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藤田嗣治が愛したものたち_230224

友達が貸してくれた益田ミリさんの漫画の中で、ミリさんがひたすら読書をするためだけにする一人旅に憧れてやって来てしまった2月の秋田。
小さなキャリーケースをほとんど積読本で埋め尽くし、移動やカフェ、温泉宿でただただそれらを消化する。自由きままに自分と向き合う贅沢な旅である。

観光するつもりは毛頭なかったものの、県立美術館というのは建物そのものから個性があってなかなか面白い。調べてみると秋田駅から10分ほど歩いたところに県美、近代美術館、文化センター、シアターホールなどが集結しており何事かと思えば、秋田はここ数年文化政策に力を入れているのだとか。

タクシーのおじちゃんに言わせれば今年は随分と暖かい2月で過ごしやすいのだそうだけど、直近の星野道夫展に影響されしんしんと雪降る銀世界を期待していた私は少し残念。それでも市中には全体が凍ってびくりとも動かない川があって、街に自然が当たり前にあるその光景と遠くまで来たんだなという感動で心が躍った。


残雪の中どっしりと構える秋田県立美術館では藤田嗣治による秋田の年間行事を描いた大きな大きな壁画を中心に、いくつかの作品が常設でコレクションされている。秋田の資産家で美術コレクターでもあった平野政吉とパリから帰国した藤田が出会い、縁が続いたのだとか。(その後藤田は何度も秋田を訪れ、藤田の恋人が亡くなった際には彼女の鎮魂のための美術館をともにつくろうともしていたらしい!)

螺旋階段が素敵

企画展では彼が愛したものたちと題して、南米を中心に旅行した際の収集品が展示されていた。平日の美術館は人もほぼおらず、何かのお祭りで使われたようなヘンテコなお面たちや何に使うかわからない動物らしき姿をしたいくつかのオブジェを順番に、じっと一人で眺める。

正直これでひとつの企画展とはややむりがあるのでは?とも思いつつ、自分も旅先でつい買ったり集めてしまって自室の窓際にただ並べられているヘンテコなモノたちに想いを馳せていた。私が偉人になったら、あのヘンテコたちも私の愛する収集品となるのだろうか...
ただの石ころや全く実用性のないものを見捨てられない性分を肯定されたような気分で、これまでよりも少し、レオナール藤田を近く感じられるようになったかな。

ヨルダンで買ってしまったヘンテコなもの。形も歪だし穴が空いているが何に使われていたのかはいっさい謎

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