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言葉による創作

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気が向いたときにやっている言葉による創作です。短編、俳句、詩など。
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#水彩画

季語の美しさにもだえ詠んでみる~春の覇者決勝戦

本記事はらべあろ企画『春の覇者はわたしで決まりよ』決勝戦への参戦記事です。 ……へ?決勝戦って、言いました? 決勝戦って、予選を勝ち抜いた選手が出るヤツ? あ、はい、分不相応ながら、そんな流れになりまして。 ちょっと待った。アンタ、二回戦に超勘違い句を投句してなかったか? ええ、そりゃあもう、あの十七音自体に「間違い」などはないはずなんですが、それを詠んだ背景がね、なんともこっ恥ずかしいものでして(寝る前に投句して朝起きたらウミネコ編集長から非常に紳士的に救命ボートが出され

非力な祈りを胸に世界遺産で詠んでみる

らべあろ企画『日本の世界遺産西日本編』に参加いたします。 らべあろ企画ではルール違反常習犯のワタクシ……「と豆氏」、と言わないのは、現在コーヒー豆氏、既に年末年始の数々のイベントの準備に追われているらしく、私のところにいないから。 ということで今回は単身での参加となります。 しかし、ルール違反は健在です。笑 相変わらず「日本のことは分からん」とぼやきながら、私でも分かる、私も行ったことのある西日本の世界遺産、と考えあぐねて(京都に三年住んだことのある人間が何を言ってんだ

椿の雫よ、その愛しき存在よ

椿の花が乱れ咲いたころ 椿の花々の間から 零れ落ちるように まるで椿の露を集めたかのように 現れた生命体 息を呑むほど美しい 漆黒の髪に深紅の唇 瞳は二粒の黒曜石 肌はそう 椿の雫と同じように透明で 私はその生命体を「椿姫」と名付けて愛でることにした ところが当の椿姫 私が「椿姫」と呼び掛けたとたん その名は気に食わぬと 私を黒曜石の瞳で睨みつけた 何が気に食わぬと言うのか こんなに美しいあなたには最もふさわしい名だと あなたを愛でるために付けた名だというのに お主わ

そのひたすら真白き世界にて《白》

ピリカグランプリ運営委員の方々のこちらの企画に参加します。 本作品はさわきゆりさんによる小説の前半から始まります。後半が拙筆となっております。 《前半》 透き通るような白い肩を、金に近い栗色の髪が滑り落ちてくる。  フェイシアはゆっくりと両腕を上げ、頭の後ろで指を組んだ。  スカイブルーの背景紙に、ささやかな細い影。黒のベアワンピースをまとった背中が、健吾と僕のカメラの前に凛と立つ。  ライトを浴びて輝く腕は、まるで真珠のように艶やかだ。 「すげえ……」  健吾が、ため