無題

デッドプールが好きすぎる

デッドプールというキャラクターをご存知だろうか。
一言で言うとアメリカの漫画の登場人物である。今年6月に実写映画の第二弾が公開されて結構話題になったから、名前くらいは知っている人も多いんじゃないだろうか。知らない人も、スーパーマンとかスパイダーマンとかと同じ全身スーツのスーパーヒーローと言えば大体想像できると思う。

私はこのキャラクターが本当に大好きだ。実写映画を観て原作を1冊だけ読んだくらいで、彼に関する知識はあまり深くはない。それなのに、こんなにも私を惹きつけるその魅力について、勢いのままに語りたいと思う。
(マーベル・コミックの世界はとてもご都合主義的で様々な設定が入り乱れているようなので、私がおいしいと思うところだけ採用する。)

特殊能力は不死"だけ"

スーパーヒーローといえば大体みんな特殊能力を持っているが、デッドプールの(身体的)特殊能力は"ヒーリング・ファクター"と呼ばれる再生能力と不死身の体、それだけ。「いや"それだけ"って何だよ。死なないなんてチートすぎるだろ」と思った人もいるかもしれない。でも考えてみてほしい。それだけということはつまり、攻撃に資する特殊能力は何一つ持っていないということだ。彼の戦闘技術は全て、彼自身が傭兵時代に培ってきたものなのだ。それを踏まえて彼の戦闘シーンを見てほしい。めっちゃかっこいい。
そして"ヒーリング・ファクター"には、体を再生する力はあるが痛みを失くす力はない。言い換えれば、たとえどんなに痛い思いをしたとしても、彼の体は必ず再生し死ぬことができないのだ。彼はそれを利用して、危険から逃れるために自分で自分の体を切り裂くこともある。
ちなみに、身体的なものを除くと他にも特殊能力がある。第四の壁を超える力だ。メタ発言、と言ったほうが分かりやすいだろうか。自分が漫画のキャラクターであることを分かっていて、作者や読者に話しかけたりする。その内容は大体愚痴だ。不死身という設定上ひどい目に遭うことが多いので、そりゃ愚痴も言いたくなるだろうなとは思うけど、本当に言ってくるのが面白い。
死にたくても死ねず、自分が虚構の存在であることを理解している彼は、自分を全く大切にしない。その姿は痛々しくて、ある意味健気で、母性をくすぐられるのだ。(体がひきちぎられて内臓とか諸々飛び出ちゃってるシーンで母性がくすぐられるというのは自分でもどうかと思うけど。)

正義のヒーローじゃないけど自分の正義は絶対に守る

マーベル・コミックにおける彼の立場は一応ヒーローなのだが、言ってることといいやってることといい、とてもヒーローとは言い難い。実写映画の第一弾では、彼自身が「俺はヒーローじゃない」と言い切っている。じゃあ彼はこの映画で何のために戦ったかというと、まずは自分をひどい目に遭わせたヤツに復讐するために、それから拉致された恋人を取り返すために戦った。市民は誰ひとりとして救っていないどころか、復讐の過程で関係のない人を殺してすらいる。象徴的なのは映画の最後、ラスボスと対峙するシーンだ。この時の彼の言動には深く共感したし、「やっぱりこのキャラクター好きだな」と改めて思った。気になる人は是非鑑賞してほしい。

エロとグロから目をそらさない

実写映画はなんとR指定だ。ヒーロー映画であるにもかかわらず、だ。実際、ヒーローであるはずのデッドプールは、下半身丸出しだったり内臓丸出しだったりする。セックスと暴力で絵面はぐちゃぐちゃだし、主人公は下品なことばかり口にする。でも、それこそが彼の人生の真実なのだと思う。綺麗じゃない、幸せじゃない、オトナになれない彼をありのまま描く手段として、エロとグロは必須の要素だった。この映画はヒーロー映画で、描きたいのは間違いなく"正義"だけど、それはデッドプールあるいはその正体であるウェイド・ウィルソンという一人の男の"正義"であって、エロとグロにまみれたひどく個人的な"正義"なのだ。でもだからこそこんなにも共感を呼び、R指定作品としては異例のヒットとなったのだと思う。きったない画面で描かれる彼の"正義"は、私にはひどく美しく思えて、それが私を惹きつけてやまない一番の理由である。

Yeah, it's me, Deadpool!

デッドプールの好きなところは他にもある。たとえば金さえ貰えれば誰のためのどんな仕事でもやるところとか。他にも色々あるけれど、それらは全て彼の痛々しいまでに純粋な心の現れだ。それを象徴するような台詞が実写映画の第二弾に出てきて、とてもとても大好きな台詞なのだけど、重要なネタバレになるので書かないでおく。
お察しの通り、デッドプールは万人にオススメできるようなキャラクターではない。彼自身もそれを分かっているから「俺はヒーローじゃない」と言うのだろう。でもそういう側面こそが彼の存在意義だと私は思う。世界平和だとか色々押し付けられるものを拒み、ただ自分の"正義"のためだけにがむしゃらに戦う彼の姿は、見ている側にも何も押し付けてこない。
そういうデッドプールを色んな人が見て、好きになったり嫌いになったりして、できれば好きになる人のほうが多くてこれからも色んなメディアに出てきてくれたらいいなと思う。

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