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開発者からの便り⑤コーヒーの科学④

科学を知ればコーヒーが変わる!
コーヒーの科学第四弾:焙煎後の経時劣化
~田村喜久雄のコーヒー愛が止まらない!
 
最初の頃はおいしかった焙煎豆も、時間経つと膨らまなくなり、風味もどんどん劣化します。
俗に「酸化してまずくなる。」と言われますが、焙煎豆の劣化は3タイプに大別されます。
厳密には酸化が関わるものは一つ(酸敗)だけ。しかもむしろ他の2タイプの方が重要です。

A:ステリング
焙煎時に生じたクロロゲン酸ラクトンやキナ酸ラクトンは水分子と反応すると容易に加水分解されてクロロゲン酸やキナ酸に戻り、PHが低下して酸っぱくなります。
水分が多いときのみ生じる反応ですが進行は早く、ホットプレートで保温しているコーヒー液なら数十分、
焙煎豆が吸湿したときにも常温1-2日で違いがわかるくらい変化します。

B:香りとガスの損失
焙煎した直後から、コーヒー豆からは炭酸ガスと一緒に香り成分が抜けていきます。揮発性が高い香り成分ほど消失か早く、繊細な香りを持ち味とするコーヒーほど特徴を失って凡庸になりがちです。
またガスが抜けた豆はお湯をかけても膨らみにくく、豆の質が「開きにくく」なるため、成分の抽出効率が悪くなります。水分が少ない条件下ではもっと早く生じる劣化で、常温なら10日~15日で違いがわかるくらい変化します。品質重視の自家焙煎で「おいしく飲めるのは焙煎後2週間以内」と言うのはこのためです。

C:酸敗
油脂分を構成する脂肪酸が空気酸化を受けると不飽和度(分る中の多重結合の割合)の高い脂肪酸になり、
それらがさらに酸化されると炭素数6~9程度の低級脂肪酸に分解され、油の傷んだ嫌な臭い(酸化臭ランシッド)とPHの低下をもたらします。
これが酸化による劣化ですが、進行は意外に遅く、違いがわかるくらいに変化するには常温で7~8週間かかると言われています。

いかがだったでしょうか?
「コーヒーの科学」と題して4回にわたって連載を行なってきましたが、
コーヒーの話は今回で一旦終わりにしようと思います。
ご要望などが多ければもっと深いコーヒーの世界について語りたいと思います。

ご一読いただきありがとうございました!
これにて珈琲の科学はおしまい。
次回のコラムもお楽しみに!

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