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iPhone 15から見る「スマホ」の限界

先日、iPhone 15/Plus/Pro/Pro Maxが発表されましたが、USBCの搭載など画期的と思われるアップデートがあった割には、そこまで話題になっていないなという印象を受けています。これが示すのは何なのかについて深堀していきます。


コモディティ化したスマートフォン

考えてみれば、すでにスマートフォンはアップルだけのものではなくなりました。OPPOやXiaomiを筆頭にAndroidスマホはiPhone最新機種の4分の1の価格でほとんど不満のない性能があることは実証されつつあります。

また、最近では1万円を切り、5000円ほどで買えてしまう格安すぎる端末も出てきており、その価格はAppleの時価総額の上がり具合とは対照的に下がりつつけています。食料品やエネルギー価格が高騰する一方で、こういった最新ITデバイスの相対価値が目減りしている状況を踏まえると、これまでのITテクノロジーへの過度な期待というのが薄れつつある、もしくはその限界が近くなっていることの証左といえます。

アップデートがなくなった果て

2007年に発表されたiPhoneは電話とインターネット、音楽再生機能を集約させたと紹介され、それ以降生活面ではほとんど欠かせない存在として考えられてきました。今後もその役割は変えつつも、スマートフォンという発明が忘れ去られることはなく、何かの書物に記されるレベルで画期的なのは想像に難しくないですが、現状「スマートフォン」はそろそろ形を変えなければならない段階にきているといえます

もしもこのまま、今まで通りのスマートフォンしか市場に出てこないとすると、冷蔵庫やハイレゾテレビ、洗濯機のような電化製品のように毎年1%くらいの修正が加わる程度にしかアップデートされず、そのうち出てくるであろう「アフタースマホ」的なイノベーティブ商品にその機能を内包される(いわば冷蔵庫がIoT化したような状況)ことが予想されます。

中国製とムーアの法則

また、思い返してみれば、iPhoneが毎年新作スマホ、タブレットを出しているその陰で、中国製のデバイスはより安価でほとんど利用可能な商品を出しており、ハードウェアだけでなくオンラインゲーム(原神のホヨバースやRiot社を買収したテンセント)オンラインショッピング(アリババ、アリペイ)コミュニケーションアプリ(Wechat)など、ソフトウェアの面でもその存在感を無視できないものにしつつあります。

その一方で、新しい機種が出てきてもその内容はほとんど同じ、カメラの性能が少し上がった、充電容量が少し増えたくらいで、普段使いする人ならばより安い値段で、より高性能な半導体チップが使われていればOK、という状態になっていました。

つまり、今のスマホへの需要はほとんど「ムーアの法則に基づく高性能半導体体験」に連動しているのです。

ムーアの法則と収穫加速の法則

ムーアの法則とはシンプルに言ってしまえば

半導体の性能が1年おきに倍になる

という法則です。これが本当ならば、毎年スマホの性能は上がり続けることになりますので、毎年iPhoneや中華スマホの処理速度は向上し続けることになります。これまでは、この法則が機能していたわけで、現実的に機能は向上してきました

そのムーアの法則ですが、すでに限界に達しているのではないかという説も出てきています。NVIDIAのCEOは、ムーアの法則が終わりつつあることを公言しており、それが近い事が伺えます。

一方で、ムーアの法則が継続する可能性も示唆されていますが、それはテクノロジーの進化によりもたらされる収穫加速の法則が機能しているうえでという指摘なため、今後の技術継承にゆだねている部分が大きくなっています。

収穫加速の法則とは、簡単に言えば

紙とペンを発明して、それでコンピューターを発明して、コンピューターでまた何かを発明して、

といったようにテクノロジーを収穫するたびに、それを利用することで発明が加速していくのではないか?ということを示した法則です。これは産業革命以降のテクノロジー変革において考えられるといわれいますが、現在の半導体集積化の限界も収穫加速の法則が成立すれば、ムーアの法則は維持されるのではないか?といわれています。

確かに、半導体の機能は日進月歩でこれからも進化していくことは予想できますが、それが毎年二倍のペースを維持できるかはわかりません。

量子コンピューターは代役ではない

ムーアの法則に限界が近いとはいっても、現在のテクノロジーを甘く見てはいけないと思うかもしれません。しかし、実際のところ、そこまで期待できるアイデアは現状ないというのも一つです。

スーパーコンピューターを超えたとされた量子コンピューターは、確かに高性能ですが、それらが市場に出回り一般的に使えるようになるには、チップ当たり100万量子ビットが必要とされています。現状ではやっと100量子ビットを超えたくらいなので、ここから100倍になる必要があります。

1量子ビットから100量子ビットに来るまで20年かかっていることを考えると、今後10年で100万量子ビットに達するかどうか、といったところで、1年や2年で代役として出てくるほどのものではありません。また、出てきたとしても、簡単に手に入るものではないでしょう。

こういったことを考えると、iPhone 15に限らず16が出てもそこまで盛り上がらないのではないかという事が伺えます。ムーアの法則限界説に関して言えば、スマホだけではなくスマートウォッチやタブレット、VRデバイス、ノートパソコン、タワーパソコン、自動車、家電などすべてのものに処理性能的発展の鈍化があるといえます。

いつの間にか求めているのは半導体性能だけ。カメラの画素数などに革新を求める人は元々少ない。その上、依然としてライトニング端子を使っていることへの批判は言い換えればiPhoneらしさよりも使いやすさを求めていることへのニーズである。スマホは航空機のように一般化するだけが今の道で、新しい機能は特に半導体性能くらいしか求められていない。

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