「なんで僕に聞くんだろう。」が効いて、「花まるな人生」が効かない理由を考えてみた話

楽しみにしていた幡野さんの人生相談本が出たので即買いしました。非常に良かった。読書感想文するにあたって、横に並んでいた同じ幻冬舎発刊の花まる学習会の高濱さんの本を並べてケチつけます。

幡野さんの本が良くて花まる本すっげえハズレだった話なので、読む人選んでね。

花まる学習会のことは割と好きで、なんといってもイモニイこと井本先生と組んでやってることからも一目置いてたんです。

だから素直に読みたいなと思って買ったんですけど、これがもう目が滑る滑る。なんじゃこの上っ面文章。すっげえがっかりしたんですよ。で、逆になんでこんなにダメだったのかを考えてみたくて。

幡野さんの新刊は期待通りでした。同じような人生指南本(?)であるのに、この差はなんだ、と。

おばちゃんの結論として、花まる本は、結局”成功”なんかを目指してるんですよね。人生や世界や社会の明るいところだけを無理やり見せられている感じ。だから「はみ出し」とか「回り道」とかいう言い方になる。正道がある、という確信が根底にある。そこがもう浅はかに感じられちゃう。

夢に向かってがんばれるのがいいことで、社会的に成功するのがいいことなんだというのがどうしても”ある”。

だから、こういう子が東大に行きましたよ、なんて事例が載ってる。つまりガワが違っても”子ども全員東大に通したママの本”とかと本質変わらないってことだよねえやっぱ。

著作の中で触れられてますが、高濱さんも障害のあるお子さんがいらっしゃるそうで。イモニイは障害のある兄の存在によって「自分の”勝ち得た”すべては自分の力でもなんでもない、だって兄はそもそもそんなことすら許されていないじゃないか」という徹頭徹尾冷めた目をお持ちなんですが。

高濱さんはそれがないように感じられる。「息子の存在は私たちに光を与えてくれます」系の、無理やりに光を当てる方向にいっちゃう。

わかる、わかるんだ。でもそれ、逆につらいし浅いんだ、たぶん。

現実には高濱さんと井本さんはタッグを組んであるわけなので、著作には出てこなかった、共闘できるだけの信念のつながりがあるのかもしれないですけど。いやそれを期待して買ったんだけど、そうじゃなかったので。

とすると、意識してそういう本を書いたのかもしれず。でもそれならなおのこと罪深いんではないか。客層の求めるものを出すという意味では正しいけども…。

親は不安なので励ましてほしいですよね。明るい言葉、大丈夫と言ってほしい、こうしたらいいよ成功だよ、という道筋が結局はほしい、だからそういう本が売れる。なんかそういう意図を感じる、隅々にまで。花まる本はそんな本でした。

幡野さんにそういう上っ面の”優しさ”はない。だがそこがいい!!笑

大丈夫じゃない人に大丈夫ですよって言うの、その人のためにならないよね、というような確固たる強さがある。だから自殺したい人には自殺してもいいよってまず言うし。

幡野さんにものを聞きたい人がこんなにたくさんいて、そしてそれを読みたいと思うおばちゃんみたいのがこんなにたくさんいるのは、ひとえに「突き詰めきった思いやり」みたいなものがあるからじゃないかと。

世の中、そんなに簡単に正しさとか見つかりようもないです。だからこれがいいよとか簡単に言う人はなかなか信用ならないし、その情報はとても意味がないものになる。

がんばったら夢がかなうとか、こうしたら成功するとか、そういうのがいかに頼りない指針であるかは、実はもうとっくに多くの人が知っているんだよね。だって、そうはならなかったじゃないかって皆もうその現実を生きている。

受験に”勝って”、東大に入っても幸せじゃないかもしれないし、かといって学力や肩書以上の何かを手に入れるのは難しい。どうやら立派で安全な道には行けなかったようだって人のほうが世の中にはきっと多くて、立派で安全な道に行ったけど幸せではない人もきっと多い。

なにせ人はいずれ老い、病み、死ぬからね。それだけでこの世は本当に地獄ですよ。

理不尽に襲われることもめちゃくちゃたくさんあって、生まれながらに障害があったり重病で苦しむこともある。いじめにあったり事故にあったり、たまたま”当たら”なくてもその様子をネットを通じて知っていたりする。

それは現代に限ったことではなくて、結構昔から人間はこの世は不条理だなあと思って生きてるわけで。

そんななか、年末ジャンボ宝くじに当たるかも!みたいな話をされても大して価値はないんですよね。それはごく一部の、恵まれた能力とか資本とかを持っている人たちが求めて買っていくのかもしれない。当たる可能性がある人たちが。それだけ恵まれているのに、悩んでいる人たちが買うのかもしれないね。だとすれば、それはそれで価値があるのか、その人たちにとって。やっぱり、おばちゃんがただこの本のお客さんじゃなかっただけなんだな。

でも、きっと花まる本より幡野さんの本のほうが売れるんだ。はるかに。そこはおばちゃん確信してる。

幡野さんは同じ目線で真剣に考えてくれる。たぶん、相談者本人が逃げちゃってるようなことも逃げずに考えるから、核心をついた答えができるんじゃないかなあ。

それは幡野さんがガンだからということ、だけではなくて、今まで幡野さんを形作ってきた全てが、幡野さんそのものがそういう人なんだってことなんだと思う。

そこにウソやこびへつらいはない。

厳しいけど、甘さはないけど、本当に助けになるのはやっぱりそういう言葉なんだよな。

清く正しく美しく!ってやってるひとたちには、不倫や自殺や虐待の話を扱えないんじゃないか。強さが足りないんじゃないか。成功しなきゃしんじゃうんじゃないか。

かくありたし、こうはなりたくない。おばちゃんひたすらに自戒の2冊でした。

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