見出し画像

ファンが望んでいたことを全部やってくれた傑作 『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』を見た。1ヶ月くらい経ってしまったけども、今更感想記事を書こうと思う。見た直後は、衝撃が強すぎて自分の中で整理ができずに記事に書くことができなかった。

多くの方が絶賛している通り、ケチをつけるところがない素晴らしい映画だったと思う。というか、あの映画に細かい批評をするのなんて無粋だ。だってお祭り映画なのだから。最高の「ファンサービス」が詰まった映画だった。


無双する主人公が見たいんです

まず、冒頭。ブルーコスモスのゲリラたちに対して、キラたちが出撃し、無双するシーンから映画が始まる。この冒頭だけで、この映画に対する期待値がグンと高まる。

SEEDシリーズがなぜあれだけ売れたかって、主人公たちがカッコいいからだ。これは見た目が良いとか、そういった表面的な話ではない。主人公たちが、敵を倒しまくる。その圧倒的な強さにみんな惚れ込んだのだ。当時の男たちも、みんなガンプラを買いに店に走った。

SEEDはこれがすごく上手かったと思う。バンクシーンの多さから批判もあったが、逆に言うとキャラや機体のカッコいいシーンを何度も見ることができるということ。そうした主人公たちが雑魚敵をバッタバッタとなぎ倒す姿は、SEEDの大きな魅力の1つだと思う。


この魅力を制作陣はしっかりと理解していた。
「俺達は、キラたちがやられるシーンを見たいわけじゃない。無双するシーンを見たいんだ。」
そんな視聴者の気持ちを代弁するかのようなOPである。

物語の中盤では、敵にやられるシーンも確かに存在する。しかし、それも色々と理由をつけて主人公たちが全力を発揮できない状態での戦闘になる。完全に実力で完封された状態ではない。つまるところ、主人公たちを「下げる」ような行為は行われない。あくまで彼らを強者として描く。

そして、そこからの立ち直りもビックリするくらい速い。振り切ってて良いと思う。ウジウジと悩んだり落ち込んだりするのは、TVシリーズくらいで良い。劇場版のデカいスクリーンで見たいのは、閃光と爆発の中で圧倒的な活躍をするカッコいい機体なのだ。


積み重ねた歴史を活かした最高の展開

もはや20年近く前の作品。今更な劇場版の発表だ。そんな作品が望まれているものとは何か。間違いなく、シリーズ初見の人を取り込むことや、新たな物語を語り始めることではない。20年近く待ち望んだファンたちの、色んな思い出、様々な願いに応えることこそがこの作品の役割だ。

そんな、ファンが待ち望んでいたものをすべて描いてくれた。なにを我々が求めているのか。何も喋らずともすべて監督は理解してくれてシーンに描写してくれた。

デスティニーを始めとする昔の機体の活躍、またもや回想で殺されるニコル、オーブのいつもの茶番劇、ムウさんのセリフ。そして、劇中曲でみんなが大好きな、あの曲がかかるシーン。セリフや構図まで、完璧に当時のシーンを模して作られたあの部分で、自分も思わず涙ぐむくらい、テンションが上がってしまった。

ファンですら忘れかけていた、デスティニーからインパルスへのチャージの設定なんてのも描写してくれたり。


とにかく、積み重ねて来た感情の重み、そのすべてを晴らしてくれるような展開の数々だった。「このシーンを撮るために、脚本をこうしよう。」そんな会話があっても、全然おかしくないくらい、ファンサービスの塊だったと思う。

だからこそ、映画単体で見ると、粗い部分があるかもしれない。何より、初見の人は絶対に置いていかれる。でも、それでいい。その振り切ったパワーがあるからこそ、昔のファンの魂を奮い立たせるし、それを見た初見勢が、SEEDシリーズを見始める。

ファンのためにと思いきったこの映画コンセプトは、本当に素晴らしい。個人的には発表までの長い年月はこの作品にとって確実にプラスになっていたと思う。人気絶頂期の時にこの映画をリリースされていても、色々と粗い所に目が行っていたかもしれない。でも、今だからこそ、色んな人が許せるようになったのではないだろうか。


人知れず成長しているキャラに感動する

上記のファンサービスシーンは、あえてファンのために「変えずに」描写してくれたシーンだ。一方で、明確に「変わった」ことがある。それは主要キャラたちの成長だ。

自分はSEEDはすごく好きだったけども、Destinyは好きになれなかった。ストーリー展開もそうだか、特にキャラ。新たに登場したシンとかよりも、アスランやキラみたいな、作中ではもういい大人になっているキャラたちの不甲斐なさに怒りを覚えた。特にカガリとか。


そういった意味では、今作品はそうしたキャラは、しっかりと成長している。キラは悩みを感じないサイコパス戦闘マシーンだったのが、しっかりと葛藤する大人になっている。そんなキラを叱りつける親友ポジのアスラン。もう組織の中で右往左往するクズ野郎じゃなくて、自分で動く独立組織ポジにしっかりと腰を据えている。そう、お前は組織に所属する人間ではない。

そして、シン。彼は、今作品のもう一人の主人公といってもよいだろう。Destinyではマイナス方面になっていた、彼の純粋さが今作品では大きなプラスになっている。キラという先輩に指導され、立派な大人になろうとしているシン。もう親心に近い感情で見ており、彼の成長がすごく嬉しかった。

TVシリーズから今作品までの数年間という作中時間の経過で、キャラたちを成長させる。少し反則的な部分もあるが、その成長した結果がファンたちの理想の姿であったからこそ、何も不満はない。むしろ、先述したような、ファンサービスを描写するために時間はないのだから、劇中でチンタラ人間ドラマを描いている暇もないのである。そんなのはキラに対してだけで十分だ。

この思い切ったキャラの成長描写も、みんなの期待に応えるための素晴らしい決断だったと思う。


SEEDファンは全員見に行け

とりあえず、SEEDを見たことがある人はぜひ劇場に行ってほしい。特に、自分みたいにDestinyで萎えて、シリーズのことが好きでなくなってしまった人は。最悪、Wikipedia読むだけでも良いので、Destinyの内容を履修して、映画館にGOだ。

自分が望んでいた、SEEDの続編がここにある。Destinyで描いてほしかったものが、ここにある。最高の映画をありがとう、福田監督。ガノタで、SEEDを好きでいて良かったと思う映画だった。

この記事が参加している募集

アニメ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?