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50を過ぎてイチバンこっ恥ずかしい事。

50を過ぎて、早とちりして、感情的に怒ってしまうことほど、情けない事はない。

内心は「自分は間違いない」の一点張りだ。


ところが、そういう時に限って、自分が早とちりをしてしまって、勘違いしていることが多い。

さすがに、自分という人間に付き合って50年もたつと、自分の短所くらいは分かっている。

だから、年を重ねるにつれ、気を付けるようにしている。


気を付けるようにしているのに、何をしているんだか私。

もう50も過ぎているのに。


感情的に怒ってしまったがために、後に引けないのが人間・・・。

いや、「人間」・・・にしちゃあいけないな。

後に引けないのが「私」。

変なプライドがあるんだろな。そういう時って・・・。


先日終えた、アルバイトさんに来てもらっての「摘果作業」。

柿の枝には、普通、4つか5つの蕾がなる。
4月から5月ごろの間に、1本の枝に1つの蕾に絞り込むのが「摘蕾作業」。

「蕾」が「果実」になっていく6月ごろに、2,3本の枝にひとつの「果実」に絞り込むのが「摘果作業」となる。
通常、葉っぱ15枚から20枚で、1つの果実を実らせるのが、一番理想といわれている。
実がなったときに、枝に当たらない場所にあって、太陽に向かっていると日焼けをおこして売り物にならないので、下向きか横向きの果実を残すのが基本。

「仕上げ摘果」と言われるだけあって、どの果実を残すか、仕上げに関わる大事な作業である。

適正な大きなの果実を実らせ、絞られた果実に効率よく養分を行き渡らせ、品質向上のための大事な作業で、「摘蕾作業」で取り残しはないかの確認作業も兼ねている。

生理落下という自然現象で、実が落ちる可能性があるので、通常「摘果作業」は、梅雨の時期を終えてからの作業となるが、うちでは時期を繰り上げて終わらせてしまう。

順番でいうと、収穫時期が早い種なし柿の「摘蕾」が先で、甘柿の「摘蕾」。
「摘果作業」も、種なし柿が先で、甘柿が後の順番に作業をすすめる。
あわせて、畑を二巡することになる。


一番厄介なのが、たねなし柿と甘柿が混在した畑だ。


さぁ、みんな!
じゃあ、種なし柿の「摘果作業」を終えたら、富有柿の「摘果作業」に移ってくれる?


「種なしは、もうやったで(済んだで)」と、アルバイトさんが、私の申し出に対して口々に。


え?!済んだ?

早とちり きっとそうだよ 早まるな 

kakiemon心の俳句

「そうか!じゃあ、富有柿の摘果作業だけで、頼んどくわ」と、『うっそー!「摘果作業」してないで!ちゃんと、種なし柿も見てや』と、いつもなら間髪入れずに言っていただろう私は、ここで感情を抑えることができた。

抑えることができたけれども、気になる私は、皆が甘柿の摘果作業に取り掛かる横で、たねなし柿の摘果作業の確認に回ることにした。


そう、どうせなら、確認してから言えばいいやん・・・。

そうそう!エライぞ!わたし!
頭に浮かんだその言葉、すぐには言わんかったよ!
随分と、大人になったもんだ!(もう何歳?!)


えっ?!
うん?!
ゔ~~~~~~~~~ん!


悩んだ挙句、私はもう一度、種なし柿の摘果に回ることにした。


ええやん!ええやん!自分の畑の果実をより良く実らせるために、回ることに誰の許可がいるん?

アルバイトさん達が、甘柿の摘果作業をしているすぐ傍で作業をするのは、少し気が引けたが、もう一度回る必要がでてきた気がしたのは、もう何年も同じようなメンバーの仕事のできを見てきたことと、何年もの同じ仕事をしてきた経験からくる『勘』だった。


えっ?!
これ、ホンマに、摘果作業したんかな?


取り残しの果実や、枝に挟まれて柿が傷がいくこと120%の果実を見ていると、落胆の気持と、怒りを通り越して、心なしか悲しさが際立ってきた。


えーっと・・・。
どうやったっけ。あの時・・・。
甘柿の摘蕾終わって・・・。その後・・・。


そうそう!甘柿の摘蕾終わったところで、ちょうど5時になったんちゃうん?!そうやん!


作業をしながら、2週間ほど前に、同じ畑に甘柿の摘蕾をしに来た時のことを思い出していた。

自問自答しながら、さらに記憶は、違った方向へ歪んでいく。


そうそう!たねなしに混じった甘柿も忘れやんと採ってや!って、M君に言った!言うた!


同時に、目の前のいくつかの取り残しの果実と、太陽に向かっている果実を目の前にして、私の気持は定まった。


さぁ、きょうの仕事はおきにしようか。

定時の5時が近づいてきたので、作業中の皆に声をかけ、ちょうど目の前に居たM君に続けて言った。

やっぱし、これ、摘果してないやん!
あの時、M君にたねなしに混じった富有(甘柿)も忘れやんと採って言うて、ちょうど、定時になったやん!


M君はいつものように、私の勢いに押され否定もせず悪びれもせず、「ハイ」と返事にならないような返事で低い声で返してきた。


『あんなに取り残しが多いのに、摘果作業済んでるわけないやん!』と、内心むしゃくしゃしたまま、帰路に着き、部屋へ戻った私は、作業日誌を確認することにした。


・ ・ ・ 。

『富有柿摘蕾 たねなし摘果もまとめて終了』

作業日誌に書かれている、2週間ほど前の作業内容を目にしたとき、血の気が引くのが分かった。


ガビ~~~~~ン どうしてあそこで 早まった

kakiemon 後悔の俳句(ガビーンは死語やね?(笑))


「みんな、たねなしの摘果さあ、終わった言うてんけど、見たらとても仕上がったもんじゃなかったしさぁ、てっきりやってないと思ったら、作業日誌見たらやっててん。そう言えば、定時まで時間あったから、あの時やったわ!って思い出してんけどさぁ・・・」


「でも、あんましやで!あの『でき』は!
『仕上げ、ちゃんとやってくれてなかったから、てっきりやってないと勘違いしてしまったで』って、言うたろか?」

怒りが収まらず憤慨していた私は、どうにか心の整理をつけようと、気が付くと、勢いで夫に怒りをぶつけていた。


「そんなこと言わんでいい。何もなかったことにして、『種なし柿、もう一度見てくれる?』で進めていけ」

夫が冷静に返してきたので、私も我に返った。


「とりあえず、謝ろう」

それが、私の判断だった。

決断したはいいけれど、どうやって謝ろうか・・・。

次の日は雨で、考える時間はたくさんあった。


慌てず・・・慌てず・・・。

さらに次の日、心を落ち着けながら、皆が軽トラから降りるのを待って、話しを切り出した。


「ごめーん!やっぱし、種なし柿、摘果してたんやなぁ?!」(とりあえず謝る)

「帰って作業日誌見たら、たねなし摘果も含めて終了って書いてたわ」(事実を述べる)

「だけど、やっぱし『かかり(やり始め)』で、ちょっと実が多いかなぁ。私もついつい多めに残したかもしれんし」(もっと言いたかったが、抑えて、自分のことを引き出しつつ、皆がもう少し注意してくれることを期待する)

「M君にも、えらいキツイこと言うて悪かったわ。私、ボロクソ言うてたでな。ごめん!」(作業がいつも雑なM君が引き金であることは間違いないが、この場で言ったところで治らないのは分かっているし、ここで責めるのは筋違いだと思って、とりあえず謝る。)

ここで、いつものように「にやぁ」とするM君。
自分に都合が悪くても、自分が優位に立っても、いつも出るM君の表情だ。


「悪いけど、もう一度、種なし柿も見てくれる?」


かくして無事にたねなし柿の摘果も終えることが出来たのだが、やはり「早とちり」と「決めつけ」はいけない。

虚しさと、情けなさが、容赦なく自分を襲うだけだ。


だけど、注意をしていても、物忘れが出てくる年齢だということもあって、忘れた頃に同じ過ちをしてしまうのが人間。(コラッ!コラッ!コラッ!年齢のせいにするなっ!成長せよ!)


過ちに気付いたときには、すぐに謝る方が尾を引かずスッキリするということも、年を重ねて知ることとなった。

昔のような変なプライドはとれて、謝れるようになった。

謝れば済む問題ではなく、「早とちり」「決めつけ」を治すことが最優先すべきことだけど、とりあえず過ちを認め謝ると、自分の心も穏やかになり、周囲との関係もより良く保つことができる。


今回も戒めを込めて、過ちを振り返ることにした。
書き記すことで、ある程度脳に残るとは思うけれど、どのくらいもつかな?


ちなみに、柿の摘蕾摘果作業に来てくれるアルバイトさんは、10年15年選手の皆さん。M君は、一番の古株で15年以上になる。
時々、若いアルバイトさんも助っ人で入って下さるが、常連アルバイトさんは、私より年が上の方ばかり。


「奥さん、またやってるわ」と言われないように、気を付けなきゃな。
M君に『にやぁ』とされないように。

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