【おすすめ本】色川武大/怪しい来客簿
読書というのは困ったもので、読めば読むほど読みたい本が増える。有名な作家でも読んでいない人が僕にはたくさんいる。色川さんもその一人だった。
▼▼今回の本▼▼
色川武大は1929年生まれ。お父さんは退役軍人で、べつに働きもせず、家族は恩給で暮らしていた。戦争が終わると、ばくちに明け暮れて、そのひぐらしの生活を送る。阿佐田哲也名義で「麻雀放浪記」というエンタメ小説も書いていて、この本の新装版カバーイラストを描いたのは「カイジ」の福本伸行さんだ。
とにかく不思議な文章を書くひとで、不思議なひとだったんだなと思う。外からみれば破天荒なのに、一本芯が通っている。少しもなにかを演じているようなところがなくて、おのずと周りに人が集まってくる。空襲の体験もあって、生と死を軽々飛び越えてしまうような図太さがあるのに、ヘンなところでこわがりだ(川上弘美さんが色川さんを好きなのがよく分かる)。人をすごくよく観察している。クセがあるのに透き通った文章を書く。例えば、
この本の解説で、長部日出雄さんは「ぼくの場合は、生きていたときよりも死んでからのほうが、ずっと色川さんの本を読みかえす回数がふえた」と書いている。作品にそれだけ、色川さんという人格が宿っていたということなんだろう。
(おわり)
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