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356 共同親権


はじめに

自民党の野田元総務大臣が共同親権の導入に関する民法の改正に関する法案に対して、自民党の方針に従わずに反対したことから厳重注意を受けたというニュースを耳にしました。今日の教育コラムでは、今国会で話し合われているこの共同親権が認められるようになるとどのような変化が生じるのかを少しお話してみたいと思います。

どの様な改正?

ざっくりと説明すると今回の民法の改正で、単独親権ではなく離婚後も両親が子どもの親権をもち続ける形に変わります。これは大きな違いで、離婚後の子どもの置かれる状況が変化していきます。
例えば、単独親権にするか共同親権にするかを親が話し合いで決めますが、合意できない場合は家庭裁判所が判断する形をとります。また、複雑な状況で言うとDVなどの状況で家族や子どもへの虐待がある場合などは、単独親権となるわけです。

離婚後の共同親権を認めるメリット・デメリット
共同親権の導入のメリットとデメリットについて簡単にまとめると次のようになります。
【メリット】
離婚時の親権争いの激化を防げる
離婚後も両親で協力して子育てできる
面会交流・養育費の支払いがスムーズに行われやすい

【デメリット】
子どもへの負担が大きい
遠方への引っ越しが難しい
DVやモラハラから逃れられない

現在、日本では離婚後は単独親権とすることが法律で決まっています。一方でアメリカ、イタリア、ドイツ、オーストラリア、フランス、フィリピン、フランスなどでは、DVなど裁判所判断がなければ、原則として共同親権になります。

ハーグ条約との関係

海外で国際結婚した夫婦が離婚し、日本人と外国人の間に生まれた子どもを日本人の親が相手の許可なく日本に帰国させて生じる親権問題は増えています。この際に一方的に親から離して子どもとの面会交流を果たさないケースが生じます。これは、国際条約に違反しています。EUやオーストラリア政府など複数の国が、日本政府に対して主張しているのは、ハーグ条約の厳守です。
ハーグ条約とは、国境を越えて子どもの連れ去りや強制的な引き止めの事件が起こったとき、子どもを元の居住国に返還する国際的な取り決めです。
因みに日本はこの条約に加盟しています。つまり今回の民法の改正は、そうした国際条約の内容に合わせ共同親権を認める必要があると判断した上でのものということになります。

複雑な状況の下で力の弱いものが被害を負う

共同親権にはもちろんメリットはありますが、子どもたちの負担が増えるというデメリットに留意する必要があります。
離婚する場合、その多くは両親の間で何らかのトラブルが生じています。そのため、意見がぶつかりやすく、まとまりにくい可能性があります。価値観の相違もあるでしょう。
そうした二人に親権がある場合であっても共同親権では多くの事柄で親権をもっている二人で決める必要が生じてきます。子どもからしてみれば、二人の意見を尊重しなければと思うこともあるでしょう。そうした複雑な状況で子どもたちは混乱や戸惑いを感じるでしょう。
他にも、親権をもつ二人とそれぞれ、生活する時間を有することやそのために居住地域を考慮しなければならないことなど弱い立場の子どもにしわ寄せが生じる可能性があります。

今後は、民法の改正とは別に運用の際の細かな配慮や状況に応じた対応が必要になることが予想されます。いずれにしても子どもたちが安心して暮らせる社会の形成を目指したいものです。

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