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【「はじめに」公開】レス・ギブリン著『人望が集まる人の考え方』

本書は、著書累計500万部突破のベストセラー作家による半世紀を超えて読み継がれる人間関係のバイブル。
著者は、人生に成功と幸福をもたらすのは、人間関係を築く技術であると言います。
このnoteでは、本書の冒頭「はじめに」を公開します。


はじめに

 現実を直視しよう。
 すべての人が他人に何かを求めている。誰もが相手に好意を求め、自分を受け入れて認めてほしいと思っている。具体例を紹介しよう。

  • 夫婦は互いに愛情と献身を求めている。

  •  親は子どもに従順さを求めている。

  •  子どもは親に愛情と安心を求めている。

  •  セールスマンは顧客に取引を求めている。

  •  経営者は従業員に忠誠心と生産性と協調性を求めている。

  •  従業員は経営者に仕事に対する称賛と承認を求めている。

 すべての人は成功と幸福を求めている。あなたは、自分の成功と幸福に他人が重要な役割を担っているという事実について、考えたことがあるだろうか?
 私たちはたいてい他人との関わりを通じて成功を収める。幸福をどう定義しようと、それは他人とどんな関係を築くかに大きく左右される。
 少し考えてみれば、これはすぐにわかることだ。

人間の本性について知っておくべきこと

 私たちはたえず他人に何かを求めているし、常に円満な人間関係を築きたいと思っている。
 本書を読みながら、自分が他人に何を求めているか冷静に考えてみよう。
 
私は理想的な人物像について述べるつもりはないし、自分の欲求を抑圧してまで他人とうまくやっていくべきだと説くつもりもない。
 本書で伝授するのは人間の実際の行動パターンに関する洞察であり、それを活用して、自分が求めている昇給や取引、好意を得る方法である。
 昔から「知は力なり」と言われてきた。たしかにそのとおりだ。人間の本性(ほんせい)についての正確な知識を身につけて実践すれば、あなたは求めているものをいつでもどこでも手に入れることができる。

 本書では机上の空論を排除して、人間関係についての長年の経験にもとづく確固たる技術を紹介しよう。それは大勢の人の人生で証明されてきたものだ。
 本書の基本原理は、あなたが今まで抱いてきた考え方と大きく異なっているかもしれない。だが、ひとつだけ利点がある。それは「絶大な効果がある」ということだ。

相手が求めているものを与える

 大勢の人が他人に何かを求めていることを自覚している。だが、その願望を満たすことが利己的だと考え、求めているものを手に入れようとしない人があまりにも多い。自分が成功と幸福を得ると、他人の成功と幸福を奪うことになると思い込んでいるからだ。
 ここで断言しよう。
 よい人間関係とは、自分が求めているものを手に入れるのと引き換えに、相手が求めているものを与えることだ。
 
それ以外の関係はうまくいかない。
 相手になんの見返りも与えずに、自分が求めているものを手に入れることに後ろめたさを感じない人は、人間関係についての本をいくら読んでも意味がない。
 本書は、自分が求めているものを手に入れて、しかも相手を満足させる技術をマスターしたい人のために書かれている。

人と関わる3つの基本的なパターン

 誰の世話にもならず、自分だけの力で生きていける人は一人もいない。人はみな他人が与えてくれるものを必要としている。あなたも例外ではない。人間関係は常にそういう必要性に根差している。
 人との関わり方は次の3つのパターンしかない。

  1. 求めているものを相手から奪い取る。たとえば、相手を脅して恐れさせる。犯罪者がその典型だが、社会的地位が高い人もこのやり方を巧妙に使っている。

  2. 求めているものを与えてもらうために媚びへつらう。その卑屈な心理状態を端的に表現すると、「どうかお願いですから、おめぐみください」となる。

  3. ギブアンドテイクの精神で公平な交換をおこなう。相手が求めているものを与えることで、相手はお返しのために、あなたが求めているものを与えてくれる。

 以上の3つのパターンのうち1と2は本書とは関係ない。本書で扱うのは3である。つまり、相手が求めているものを与えることによって、自分が求めているものを手に入れる方法だ。効果のほどは証明済みである。
 あなたは今、他人が求めているものをふんだんに持っている。そこで、それをその人たちに気前よく与えれば、彼らは喜んであなたに成功と幸福をもたらしてくれる。

 自分が成功と幸福を得ようとすると、他人の成功と幸福を台無しにすると思っている人もいるかもしれない。だが、真実はその逆である。それを示す証拠はいくらでも存在する。
 一般に、幸福な人は不幸な人より多くの幸福を振りまくし、成功者は失敗者より多くの恩恵を周囲の人にもたらす。自分の願望が適度に満たされている人は、不満をため込んでたえずいらだっている人より、他人の願望に対してはるかに寛大で思いやりがあるからだ。
 心理学者、犯罪学者、聖職者、精神科医は、この世の問題の大半が不幸な人々によって引き起こされていることを指摘し、欲求不満でみじめな思いをして暮らしていると、周囲の人に多大な迷惑をかけるおそれがあることを警告している。

人間の本性をよく理解し、相手の願望を満たす

 よい人間関係のカギは、人間の本性についてしっかり学ぶことだ。そのためには人間の理想像を追求するのではなく、人間の現実の姿を究明する必要がある。
 人間の本性をよく理解して初めて、成功と幸福を手に入れるきっかけをつかむことができる。
 
人々が何を求めているかを見極めて、相手の願望をうまく満たす方法を紹介しよう。当然、それは人間の本性に反するやり方ではなく、人間の本性に合うやり方でなければならない。
 私たちを悩ませる問題の原因は人間の本性にあるのではなく、私たちが他人の求めているものをないがしろにしがちなことにある。人間の本性はやっかいなものではなく、むしろ理にかなったものである。あなたはそれを知って、驚くと同時に安心するに違いない。
 
人間の本性を軽視しておいて、「あの人は気難しくて手に負えない」と言い訳しているのを見聞きするたび、私はウォルフ・アンド・デサワー社のハリー・マテルスキー人事部長の言葉を思い出す。
「下手なゴルファーにかぎって、自分のミスをクラブのせいにする。それと同様に、人間関係の技術がつたない人にかぎって、『相手が強情だからやりにくい』と不平をこぼす」
 たしかに人々は強情に見えるかもしれないが、大勢の人が人間関係で苦労しているのは、人間の本性をよく理解していないからだ。

 自分が知らないものに対処しているとき、私たちは自信を持つことができない。
 たとえば、エンジンの仕組みをよく理解していないのに、それを直そうとしている修理工を観察するといい。その修理工は戸惑いながら、いかにも自信がなさそうに振る舞っているはずだ。
 一方、エンジンの仕組みを知り尽くしている熟練の修理工を観察してみよう。その振る舞いは自信にあふれていることが一目瞭然だ。
 この原理は何を扱うときにもあてはまる。その対象について知れば知るほど、その扱い方に自信を持つことができる。
 いくら人間関係の表面的なルールを覚えても、それでは人との関わり方に自信を持つことはできない。しかし、人間の本性をよく理解し、基本原理をしっかり学べば、人との関わり方に自信を持つことができる。
 本書は人間の本性を詳しく説明したうえで、具体的な応用の仕方を紹介する。
 大昔から現代まで一貫して成果を上げてきた普遍的なテクニックだから、あなたにも必ず役立つはずである。

レス・ギブリン

目次

Part 1 人間の本性をうまく活用する
第1章 成功と幸福を手に入れる方法
第2章 人を動かす基本的な秘訣
第3章 自分の「隠れ資産」を有効に使う方法
第4章 他人の行動と態度をコントロールする方法
第5章 相手によい第一印象を与える方法
Part 2 友情をはぐくんで相手を味方につける
第6章 人々をひきつける3つの条件
第7章 相手とすぐに打ち解ける方法
Part 3 効果的な話し方で成功する
第8章 言葉で表現する能力を磨く方法
第9章 聞き上手になる方法
第10章 たちまち相手の賛同を得る方法
Part 4 相手にうまく働きかける
第11章 相手の全面協力を得て成果を上げる方法
第12章 人間関係で奇跡を起こす方法
第13章 相手を怒らせずに注意を与える方法
Part 5 人間関係のワークブック
第14章 成功と幸福をもたらす効果的な行動計画

著者について

レス・ギブリン(Les Giblin)
アメリカの心理カウンセラー。人間関係のエキスパートとして知られ、人間の本質に関する深い洞察が好評を博す。本書の原著は1956年の刊行以来、半世紀にわたり不朽の名著として世界中でロングセラーとなっている。全著作の累計発行部数は500万部を超える。邦訳著書に『人を動かす原則』『人の心をつかむ15のルール』(ディスカヴァー)、『「人を動かす」ために本当に大切なこと』『セールスの本質』(ダイヤモンド社)がある。

弓場隆(ゆみば・たかし)
自己啓発書の分野を中心に翻訳している。
『うまくいっている人の考え方』『心の持ち方』『習慣が変われば人生が変わる』(ディスカヴァー)ほか訳書多数。

何かうまくいかないな... そんな時に読み返しています。内容は本質的で普遍的な事ですが、読み返す度に、私にとって新しい発見があるお気に入りの一冊です。 (営業部K)

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