商談により、相対していないステークホルダーの登場を忘れがちになってしまうことが多くなっていること。

この情報を独り占めしていても意味がないじゃないか。と思い、
今回公開したこの内容が日本のSaaSの発展や、営業の質はもちろん、購買側の意識変革に繋がるといいなと切に願っております。


SaaSの営業×サブスクリプションの本質の正しい情報を書いていこうと思います! サポートいただけたら、リサーチ費用に充てたいと思います。 他にもHIPHOP好きな人と仲良くできると嬉しいです。