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なぜ無農薬無肥料米”とか米”を栽培しているのか?

答えは簡単。自分にしかできないからです。

お米を作るのは大変です。発芽を揃えるためにお米のタネを水に浸してハト胸状態にして、苗箱と呼ばれる60cm×30cmの箱に床土を入れ、水を撒き、ハト胸状態になったタネを撒き、覆土する。それを温度が35℃以上にならないようにしながらビニールで被覆し、発芽を待つ。

それと同時に田んぼでは、トラクターなどで耕運し、元肥と呼んでいる稲を大きくする栄養と土壌改良剤と呼んでいるビタミンや微量元素を投入し、また耕運する。田植えの20日前くらいから、水を引き、一度荒く耕運する。この場合のトラクターには最初の耕運の時と違ったハローと呼んでいる器具で耕運する、”荒代(あらくれとこちらでは呼んでいます)”を一度行い、田植え直前には、苗の植え代(しろ)を作る”代かき”という作業を行います。この代かきの作業の前までに田んぼの土手の草刈りを終え、田植えの準備を行なっています。

目が出た稲は、か弱く、すぐに萎れてしまうので、乾燥しないように心がけます。水稲と呼ばれているくらいなので、多少の湿潤には強いですが、水は温度が上がりやすいので注意が必要です。また風にも弱く、おそらく風で乾燥してしまうのでしょうが、葉っぱが丸くなってしまいます。これを20日間くらい続けます。

通常栽培ですと、田植えの時に泥稲象虫といもち病の農薬を撒いてから田植えをするのですが、無農薬無肥料栽培米の”とか米”には撒きません。撒きませんが、被害はほとんどありません。

これからが試練の時です。

草取りが一番の難敵。

6月7月は稲の成長の真っ盛りです。稲の成長に優っているのが、雑草と呼んでいる田んぼの草たちです。ヒエ、クログワイ、シズイなど、難敵がたくさんなのです。彼らの生育を止めるのが除草剤ですが、無農薬なので頼れません。機械と人力にのみ頼るのです。

これを2ヶ月間ずっと行います。8時間田んぼに入って作業をする日もあります。この除草作業の出来次第で秋の収穫量が大きく変わってきます。稲に届くはずの肥料が雑草に行ってしまうのですから、肥料を与えない無肥料栽培では稲に行く栄養が限られており、こちらとしてはたまったものではありません。もちろん稲にしても同じことが言えます。

下の写真は、除草作業を行なった後の写真です。どれがどれだかわからないでしょうが、幅が広い緑が稲で、写真の下の方にある細い水に浮いているのが雑草(クログワイ)です。

雑草たちが繁茂した様子です。一面緑ですね笑。これでは収量は上がりません。稲と稲の間にしっかり水面が見えるくらいが望ましい。

稲の花です。可憐な花です。

無肥料にも関わらず、毎年きちんとお米を育てくれる田んぼの生命力に感謝です。

なぜ、無農薬無肥料栽培なのか?

それは、持続可能だからです。ずっと前から叫ばれてきた持続可能な社会の実現。私たちが関わっている農業で言えば、息子や孫の時代でも農業を続けられるような社会にすることです。私たちのような小さな農家では、規模の大きな農業に太刀打ちできません。大きなトラクターも買えないし、コンバインも買えない。そこに対抗するには、私たちしかできない農業をするほかありません。大型化も同じことなのでしょうが、私たちの選択肢にはありません。ゆくゆくは全量を無農薬無肥料栽培のお米にしたいと考えています。

そして、無農薬無肥料栽培のお米は格段に美味しいのです。これは自画自賛ではなく、お客様に食べていただいても同じような答えが帰ってきます。もちろん通常栽培のお米だって十分美味しいのですが、無農薬無肥料栽培のお米の味は格段に違います。

これからに必要なのは労働力と繋がり

持続可能な農業を進めて行くには何が必要か?

まずは、労働力です。はっきりと言えます。草取りしてくれる労働が必要です。AIでもいいのですが、彼らに頼めるわけもなく。。。

そして食べていただける賛同者がより必要だと感じています。農業にとって一番大切なのは、消費者と繋がること。賛同してくれる消費者がいなければ絵に描いた餅になってしまいます。

この繋がりを持つことは他の業界と比べてもダントツに低いです。消費者と上手に繋がっている農家さんはたくさんいるのでしょうが、まだまだ全体から見れば低いはずです。これを読んでくださっている方も、お米が誰に育てられているか知っている人は少ないはずです。農業女子の存在も私たちにとっては追い風です。女性の力は偉大ですから。

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