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405 東大学費値上げ


はじめに

今日の教育コラムでは、東大の値上げに反対している学生たちの行動について少しお話してみたいと思います。
はじめに、どのような立場でお話しするかを明らかにすると私は、「大学の授業料は、受益者が負担するべきものである」という考え方です。

受益者とは

受益者という言葉だけを説明すると、これはもともと信託用語のひとつです。受託者による信託行為で発生した利益を受ける権利を有する者を受益者と呼びます。簡単な言葉で言うと利益を得る者が受益者です。
 投資信託の場合は、投資信託を購入して保有する投資家は、信託の利益を享受する権利をもちます。この権利を受益権と呼びます。受益権を持つ者それが受益者となるわけです。

誰が受益者なのか

大学に通うという選択は、必ずだれもがするものではなく望んだ者が通う学校が大学なのです。だから、大学からの授業というものを利益とすると受益者は学生であり、その学生ごとの家庭となります。
しかし、大学では多くの研究を進めていますし、卒業した学生たちは高度な知識や技術を社会の発展や技術の進歩に結び付けていきます。もしかするとそういった意味では受益者はもっと多くなるかもしれません。
つまり、受益者が学生個人ではなく社会全体であると考えることだって拡大解釈すればできるわけです。この理論は、高校までの授業料無償化の議論の中では9割を超えるその進学率の高さから納得がいくものとして扱われます。大学は、約6割の進学率ですから、やはり半数近くは進学しませんので受益者負担の意識は個人に向きがちです。
全く関係ない家庭の子どもが大学に行こうともそれは、個人が負担するべきであり国が負担することなど必要ないとなれば、現在の私学助成金や各大学への国からの補助金ですらなぜ税金で負担するのかという話になります。
つまり、すでに私たちは幾分かでも受益者の一人として各大学の運営費用つまり各個人の授業料を納税を通して補填しているともいえるのです。

値上げする分を個人が負担するべきか

東大が20年ぶりに2025年度入学から年間の授業料を10万円引き上げる考えを表明した理由として、デジタル化や国際化に対応するためと説明していますが、最も大きな要因は国の東大への交付金のここ数年の減額にあるように思えます。
他の国立大学にも言えることではありますが、東大においては人件費や研究費に充てられる国からの運営費交付金は20年前に比べて、年間にして100億円ほど減少しています。現在は、物価高騰が起こり、人件費も上がっています。また、理系の学部では研究の費用もかかりますし、ベンチャービジネスも展開するとなるとさらにお金もかかります。こうしたものが今回の値上げに影響しているわけです。
現在の約54万円から20%引き上げて約64万円とすることで、学業を諦めたり研究を進める時間を労働に充てたりとすることは、私たちの生活にも必ず影響が出てきます。多くの基礎研究の停滞や高等教育の拡充を阻害することは社会の発展と逆行することだからです。
異次元の少子化対策という言葉がもし実際に行動として存在するのであれば、今こそ国立大学の値上げを食い止めるような政治的な判断や行動がとれるのではないかと思います。

受益者の負担のバランス

実際に大学に進学する学生は、第一受益者としてある一定額を負担することは致し方ないとして、私立大学に進学するという選択肢すら持てない家庭環境や経済事情の学生が、これ以上の国立大学の値上げが各地域で広がればそれこそ多くの国民にとって、高等教育が今以上に狭き門になり国際競争力を失っていきます。すると私たちは、大きな利益を手放すことになります。
必要な運営交付金を拡充することで、自分が学ぶことが社会に貢献できるという意識をもってもらえることの方が重要だと思うのです。

寄付という考え方についても少しお話してみます。海外の大学は寄付文化に支えられている面が過分にあります。因みに日本の大学では、卒業生や地域の企業からの寄付の額は少ないです。
全体でも見ても日本人は3割しか慈善団体を信用していないという調査があります。世界価値観調査のなかで、日本では慈善団体に対して「非常に信頼する」と回答した人が2.2%、「ある程度信頼する」と回答した人が29.1%でした。 つまり、合わせて31.3%の人しか、慈善団体を信頼していません。こうしたこともあり寄付するという行為に対して意識が低いのです。
大学の運営を支える方法はいくつもあります。全く別の視点で見ると、BF大学への補助金を見直すことだって必要かもしれません。少子化が加速する社会では、こうした必要な削減を考えることも時には必要ですし、逆に補助を拡充することだって必要なわけです。

いずれにしても、学生たちに説明や協議の機会を与えずに寝耳に水の議論で進めていては、今回のような騒動が生じるのは必定でしょう。

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