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アフリカの蚊帳を調べたら平安時代にたどりついた|ウガンダ生活

日本とアフリカの生活の共通点というか、最大公約数を知るのが好きで、いろいろ調べます。同じ目的の道具なのに、日本とアフリカで見た目が全然違っていたりして、人間の創意工夫は面白いなあと思うからです。

現代のアフリカの蚊帳

この間、いい例を見つけました。蚊帳。目の細かな布を天井から吊り下げ、寝ている間の虫除けにするあれです。ウガンダのホテルでは、カーテンタイプか天井の一点で支える三角錐タイプをよく見かけます。

カーテン式は圧迫感が少ない。
三角錐式は取り付けが簡単。

背景にあるのは、アフリカで猛威を振るうマラリア。マラリアは朝夜に活動するハマダラカという蚊が媒介する熱帯病で、今も年間60万人以上(特に子ども)が世界で亡くなっています。僕のいるウガンダ北部もマラリアの汚染地域。

蚊帳は安価(5ドル程度と言われる)で長持ちなので、国連機関や政府がこぞってアフリカの人々に配布してきました。UNICEFは2012年から現在までに2億枚以上の蚊帳を配布してきたそうです。(どうやって配ったのか、気になる)

素材でみると、アフリカで流通している蚊帳は軽くて安価なポリエステル製などの化繊です。コスト重視&耐久性重視。アフリカにおける蚊帳は「健康のために大量生産される安価な化学製品」といえるでしょう。

平安時代の日本の蚊帳

網を吊って虫が入るのを防ぐという発想は目新しくない、というかその歴史はなんと紀元前に遡るみたいです。日本でも、平安時代に蚊帳はあって、絹や麻でできていたらしい。御帳台と呼ばれる貴族のベッドに使われていたそうです。

それで納得しました。僕自身は蚊帳を使って寝るのが嫌いなのだけど、その理由は中で寝ると暑くて圧迫感があるからです。アフリカの蚊帳は化繊で、絹や麻よりも熱伝導率が低い。熱伝導率が低いと、熱がこもりやすく、寝苦しくなるのです。

「なぜ貴族があんなに寝苦しいものを使っていたんだろう」と思っていたけど、当時の蚊帳の中はもっと涼しかったんだろうなあ。蚊帳はうるさい虫を避けて快適に夏を過ごすために欠かせない、優雅な暮らしの贅沢品だったのだと思います。

蚊帳と漁網

1000年前の日本で贅沢品だった蚊帳が、現代のアフリカでは命を守るための道具として大量生産されている。へーと思っていたら、面白い記事を見つけました。安価な蚊帳をアフリカの漁師たちが漁網のかわりにしているというのです。

蚊帳は専用の漁網より目が細かく、漁網ならすり抜けて大きく成長できるはずの稚魚も捕らえてしまう。蚊帳には殺虫剤が染み込ませてあることも多く、水環境も損なう。でも、漁網より安く手に入るので、漁師たちは蚊帳を使うのだそうです。

大量生産で丈夫というアフリカの蚊帳の特徴が完全に裏目に出ていて、難しいなと思ました(麻の蚊帳なら漁には使えないだろうから)。道具は暮らしを映す。その暮らしの向こうに歴史と社会がある。それを考えるのは楽しいです。

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