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210 もはや先進国ではない


はじめに

1956年7月17日に政府が経済白書で述べた言葉「もはや戦後ではない」はとても有名な宣言です。
この前年の1955年、太平洋戦争の終戦から10年目にしてGDP(国内総生産)が戦前の水準を上回ったことから、戦後からの脱却を宣言したわけです。この出来事は、日本が戦後復興期から高度成長期へと歩を進める節目となりました。
さて、今日の教育コラムでは「先進国」という言葉を少し取り上げてお話してみたいと思います。

先進国とは

世界には、約196カ国の国があります。そのうちの約70%に当たる150カ国が分類されるのが開発途上国です。開発途上国とは経済や産業が十分に進んでいない国を表す言葉です。
開発途上国のなかでも特に社会、経済、人間開発指数が最も低い国のことを後発開発途上国と言います。
そして、主に経済が大きく発展している国々を先進国と言います。先進国と呼ばれるための定義は特にありません。しかし、経済や技術が発展していて生活水準が高いといった、ある一定の判断基準はあります。先進国と言えば、主要国首脳会議ですがG7と呼ばれる国々はその代表的なもので、日本、アメリカ、イギリスなどの先進国と呼ばれている国々が参加しています。
また、政治的な安定も先進国の特徴だと言えます。その国の発展性や技術なども重要ですが、政情の安定性も大きなポイントです。技術や資金、資源があっても政情が安定しないとその強みが活かされず、その結果発展を妨げることにもなるからです。政情の安定は、経済の安定にもつながる大切な要素となります。

20年後の世界と日本

1人当たりGDP(国内総生産)でも労働生産性でも、日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均より低位にあり、もはや先進国とは言えない状態になっています。
アジア諸国との関係でも日本の地位は今後低下していくと見られています。今の各国の成長率や為替レートが変わらないと仮定して考えた時に約20年後には、1人当たりのGDPが韓国は日本の1.7倍になります。台湾も日本とほぼ同水準になると考えられています。また、マレーシアなどの東南アジアの国々でも日本に近づく国が出てきます。

ユニクロの柳井氏の警鐘

ユニクロなどを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、現在の日本経済を支える、超が付くほど有名な経営者です。ファーストリテイリング社が日本国内の従業員約8400人の賃金を最大40%引き上げたという衝撃の事実を知ったのは2023年の3月のことでした。その際、柳井会長は「まだ低い、もっと高いはずだ」と述べています。
国際競争力をつけるための従業員の意識改革のためにも会社が従業員の賃金を世界標準を見据えて設定していく意識を強く感じる行動でした。

米誌「タイム」の表紙を飾るユニクロの柳井正氏。写真:time.com

そんな柳井氏が12月4日のタイム誌のアメリカのタイム誌の表紙に登場したユニクロの柳井氏が発した警鐘に注目が集まっています。
その発言が「目を覚ませ。日本は全然先進国ではない。」というものです。
この発言にはどのような趣旨があるのかを考えてみるときに柳井氏はいくつかの指摘を具体的にしています。その中に「先進国ではない」と警鐘を鳴らす理由が見えてきます。

(柳井氏の指摘)
日本の遅れや欠点
①世界に進出してもっと積極的にならなければ、日本人に未来はない。
②日本政府と官僚は考え方を問い直す必要がある。彼らは何もわかっていな
 いのだから。
③日本企業はバックミラーを見ているかのように経営されている。
④日本人は、日本が他のアジア諸国に比べて遅れているという現実を受け入
 れる必要がある。
⑤日本の最大の欠点は個がないこと。
⑥人々は自分の足で立つ必要がある。

日本の根回しの文化

古い世代の伝統的な仕事の進め方に根回しというものがあり、この存在が日本の成長を阻害しているものの一つであるという指摘を耳にすることがあります。
会議で検討する前に資料をつくり、出席者に話をしておき会議では賛成者多数で話をまとめるといったためにこうした根回しをすることがありますが、こうしたスタイルは、話し合いを抑制させますし、互いの立場を重んじるばかりに生産性のない話し合いに終わりかねないのです。
日本の古い体質の一部として、いまだにこうした会議の本来的な意味を薄める行為が善とされる傾向にあります。日本のトップ企業の役員会議では、根回しのための資料ですら存在せず、役員の頭の中に全ての必要な要件が入っているので会議資料を用意することは無駄とされています。
経営者がバッターボックスに入るような気構えで会議に参加し、そして意見を交わし合い物事をスピーディーに決定していくわけです。資料をつくって根回ししているようなスピード感覚では変化の激しい時代には対応できないということを示唆しているわけです。
一流の経営者は、世界の中で戦い世界を常に見ているからこそわかる感覚を持っているわけです。留学や海外生活の比率が低いわが国では、未だに島国根性が根深く、多くのシーンで世界との差を生じさせているのかもしれません。

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