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165 新人戦

はじめに

9月下旬から10月の中旬にかけて全国各地で新人戦が行われます。山梨県では、今日明日と新人戦が行われるようで、ダイバースタディーに通う中学生のなかにも、新人戦で激闘を終え、明日の決勝に闘志を燃やしている子どもたちがいました。
さて、新人戦とはどのようなものなのかというところから今日の教育コラムでは少しお話をしていきたいと思います。

3年生が抜けて

中学校の部活動では、3年生は夏に大きな大会やコンクールが行われこの結果で9月中旬まで勝ち進んだり、先のコンクールに進んだりと3年生は10月に入る前に中学校生活における部活動に区切りをつけます。
高校でも引き続き部活動に力を入れる生徒もいますが、部活を引退して2学期からは勉強に力を入れる子も多いかと思います。
目指す高校への受験などで、この部活動で培った「やり抜く力」は大いに役立つものとなりますし、何より自分で自分を高めていく方法を部活から学んでいる点は何物にも代えがたい力だと言えます。
そうした3年生の生活の変化の裏で、1年生2年生は活躍の機会を得ることになります。それが新人戦の大切な役割となります。3年生が抜けて、実力的には上位学年に匹敵する選手も教育的な配慮でポジションが取れなかったり、または同じポジションで3年生がスタメンになっていたために補欠だったりと後輩たちが試合に出る機会がなかなか回ってこなかったとしても、この新人戦では、一人一人のこれまでの頑張りと培ってきた実力を試されるわけです。

緊張のデビューと複雑な心境

特に1年生は、試合にはじめて出ることになる生徒も多いかもしれません。2年生は、少し1年生と違い大変複雑な心境に陥ることがあります。それは、1年生にポジションやスタメンの座を奪われるという現象です。
後輩に、しかも同じように3年生がいた時までは補欠であった存在が新人戦を機に自分よりも評価されていることに気づいた時、またそれが明らかにされた時に生じる複雑な心境は、当人にしてみれば大変に重いものがあります。
これは、テストの点で差がつけられるのとは別の次元です。ですから、集団としての成長や人間関係を考慮して思案する中で顧問の先生はチーム作りを進めていくことになります。ましてや大会のスタメンは人数も限られますのでそうした意味でも新人戦は大変気苦労が多いのです。

個性と役割

私自身の経験で言えば、弓道の団体戦の出場選手5名と各自の立ち順を決めるのに大変苦労した経験があります。
弓道は、1番(大前)、2番、3番(中)、4番(落ち前)、5番(落ち)と呼び、5名一組で戦います。2番だけそのままですが、2番は大前の補助的な役割があると考えていいです。
まず、大前と呼ばれる一番前の選手は、圧倒的な的中率を必要とします。しかも何食わぬ顔で平然と試合開始の一射目を当ててくれるようなプレッシャーの強さと正確さを必要とします。この1射目が的中するとチームに勢いが出ます。
2番は、安定して的中を出せる選手がよいのですが、大前の流れを切らないように良いときはつなげ、悪いときつまり当たらないときは当てて流れを断ち切るそんな、落ち着いた安定感のある人が理想です。
そして、3番目の中ですが1・2と当たって3で弾みが出るとチームは大きな波に乗ります。最後の防波堤でもあり悪い流れはここで完全に断ち切りたいですし、良い流れは大きくしたいです。つまり、臨機応変に対応できるそんな空気の読める選手が理想です。
4番目の落ち前は、落ちを補助する役割があります。一人4射できる弓道では、総計20本で争います。拮抗する試合では1本2本の差で必ず勝敗が決まります。落ち前は、同点の流れのまま最後の射手である落ちに勝敗を決する役目をつなぎます。当てて同点、当てなければそこで決まりという状況を冷静に判断しつつも大変な重圧の中、勝敗の行方をつなぐわけですから重責です。
そして、5番目の落ちです。この存在は、最後の1本を絶対に決める役割があるといった方がわかりやすいでしょう。例え、勝敗が決していようとも5人の意志と決意を込めて的中で最期を締めくくると締めくくらないとでは、まったく試合の内容が変わってきます。
この最後の一本の的中は、それだけ意味にあるもので仲間は、4本目を打ち終えたものから道場を出て、残された落ちの選手の一射を見守ります。静かにしかも美しく、会と呼ばれる的中に向けて精神と呼吸を整え、弦を離すその瞬間を作り出す動作の最中は、会場中が静寂をつくり見守るほどです。

このように、それぞれの立ち順には意味があり、その役割があるのです。
弓道の場合ですが、試合には各学校から2チームを選出して出場させることができます。どんなに選手が多くとも、1校で2チーム程度しか団体戦には出場させることができないのです。後の選手は、個人戦などに出場しますが、選ばれなかった生徒は、自分の実力のなさを痛感することになるのです。そうした場面で、腐らずにどう考え、行動するかが重要なのです。

新人戦から伸びるチーム

3年生が抜けたことで、初めて後輩たちは活躍するチャンスを手にするわけですが、ここで大切なのがどのような結果を出すかではなく、そこからどのようにチーム作りをしていくか、または、各個人がどのように練習していくかということをどれだけ考えられるかということです。
新人戦の結果がそのまま来年の夏や秋の結果に結びつくとは限りません。よい例が、春の甲子園の予選と夏の甲子園の予選では、まったく別の結果になることが多く存在するという例です。
これは、負けたところからチームを育てていくことよりも勝ったところから、目標を明確にしてチームを高めていくことの方が難しいことを意味しています。
部活だけではなく、受験勉強や日頃のテストにもこのことは言えます。失敗や失点からどのように学ぶかが重要であり、それは、日々の取り組みで決まるということです。だから、部活を最後までやりきることは勉強に大いにつながる力になるのです。

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