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「ガンダムの呪い」から逃れられなかった 水星の魔女 感想

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が完結した。
放送の度にTwitterのトレンドを独占し、ここ最近で一番バズったガンダムとなった今作品。ガノタだけでなく、多くの人が熱中した作品だった。

自分も0話、1話と見たときは、神アニメと確信した。毎週が楽しみだった。


しかし、今作品の最終話を見た感想は、これだった。
「あぁ、『ガンダムの呪い』から逃れることができなかった…」

どうしてこんな感想になったのか。そんな感想記事になります。
ネタバレあるので、ご注意ください。


「ガンダム(作品)の呪い」

ここで言う、「ガンダムの呪い」とは、水星の魔女の作中で出てきた呪いではなく。勝手に自分が唱えてるジンクス。
ガンダム作品の2期、次回作。これらは、大体失敗している印象しかなかった。まるで呪われてるように。

オルフェンズ、00、SEED Distiny。みんな、1作品目(1期、1シーズン)はめちゃくちゃ面白かった。でも、その続編(2期、2シーズン)は微妙な作品が多い。水星の魔女も、この先輩作品と同じ結末になってしまったなぁと思う。
この作品は1期、2期というより、分割2クールという建付けだけども。

良いところもあった。何だかんだ毎週の楽しみではあった。
でも残念な終わり方、完成度になったと思う。本当に序盤の面白さを維持してくれれば…
何が1期は良くて、2期は何がダメだったのだろうか。


いい意味で先が読める展開

0話から1話。この流れは完璧だった。0話で、作品の世界観、設定。それをドラマの中の最低限の描写にすることで、くどくなく、でも視聴者はなんとなく理解できるレベルにしている。すごくアニメ作品として優秀な導入だった。

そして、第一話。もうこの1話の完成度が高すぎて、これだけで1つの記事を書けるレベル。起承転結がしっかりとあった、完璧な構成だったと思う。
そしてそんな細かいことより何より、すごくワクワクする第1話だったと思う。
そう、「ワクワク」する1話だったのだ。

このシーンを見た時の興奮は忘れない


このワクワク感があったのは、ある意味で先が読める展開になっていたからのように思える。「先が読める」というのは平凡だとか、ありきたりとか、そういった悪いイメージがつくが、そんなことはない。面白い物語、作品には、ある程度先が読めることが大事なのだ。

先が読めるということは、別の言い方をすると、「期待」がそこにあるということ。そしてその期待にしっかりと応えることが、面白い作品の必須条件だと思っている。その期待を更に超えてくるのが傑作と言われる作品なんだけど。


1話では、そんな期待が充分に感じられる1話だった。
0話で示された、デリング家と主人公の親子の確執。その子ども同士、ミオリネとスレッタが婚約者となるという展開。
2人のベストパートナー感を感じつつも、絶対にこの親世代の確執に巻き込まれて、対立したりする展開があると期待できる。

そして次々と現れる婚約者候補のイケメンお坊ちゃんたち。
もう乙女ゲーなんだが、百合モノなんだが分からんが、とにかく恋とバトルがこれから連続で起きるだろうというワクワク感が生まれてくる。


ガンダム初の女性主人公

ガンダム史上初である女性主人公。これも個人的には成功していたと思う。ガンダムといえばナヨナヨ系主人公だった。自分は男でナヨナヨしている奴がそんなに好きじゃないので今までのガンダム主人公を好きになることが少なかった(特に序盤は)。

でも、女の子なら少しイライラが減少する。「まぁ田舎から出てきた人見知り娘ならしょうがないよね」って感じで許せる。


何より、スレッタは主人公らしく、物語の中心にいたから好感が持てた。自分の持論だが、主人公は物語の中心にいなければ、良い作品にはならない。
主人公が行動することで物語が動き出す。それこそが主人公の存在意義の1つだと思う。

スレッタは、そういった意味でも最高の主人公だった。「逃げれば1つ、進めば2つ」というセリフが代表するように、彼女は何かしらのアクションをして物語を動かしてきた。次々と現れるライバルたちの挑戦を受け、戦った。

婚約者であるミオリネもそれ応えるように、会社を設立したりと、次々とアクションを起こしていく。本当に主人公とヒロインである2人が物語の中心にいたのだ。


そして、女性主人公であることもこの主人公感に大きく寄与していたと思う。
異性からアプローチを受け、タジタジ、という展開、気弱な男なら少しイラっとしてしまうが、少女であればなんのストレスもなく見ることができる。「乙女ゲー」言われることもあったが、それも新しい要素として非常に刺激的だった。

何より、スレッタちゃんカワイイ。
初見のキャラデザ見た時には絶対にこのキャラが可愛くなるなんて思わなかったのに…どんどん話数が重なるたびに可愛く思えてきてしまった。これがアニメというか、物語の力だと思う。「絵」じゃなく、作中で生きているキャラに愛着が湧いてくる、というのは素晴らしい。


魅力的なサブキャラたち

主人公のことだけ書いてしまったが、周りのキャラたちも非常に優秀だ。
メインのクラスのグエル、エラン、シャディクの3人はもちろんのこと、チュチュ筆頭の地球寮のメンバーや、決闘委員会のクソガキ系ギャル、フェルシーちゃんなど、俗に言うサブキャラたちも、強い個性があった。わかりやすいキャラ付け、というべきか。

でも、サブキャラはこれくらいでいいんです。そんなに描写に時間を割けないし。

こういったキャラは物語の中心にいなくても、思う存分にそれぞれのキャラにあったリアクションをしていればいい。物語をさらに盛り上げるスパイス的な存在。ある程度自由に動けるキャラたちだからこそ、ぶっ飛んだ個性を持てたり、魅力的なセリフを言えたりする。キャラが生きてる感じが出せる、楽しいポイントだ。


期待感を持たせるシナリオ、しっかりと物語の中心にいる主人公とヒロイン、今までのガンダムにはない学園要素、乙女ゲー要素。そしてそれを彩る個性豊かなサブキャラたち。

作品自体のクオリティも非常に高い状態で、ガンダムに新しい風を取り入れた水星の魔女。
そして、6話や12話でガンダムらしい、ドロっとしたシリアスも取り入れ、すごくの期待を持てる終わり方だった。2クール目が始まるまでは。


ソレじゃない感

問題の2クール目。正直、すごく微妙だった。1クール目が95点くらいだとすると、2クール目は60点くらい。
色々と言いたいことはあるが、微妙だった原因は尺も無いのに、風呂敷を広げて本格SFアニメみたいなことをし始めたからだと思う。「ソレじゃない」感をすごく感じた。

先述したように、この作品に期待するものは、割りとシンプルな人間ドラマだった。水星の魔女に、誰も本格SF作品は期待していなかったと思う。

親世代の確執に巻き込まれる子供たち。見下されている地球寮のみんなと一緒に活躍していく下剋上ストーリー。イケメンたちと花嫁をかけた決闘。

そういった、学園モノとロボと乙女ゲーと、様々な要素がグチャ混ぜになった、カオスだけども魅力的な人間ドラマが描かれるロボアニメを期待していたんだと思う。


ところが、期待される人間ドラマは描かれずに、連邦議会やら、地球の勢力やらがバンバンと出てきて、何が何だかな状況。プロスペラとミオリネは勝手に組んでより複雑な状況に物語を動かしていくし…
設定の描写にそんなに時間が割かれていないし、そもそも設定も独創的で面白いわけじゃない。だけども、作中ではその設定をベースに複雑な話になっていく。
すごく期待と違うものを見せられている感じがした。決闘に勝って、花婿になって地球に行くっていう最初の目標はどうなったんだろうか。


無理やり話を壮大にしなくちゃいけないから、肝心のキャラの描写が雑になっていく。その象徴的なエピソードが、グエルの話。
2クール目2話なんかは、すごく良かった。グエルも活躍していたし、お坊ちゃんから戦争の悲惨さを知ったパイロットって感じの成長を感じられた。
ここからどう本編に合流していくのか、つまりジェターク社のCEOになっていくのか、ワクワクがあった。

が、あっさり次の話で宇宙に戻ってきて、CEOになっている。ここ、一番盛り上がるところじゃないのだろうか。地球に来たミオリネ合流させるなり、もっと段階を踏んで描写するなりあったはずなのに…


グエルだけでなく、サブキャラたちの動きも違和感があった。1クール目のころは、キャラが生きている感じがあった。でも、2クール目からは、脚本に動かされていると思ってしまった。物語を動かす舞台装置になってしまっているというか。それにより、誰にも感情移入できなくなってしまった。

ミカ姉なんかも、すごくありきたりな理想を夢見るウザキャラになっちゃったし。ラウダなんて、急にメンヘラムーブをさせられて、すごく可哀想。正直2クール目のキャラ描写で感情移入できたのは、5号くらいだった。


主人公が活躍してない!

何よりも自分が不満だったのが、主人公であるスレッタが完全に蚊帳の外だったこと。
1クール目と違い、全然物語の中心にいない。傍観者になっている。

意図的に外されたという側面もあるが、それにしても活躍していない期間が長すぎる。彼女は2クール目何をしたのだろうか。最初の学園内でテロが起きた時に少し戦闘をしたくらいで、あとはずっとプロスペラとミオリネにフラレたことで落ち込んでいただけだった気がする。


あとは、ロボアニメとして主人公とそれが乗るエアリアルが無双しないっていうのは、非常に魅力減だ。
「俺TUEEEE」とかって馬鹿にされることもあるが、何だかんだみんなが期待しているのはやはり無双する主人公だと自分は思う。

が、今作品、いまいちエアリアルが活躍していない。グエルを最初に倒した以来、純粋に戦闘で打ち勝ったことはほぼなく、エリクトの不思議パワーで相手を動かさせなくして勝利という地味な展開のみ。

もっとパイロットと機体の性能を活かしたMSバトルが見たいんじゃい!と視聴者は思ったはずだ。そういった意味でも、主人公が戦闘で活躍することもなく、ただハブられていた2クール目は、一気に魅力が落ちてしまったんだと思う。


ちなみに個人的に2クール目で一番好きなシーンは、ミルクのスープを飲みながらスレッタが涙するシーン。あの地球寮のみんなの絶妙な距離感がすごく優しくて好きだし、思わず涙が出るのが温かいスープを飲んだ時という、人間の本質さを感じるエピソードも良い。

何より、主人公の復活さを感じられる熱いシーンだ。「ようやくスレッタ活躍か!?」と思ったらその次の大規模テロの時は気絶していただけでしたけどね…


ぶん投げエンド

最終話。個人的には何も盛り上がりはなかった。最後のラスボス知らないおっさんだし。

物語の結末としては、酷いものだった。OP流して、ハッピーエンドっぽい雰囲気は出しているが、何も解決してないし、なんかシャディクだけ罪を被っているが、めちゃくちゃ犠牲者が出たこともなかったことにされている。

ハッピーエンドは大好きだけども、これはちょっと…っと思うような終わり方だった。いや、幸せな方向にまとめようとしたのはいいんだけどね。ちょっと視聴者を馬鹿にしているようにも感じるエンドだった。


これなら、素直に白旗をあげたオルフェンズのほうが好感を持てる。正直に言ってほしい。風呂敷を畳めませんでしたと。

あと、非常に細かいけども、OPを流すタイミングそこか?歌詞的には、スレッタが覚醒するタイミングで流してほしかったが。『祝福』が神曲すぎるので、何とかごまかせているが、非常に勿体ない。


毎週の楽しみをありがとう

これだけボロクソに言っときながら、終わってみると少し寂しい。面白くなくても、毎週ガンダムがあり、それをネットであーだこうだ言いながら楽しめたのは、すごく久しぶりだったので。
特に、1クール目は非常に夢を見させてもらった。多くの新規ガンダムファンも生まれたことだろうし。

ガンダムの呪いからは逃れられず、最終評価は微妙になってしまったものの、序盤は間違いなく神作だったし、これだけ語れるということはそれだけ内容もあった作品だったということ。

今後のガンダムブランドに期待はしているので、今後こそ1クールや2クールできれいに終わる、面白いガンダムを待ってます!

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