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68 水の事故(drowning accident)


はじめに

夏休みがもうすぐ始まります。学習の目標を立てたり、目標を整理したりしてから休みに入ることをお勧めします。保護者の皆さんにおかれましては、学校は休みになりますが、仕事はお休みになりませんので、お子さんの昼間の過ごし方にご心配やご苦労が多くなるかと思います。私が、この時期子どもたちのことで心配になることと言えば、水の事故です。

子どもの水難事故

警察庁によれば、年間で約1600人の方が水難事故に遭遇しているとのことです。その内、半数近い方が命を失う又は行方が不明になっています。いかに水の事故による被害が最悪の事態へとつながってしまうかがここからもわかります。
では、子どもの水難事故についてはどうでしょうか。私が中学生だったころ、1990年頃は年間約700人の子どもが水辺の事故で命を失っていました。ここ3年ほどの調査結果では、年間で約40名から50名のお子さんの命が失われているそうです。90%以上の割合で大切な命が失われずに済むようになってきていることがわかります。
これは、水難事故を防ぐための行政の努力や各人の意識の高まりのたまものであるわけですが、それでも年間で見た時には各都道府県で1人は水難事故で命を失う子どもたちがいるということになりますから、より一層改善の必要があるわけです。

年齢別の傾向

日本だけに関わらず諸外国においても、子どもの溺水の場合、4歳以下の乳幼児と13歳から18歳が多いことが分かっています。2歳以下はお風呂での溺水が圧倒的に多く、3歳以上はプールや川での事故が増えます。7歳以降では川での事故が最も多くなるという傾向があります。
15歳から18歳の中高生については、溺水によって命を失うケースの約7割が川での事故となっています。この結果は、5歳から9歳の子どもたちの約3倍ほどとなっています。
年齢が上がるにつれて、体も成長し水泳経験なども豊富になり水難事故から身を守れると思われがちですが、自己の実力を過大評価し過ぎるあまり、自然の猛威や脅威に圧倒されるというわけです。つまり、自然の姿への理解不足と油断が年齢が上がるにもかかわらず事故が増える主な原因というわけです。

アメリカでの取り組み

ここまで、子どもの水の事故が少なくなってきてはいるものの甚大な被害が出るのだということについて説明してきました。
では、その水の事故を防ぐための取り組みの一端を次に紹介します。それがアメリカでの取り組みとなります。
アメリカ小児科学会が2019年に子どもの水の事故を防ぐための声明を発表しました。その中で説明されているものは次の6つの内容です。いずれも水の事故を防ぐ有効な手段であり、このすべてを組み合わせることで子どもたちの大切な命をより多く守ることができるとして関心を集めました。
【6つの声明】
1.子どもだけでの水場へのアクセスをブロック
2.ライフジャケットは全年齢に推奨
3.監視役を明確にし、乳幼児は腕の届く範囲で見守る
4.監視員は重要だが、必ず監視役の大人もつける
5.心肺蘇生は予後の改善に有効
6.水難事故の予防のために知っておくべき知識を整理

日本においても、河川で遊ぶときはせめてライフジャケットを身に付けてほしいという公的な機関からの呼びかけも多く、その重要性は明らかです。しかし、自分はつけなくても大丈夫、みんなつけてないから大丈夫といった思考には勝てず、河川で遊ぶ子どもたちは相変わらず、Tシャツに短パンといった着衣状態が多く見られます。
大人の目が届くこと、リスクに備える準備、子どもだけでの危険な行為の抑制など複数の視点でこの夏の水辺でのレジャーを楽しんでもらえたらと思います。いずれにしましても、命に直結する事故を一つでも多く防げたらと思います。

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