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サバカン 「スタンド・バイ・ミー長崎版」

気になっていた映画「サバカン」をネトフリで見つけ、昼寝のお供にと見始めたら…
これがとんでもない傑作で、僕に昼寝をさせてくれなかった。

⚠️注意⚠️以下ネタバレ有り

舞台は80年代の長崎。
山と海しかない何処にでも有るような田舎町の少年二人の夏の友情物語である。
貧しいけれど心までは貧しくなかった時代。
スマホもゲームも無かったけれど毎日が楽しかった時代。

主人公久田孝明君はある日クラスの中で1番貧乏で皆にからかわれてる竹本健次君に夏休みにイルカを見にブーメラン島へ行こうと誘われる。
そして夏休みのある日の早朝に二人の短い夏の旅が始まる。
こっそり行こうとしていたら竹原ピストル扮する父親に見つかるが、男の子の冒険心を理解した父親は「ジュースでも飲め」と小遣いを渡し二人を見送る。
途中、ヤンキーに絡まれたり、無口な強いお兄さんや綺麗な親切なお姉さんが助けてくれたりしながらも楽しかった二人のたった1日だけの夏の旅は終わる。

それ以来、仲良くなった二人だが、ある日、孝明は健次に家に遊びに来てと誘われる。
健次には父親はいなく、母親と4人の兄弟姉妹がいた。
貧しいはずなのに寿司が好きと言った孝明のために健次が用意したのは…サバカンをネタにしたサバカン寿司。
これが実に美味そうなのだ。
孝明は襖に隠れて羨ましげに見ていたお腹を空かせた兄弟姉妹を招き入れサバカン寿司を皆で食べた。
「美味しいものはみんなで食べたらもっと美味しい」と言いながら。


いいポスターだ。

貫地谷しおりさん演じる、健次のお母さんは一人で家計を支えていた。その日も仕事を終え、娘にせがまれたプチケーキを自転車に積み、家路を辿る途中で…
彼女は交通事故に遭い、亡くなってしまう。

母親の葬儀が終わると健次の兄弟姉妹は親戚の家にバラバラに引き取られる事になった。

健次のお母さんから「あの子はあなたが自分のことを友達と思ってるかどうかわからない」「簡単に友達とか言わないで」と聞かされていた孝明。
それまで友達がいなかった健次の想いが涙を誘う。

そして孝明は孝明で「友達です」と言えなかった自分を悔やむ。

「友達なのに…友達だと思ってたのに」
孝明はその思いに小さな胸を痛めていたが、健次の旅立ちの日にその思いは爆発する。
大切な貯金箱を壊してある物を買えるだけ買い、駅へ走る孝明。
ある物。
その手には大量のサバカンが入ったレジ袋が握りしめられていた。

名シーン!

そして…とここからはさすがに書けない。是非ともあなたの目で見て欲しい。

この映画には子供の頭を平気で叩く親が出て来ます。
だけどそこには「愛」が溢れてます。
それは理不尽な暴力なんかでは無い。コンプライアンスなんて言葉など無かった時代。
この映画はそんな家族と友達との別れを初めて経験する男の子、そしてそれを優しく見守る愛おしい大人たちの物語です。
竹原ピストル、尾野真千子、貫地谷しおり、岩松了、草彅剛と脇を固める役者さんの抑えた演技が主役の二人の子供たちを引き立たせます。

最後に孝明役の番屋一路君
健次役の原田琥之佑君
君たちは本当に素晴らしかった。
最大級の拍手を送ろう。

『サバカン』いい映画だった。

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