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『物語の欠片』のカケラの裏話再開 アイリス&サルビア

と、言うことで再開しました、『物語の欠片』のカケラの裏話!
な、何が「と、言うことで」なの?という方々のために復習しますと、昨年夏に橘鶫さんの大長編『物語の欠片』のキャラクターのイメージ画を描かないか、というご依頼を著者様ご本人からいただき、物語の大ファンである私は浮足立って調子に乗って計8枚の絵を描かせていただきました。

詳しくはこちら↓

そしてですね、なんと今年に入ってからは「KaoRuさんの好きな時に好きなように物語の絵を描いてください。番外篇で使います」という、夢でも見ているかのようなお話しをいただきました!

その第一弾の絵が、先日素晴らしい物語と共に公開されました。

絵の全体像は、ぜひ鶫さんの記事からご覧ください。物語の最後に載せていただいています。

ここでは今回の制作裏話を綴ってみたいと思います。


サルビアとアイリス

今回描かせていただいた二人のキャラクター、サルビアとアイリスは『物語の欠片』本篇でも六百年前に生きていた人たちとして描かれています。アイリスは魔物となって現代(物語の中での「現代」です)まで存在し続け、物語の第一篇に登場するわけですが、私はこのアイリスに、なぜかこだわっていました。描きたい、描きたい、と。

今回、いろいろ現実世界で疲弊する中、「この目の前の仕事が終わったら、自分へのご褒美として、アイリス描くんじゃ…!」と描く直前まで半ば意地でアイリスへの思いを募らせておりました。
そうしている間に頭の中ではいろいろな構図が飛びかっていたのですが、自分の心の中を探ってみたところ、私がなぜアイリスという人物に惹かれるのか、に行きつきました。

私が描きたいのは、人間であったアイリスでも、魔物になったアイリスでもなく、不条理な運命によって引き裂かれた恋人サルビアのもとへ帰り、魔物の状態から解放される瞬間、それなのだ、と。

大地の化身サルビアに、すくいあげられるような構図(「救いあげる」ではなく「掬い上げる」)。
私は普段制作していても、自分の作品に満足することはほぼ皆無です。
しかし、今回の一枚は、描きたいと思ったものと、描かれたものとが、限りなく近く、最近描いた一連の絵の中で、だんとつ満足度が高い出来となりました。

これも鶫さんのもともとの物語が素晴らしい土台となっているおかげなのだなあ、と思います。

番外篇は、ぱっと見、お話が先に書かれ、挿絵が後で描かれたように見えるかもしれませんが、実は逆。私が勝手に描いた絵に鶫さんがお話を書かれているのです。
そして今回、ものすごく感情移入して描いた絵と共に登場したお話を読んで、涙を浮かべてしまいました。「これこれ、この絵で読みたかったお話はこれなんです!」と感動して。
これはもともと物語の中で読んでいたアイリスとサルビアから私が鶫さんに見えているものを読み取って描いたからなのか、鶫さんが私の絵を見てそこから私の入れ込んだ思いをくみ取ってくださったからなのか、はたまたその両方なのか…私には正確には分かりませんが、こんな体験、そうそうできない、と感動しております。

ちなみに絵は昨年描かせていただいた時の絵よりも大きいです。
昨年は「スキャンしたいならA4じゃなきゃ(家でスキャンするため)」という思いに縛られてしまって、すべてA4くらいに収まる大きさで描いたのですが、普段A4よりも大きい絵が多いので(特に水彩画、水墨画)少し窮屈でした。
今回は「好きな大きさに思いっきり描きたい、スキャンしたければどこかに頼めばいい」とやっと思い至り、27 x 38cmという大きさとなりました。

そして、絵のほうも(キャラクターが昔の人、というのもありますが)昨年よりかなり抽象度を上げました。前回も「イメージ画を描く」という前提で始めたのですが、キャラクターを物語で表現されているように再現しなくては、という思いもあり、中途半端な仕上がりとなっていました。今回はより「描きたいものを描いた」感が強いです。


番外篇のための絵、心がぐわっと動いた時にしか描けないと思いますが、その分一枚一枚がより濃い濃度で仕上がるのではないかと思います。観賞してくださる皆様も、ゆるりと、しかし末永くお付き合いいただければ、と思います。

このような素敵なご提案をしてくださった鶫さん、本当にありがとうございます。
引き続きよろしくお願いします。


今日の一枚。
アオサギ氏も、新しい物語に興味津々の模様。


豆氏のスイーツ探求の旅費に当てます。