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【「はじめに」公開】和田秀樹 著『不安に負けない気持ちの整理術 ハンディ版(特装版)』

今こそ知っておきたい、不安な気持ちを整理して、自分にやさしく生きる方法
「毎日、イヤなニュースばかり……」
「病気になるのが不安……」
「失敗したらどうしよう……」

「こうなったらどうしよう」に、もう振り回されない!

このnoteでは本書の冒頭を公開します。

はじめに〜不安に引きずられないために〜

不安という感情は、なかなかやっかいです。
振り込め詐欺の被害にあってしまうのも、ブラック企業で理不尽な働き方に苦しみ続けてしまうことにも、不安という感情が関係しています。

他の感情に比べても、不安感情が人生にもたらすダメージは大きいと言えるでしょう。

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により、大きな社会の混乱が生じました。

7月から8月にかけて行われた調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大を不安に感じている日本人の割合は69%。
感染がはるかに拡大し、死者数も多いイタリア(50%)やアメリカ( 51 %)などよりも、日本人のほうがコロナ不安が強い傾向にあることがわかります(マッキャン・ワールドグループ・グローバルアンケート第6回調査より)。

コロナへの不安から外出を控えすぎた結果、うつ病を発症し、さらに自殺にまで至っているのです。2020年10月だけで去年より自殺は600人以上も増えました。また、ロコモティブシンドローム(寝たきり・要介護につながる運動器の病気。高齢者のリスクが問題となっている)となってしまう人も増えはじめています。

コロナ不安から、病院での受診を控える動きも顕著です。その結果、糖尿病などの持病が悪化したり、がんなどの進行が見逃されたりしてしまう危険性も指摘されているところです。

私自身、精神科医として「コロナうつ」の増加に警鐘を鳴らしているのですが、患者さんがほとんど来院されないというジレンマに直面しています。

このように、コロナへの不安だけが強くなってしまった結果、その他のリスクが軽視され、弊害が現実のものとなりつつあるのです。

● 森田療法に学ぶ不安への対処

まずは冷静になって「本当に不安に思うべきことは何か」を見極めることが肝心です。そして、適切な行動を見つけていく必要があります。

実は、こういった発想を精神療法の分野で提唱したのが、森もり田た 正まさ馬たけ(1874~1938)という精神科医です。
森田が創設した森田療法では、不安をなくしたいと考えていると、不安は余計に増幅すると考えます。森田療法では、不安感情をコントロールするのではなく、不安感情に対する態度や行動に注目して、それを治すというアプローチを取ります。

そのために、本来の目標は何かを考えていきます。
たとえば、顔が赤くなることに悩んでいる人に対して、森田は「あなたはどうして顔が赤くなるのが嫌なの?」と尋ねます。
患者が「人に嫌われてしまうからです」と答えると、森田なら次のように言います。
「それなら、人に好かれることができれば、顔は赤いままでもいいわけだよね。世の中には顔が赤くても人に好かれている人はいるし、逆に顔が赤くなくても嫌われている人はたくさんいるよ。だから、顔が赤くなるのを治すのではなく、人に好かれる方法を考えよう」

つまり、本来の目標がわかれば、その目標を達成するための方法を見つけ出し、行動することができるわけです。

これはコロナ不安にも応用できる考え方です。コロナに感染しないことを追求するあまり、心身の健康を損なっては本末転倒です。

「健康に暮らすこと」が本来の目標だと考えれば、適度に外を歩いて運動不足解消と免疫力アップに努めたり、必要に応じて医療機関を受診するなど、健康的な生活をおくるための行動に目が向くでしょう。

体の健康と同時に、心の健康も大事です。実は、うつ病になると、およそ10人に1人の割合で自殺未遂を起こし、100人に1人の割合で自殺が起きることがわかっています。

「コロナうつ」を防ぐためにも、定期的に日光を浴びる、オンラインツールを活用して人とのコミュニケーションを絶やさないようにするなど、行動的な生き方をすることは今こそ大事なのだと私は思います。

● 不安を抱えたままで行動してみよう

世の中には「不安をなくす」という書籍やセミナーがあふれています。しかし、残念ながら不安感情を完全になくすことは不可能です。
コロナ不安も、ワクチンが普及し、完全な終息宣言が出されるまでは、なくなることはないでしょう。ただし、不安に引きずられない選択をすることはできます。「不安を受け入れ、不安とともに生きる」という考え方です。

森田は、不安を感じるのは「生の欲望」が強いからだと主張しました。要するに「健康で長生きしたい」という欲望があるからこそ、自分の健康状態に不安を感じるわけです。つまり、不安は健康で幸せに暮らすための行動のモチベーションにすることができるのです。

不安を抱えたままでも、やるべきことをやっていれば、結果的に不安が和らいでくるものです。

コロナ禍では、健康リスクよりも経済的なリスクのほうが高いとする論調が強くなっています。確かに、会社が倒産して失業したり、業績悪化でリストラされたりする可能性が高まっているのは事実でしょう。

ただ、失業の不安があったとしても、英語のスキルを磨く、副業を始めるなどの現実的な対策を取ることは可能です。「どうすれば幸せに生きていけるか」を考えて行動していくことが大切です。場合によっては、今の会社にしがみつかずに逃げ出してもいいのです。

「案ずるより産むが易し」ということわざがあるように、実際に行動してみたら、意外になんとかなるというケースはよくあります。

不安な感情をなくすことを目標にするのではなく、今できることを見つけて行動的になることで、結果的に不安が軽くなっていくのです。

● 時代の変化に対応する視点

今、時代は大きく変わりつつあります。

コロナ禍をきっかけに会社では在宅勤務の導入が進みましたが、今後この流れが加速し、いずれは在宅勤務が当たり前の時代が到来するかもしれません。

私は映画監督として映画作りにも携わっているのですが、映画の世界も大きく変わりました。今後、映画の分野ではさらに動画配信が主流となっていくのかもしれませんし、再び劇場で映画を観ようとする流れが復活するのかもしれません。

いずれにしても、人は時代の流れに合わせて、やるべきことをやっていくしかないのです。本書は、森田療法の理論をベースに、不安に引きずられず、不安と上手に付き合うコツを図解とともにご提案します。

繰り返しますが、不安になることが悪いのではありません。不安に振り回されてしまうところに問題があります。大切なのは、不安に振り回されないことです。

本書が、あなたの不安感情を建設的なパワーに変えるきっかけになることを願っております。

和田秀樹

目次

はじめに〜不安に引きずられないために〜
第1章 不安と向き合うための10の基本
1 不安は生きる力になる
2 注目すればするほど不安はエスカレートする.
3 不安に感情を支配されるとまちがった判断をしてしまう
4 「この道しかない」と思い込むからつらくなる
5 現状維持が判断基準になっていないか?
6 自由な生き方に不安は付きもの
7 「休んだら迷惑がかかる」は単なる思い込み
8 「みんなと同じ」では不幸になる時代
9 ほとんどの不安は無知から生まれる
10 最悪の事態を想像してびくびくする必要はない

第2章 不安に引きずられない14の方法
1 起こりうる結果を3パターンで予測してみる
2 一人で不安を抱えず本音で相談してみる
3 情報は自分から取りに行く
4 「損切り」を設定してリスクを受け入れる
5 確率で考えてみる
6 ひとつのやり方にこだわらない
7 「みんないい人」と考えるとだまされにくくなる
8 テレビと距離を取る
9 得意なことに集中する
10 物事には2つの面があると考える
11 計画には余裕を持たせて予定の変更を楽しむ
12 他人はそれほど自分を見ていないと知る
13 マニュアル通りやってみる。それから改善する
14 別に失敗したっていい

第3章 平常心で生きる10の方法
1 不安があっても、とにかく行動してみる
2 変えられないことは受け入れる
3 小さな不安を放っておかない
4 自分の世界を大切にして孤独な時間を楽しむ
5 職場以外の居場所をつくる
6 具体的に書き出してみる
7 外の世界の人にメンターになってもらう
8 疲れているときは休む
9 「不安な自分」を受け入れてありのままで生きる
10 楽しい目標を作る

付録 不安を力に変えるちょっとした習慣
習慣1 「かくあるべき」をやめる
習慣2 他人の不安感情には付き合わない
習慣3 他人の言葉を深読みしない
習慣4 SNSとは適度な距離を保つようにする
習慣5 哲学者から解決策を学ぶ
習慣6 ほめてもらえる場を持つ
習慣7 自分で自分をほめる
習慣8 「空気を読めなくてもOK」と開き直る
習慣9 「出たとこ勝負」の発想を持つ
習慣10 リスクを分散してチャレンジする
習慣11 「みんなと同じ」にこだわらない
習慣12 考える時間をとる
習慣13 できる人のまねをする
習慣14 第三者の目で不安を見る
習慣15 不安がなくなったら何をするか考えてみる
習慣16 自分について他人に聞いてみる

おわりに〜不安をエネルギーに変える生き方を選ぶ〜

著者について

和田秀樹(わだ・ひでき)

1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。
東京大学医学部付属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部付属病院精神神経科助手、アメリカ、カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科を経て、現在、国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック(アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化したクリニック)院長。1987年『受験は要領』がベストセラーになって以来、大学受験の世界のオーソリティとしても知られる。
著書に『50歳からの勉強法』『医学部の大罪』『脳科学より心理学』『悩み方の作法』『40歳からの記憶術』『一生ボケない脳をつくる77の習慣』『感情的にならない気持ちの整理術』(以上ディスカヴァー)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『「あれこれ考えて動けない」をやめる9つの習慣』(大和書房)、『テレビの大罪』(新潮新書)、『感情的にならない本』(新講社ワイド新書)、『受験は要領』(PHP文庫)など多数。


本書を読んで、ちょっと考え方を変えるだけで
ラクに生きられるようになった気がします。
肩の力を抜いて読める本です。
営業部 川島

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