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『どうする家康』を見た感想 「惜しいぞ、家康」

今年の大河ドラマ、『どうする家康』について思ったことをつらつらと書こうと思う。リアルタイムで2話くらい見て、一旦辞めていたが、アニメも3話で化けることも多いし…ということで最新話の4話まで見てみた。

大河ドラマを普段見ているわけではないのだが、昨年の鎌倉殿の13人がめちゃくちゃ良かったので、今年も見てみようと思い。

正直、3話までの感想として、もう続きを見ることはないな、と思った。往年大河ドラマファンというわけではないが、自分が大河ドラマに期待しているものは、この作品からは得られることがなさそうと思ってしまった。


熱心な大河ドラマファンというわけではなく、完結まで見終わった作品は2作品のみのにわか大河ドラマファンだが、そんな自分が大河ドラマに求めているもの、なんかを改めて実感した。
大河ドラマの良さってなんだろうというのも含めてつらつらと感想を書いていこうかなと。


圧倒的なボリューム

まず、大河ドラマの何が素晴らしいって、話の尺としての、圧倒的なボリュームだろう。1時間の番組が、毎週1年間続くわけだ。30分1シーズンで終わってしまうTVアニメなんかとは、描かれる物語の量が桁違いだ。

これの何がよいって、通常のドラマ作品では考えられないくらいの大量のキャラクターを、丁寧に時間をかけて描くことができることだ。主人公の側近、少し遠くから見守る友人たち、敵キャラでさえも。

そして、感情移入したキャラたちが、何話もかけて織りなす圧倒的なドラマ。それこそが大河ドラマの魅力だろう。


昨年度の『鎌倉殿の13人』で改めてこれを実感した。
序盤の頼朝が平家を打倒し、鎌倉に幕府を開く。それまでの苦難を約1時間×20話で描く。


22年大河ドラマ。傑作。

そうして苦難を共にしてきた武将たちが、新たな鎌倉という政治と陰謀に渦巻く世界で、一人また一人と消えていく。それも信じていた仲間の手によって。

これは大河ドラマでないと描けないボリュームだろう。鎌倉幕府が成立するまでを1作品として描き切るのが普通なら精一杯で、その後の展開まで含めたシナリオ構成にできるのが大河ドラマの魅力だ。


一方『どうする家康』は…

この大河ドラマ最大の持ち味を、『どうする家康』は捨ててしまっている印象を受けた。

自分が好きな三谷脚本の大河は、あまり子役からスタートしないけど、主人公の子供時代を丁寧に描くことができるのも、大河ドラマの大きな利点だ。まだ途中までしか見ていないが、『青天を衝け』はここがめっちゃ上手かった。

少年時代って、当然ながら主人公の価値観だったりとか、素質みたいなのが見え隠れする時期なわけで。まぁ子供だからこそ大きな物語や成功体験を描くのは難しいから、脚本家の実力が問われるわけだけども。


徳川家康においては、この少年時代がかなりキモになるはずだと視聴前は予想していた。何しろ歴史を動かした人物、織田信長と幼なじみになるわけだから。ここをどう描かくのか、今後の物語をに関わる重要な部分である。

結果として、第一話は、成人した松本潤が演じる姿から物語は始まった。
それは主役を早く出せという大人の都合的な展開で、Vガンダムみたいにちょろっと描写した後は、すぐに時系列に沿った展開になるのかなと思っていた。が、そんなことはなく物語は進行。

しかも、第一話の内容、絵面的にも、子役を使ったほうが良くないっすか…
木彫りの人形を使ってごっこ遊びしているシーンとか、正直キツかったす。
あそこでこの作品へのモチベーション下がった人も多かったような…


主人公とヒロインとの出会い、結婚もめちゃくちゃダイジェスト。一瞬で桶狭間の戦いへ。総集編を見ているのかと勘違いしてしまうくらい。まぁ、ヒロインはあくまでサブキャラで、そんなに物語に関わらないキャラなのかなとここで自分は思った。

さっそく、織田信長が一話のラストシーンで出てくるので、これは織田信長と徳永家康の関係が、序盤のメインドラマなのかなと認識した。そうじゃないとここまで駆け足で物語を進めた意味がないと思ったから。

ところが、信長と家康の過去シーンも2話でほんのすこし描かれただけ。しかもほとんどが陰湿なホモいじめシーン…
何もドラマがないし、キャラたちの他キャラへの思いも全くわからない。


しっかりと尺を使えば面白くなりそうなシーン、今後の展開が盛り上がりそうなシーンを、容赦なく全カットである。
妻と出会い、心を打ち解けていく過程とか。
信長が家康を認めていく過程とか。
臣下たちの説得によって岡崎のことに心が向いていく過程とか。
キチンと描けば名シーンになりそうな要素しかない。

「テンポの良さ」という考え方をこの作品は勘違いしているような気がする。展開を早くするのがテンポの良さではなく、盛り上がりどころ、ドラマになる箇所はしっかりと描き、物語を展開するためだけに必要な要素は最低限の描写にする。

そうすることで、キャラとキャラが絡み合う「ドラマ」が前にどんどん進んでいくこと。これがテンポの良い作品と言われる作品だと思う。決して、年表に書かれていることを淡々とこなしていくことだけがテンポの良い作品ではない。


絶望的に味方陣に好きなキャラができない

まぁ話が微妙でも、キャラが良ければどうでもなるものだ。実際、真田丸だって、序盤は父上(真田昌幸)一人の魅力ってグイグイ引っ張っていた。

じゃあ、今作は誰か好きなキャラがいるのかと言われたら、全くいない。登場回数が多い、家康の周りのキャラが根こそぎ感情移入できない。出てくるのは、何を言っているかわからないジジイか、滑りまくるギャグキャラたちだけ。

滑舌最悪じいさんに対して視聴時はこの画像状態
『鎌倉殿の13人』より

ある意味、家臣の頼りなさから、少し家康に同情させるという効果もあるかもだが…純粋なストレスだ。

ギャグが肌に合う、合わないは感性の問題だから置いておくとしても、カッコイイキャラが一人もいない。見せ場がないのだ。本田忠勝をそういうポジションにしたいのかもしれないが、描写が生意気な小僧として描かれることが多くて、応援しきれない。
そのくせ、数だけは無駄にワラワラと出てきて、勝手に喋りだすからタチが悪い。


せめて主人公の家康がカッコよければ良いのだが、今のところそれもイマイチ感じられず。情けなさシーンが本当に情けなさすぎて、その後覚醒されて見せ場作っても、どうにも脚本に踊らされている感じがするんですよね…

基本的に周りに流されているだけで、決心したように見えても、周りの環境から最適解を選んでるだけ。それは覚悟とは言わないんです。


要するに、主人公勢に誰一人好きなキャラがいないと。これはかなり辛い。
岡田准一の顔が良すぎる織田信長がメインとして出てきた4話は大分助かった。意味も魅力もない家臣キャラを描写するのを控えていただくだけで大分助かるのだが…

カッコいいのこいつだけ
『どうする家康』公式サイト 登場人物紹介より


家康をどんな人にしたいの?

まぁまだ4話なので、これを求めるのは少々酷かもしれないが、この作品が何を伝えたいのか、全くわからない。家康をどういうキャラとして描くつもりなのだろうか。

基本的に序盤は種まきの時間であるはずだ。
今後の作品のメインテーマになるような、関係性、ドラマになる要素の伏線を張りまくる時期である。

愛を大事にする家康にするなら、ヒロインとの出会い、恋を劇的に描くべきだった。
義を重んじる家康にするなら、今川、家康の家臣たち、どっちでも良いから、どちらかに焦点を当てて描ければよかった。
生き残ることを重んじる家康にするなら、真逆の生き方をする信長との少年期を丁寧に描写すべきだった。


これ、全部やろうとしているんじゃないかなと思う。
NHKの公式サイトに見に行ったら、こんな制作統括者のインタビューが。

唯一の不安は、家康はおもしろいエピソードが多いので、古沢さん※の創造力がスパークして、1年間のドラマに収まらなくなることかと・・・。

『どうする家康』NHK公式サイト 番組紹介ページより
※『どうする家康』の脚本家

うーん、この予感が的中しちゃってる気がします…
大河ドラマって、主人公である人物が、激動の時代をどのような信念を持って生き抜いていくか、そこに強烈なメッセージを込めるべきと思っていたのだが…


意外と大事な背景美術

全然実写の映像作品を拘って見る人ではないので、CGが使われても全然気にしない人だった。

が、今作はめちゃくちゃCGが気になる。物語への没入感が一気になくなってしまう。こんなに実写の背景美術が気になってしまったのは始めてだ。

そんなに戦国時代に詳しいわけではないが、ものすごく嘘くさい背景だと思ってしまうのだ。これが、ファンタジー世界の設定の作品なら全然問題ないんだと思う。色合い鮮やかな美しい世界、なんて感想持っていたかも。

アニメ作品の実写化のような、とりあえず画面映えする大迫力の映像にしちゃえと言った感じで、作り物感がすごいのだ。
NHKが適当な時代考証を行っているわけがないので、広さや描写はあっているのかもしれないが、今ままで見てきた戦国時代ものとあまりにもかけ離れた迫力は逆に浮いてしまっている。


背景美術とか、そこから感じる世界観って大事なんだなと思った。
今の時代、CGのほうが安上がりだったりするかもだけど、今後の作品がこういう背景になっちゃうのはちょっと…って思ってしまった。

『青天を衝け』が特に序盤の舞台背景が美しすぎたがために、余計に残念に感じるのかもしれない。しょぼくてもいいじゃない、日本舞台にしたドラマなんだから、、と思うのだが。


惜しい作品

ボロクソけなしてしまったが、最新の第4話は結構面白かった。
徳川側の家臣がほとんどセリフがなかったというのもあるが。

家康の葛藤なんかは、尺を使って丁寧に描いていれば、かなり面白い作品になっていたはずである。それに音楽も良い。ストーリーの流れ自体は悪くないのだが、どうしてもダイジェスト感が歪めない。

今作品を最後まで見続けるかどうかはかなり怪しいが、同時に見始めている『青天を衝け』が、めちゃくちゃクオリティが高いので、鎌倉殿で生じた大河ロスは、こっちで補おうと思っている


ちなみにU-NEXTでNHKオンデマンドという月額900円くらいのサービスで見てます。NHKさん結構お金取ります…でも画質はめっちゃ良い。

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