天使のダミ声を聞いてきた
木村充揮さんの70歳バースデーライブに行ってきた。わざわざこのライブのために大阪まで。自分でもアホかなと思うけども、勢いでチケット買っちゃったからしょうがない。
木村充揮さんは日本を代表するブルースバンド、憂歌団のボーカルだった人。聞けば忘れられない、この特徴的なダミ声。天使のダミ声と表現される、この歌声が自分は大好きで一度は生で聞いてみたかったのだ。
酒、野次、タバコ
会場は大阪のフェスティバルホール。初めての会場だったが、とても彼の歌声では想像できないくらい、綺麗な会場だった。
スタッフもスーツを着て丁寧に接客している。正直、もっと彼のライブステージは小汚い場所をイメージしていた。だから、この会場の様子に正直ギャップがあった。当然、全席指定席で高そうな椅子にみんな腰掛けている。どうせ聞くなら、大阪の小汚い会場で野次とともに聞きたかったなと、そんな思いを持ってしまった。
少し遅れて会場に到着すると、前座としてBEGINが演奏していた。予想通り、みんな座って大人しく聞いている。当然、野次なんか一切ない。
「あーやっぱりこういうライブになるか…」と思ってしまった。
その後、木村さんの登場。そうすると、もう会場のあちこちから野次が飛ぶ。もちろんみんな関西弁。
そんな野次を気にせず、ステージど真ん中で、堂々と酒を飲む木村さん。缶でもペットボトルでもなく、蓋なしのコップでグビグビと。そこに対して「はよ演奏せいや!」という野次が飛び「うるさいわアホ!」と木村さんが返す。
これだよ、これ。見たかったものがそこにあった。みんな木村さんにだけ、愛を持って野次を飛ばす。酒と、くだらないトークと。そしてブルースと。それを望んでいたのだ。
そして、ステージ後半になると、タバコを吸い始める。どう考えても禁煙な、小綺麗なホールのステージで。大阪では、木村さんのいる場所だけは喫煙可能になるそうだ。
「スモーク演出や」と笑いながら、観客の目の前でタバコをふかす。お酒のおかわりが来ないと歌い始めない。しまいには、トイレに行きたすぎて、「おしっこ休憩!」と言って曲の途中で舞台袖にはけてしまうことも。
音楽ってこんなにシンプルでよかったんだ
本当に自由で楽しいライブだった。きっと、原初の音楽ってこんな感じ何だと思った。最近の音楽ライブは、立派なショービジネスになっている。お金が発生するからこそ、色々と約束ごとができている。セトリ、演出のルール、そうした細かいところがミリミリと詰められてライブというのはできている。
でも、本来は音楽というのは、演奏者がいて、それを聞きに来る観客がいる。それだけで成立するもの。そんな音楽の根源を感じられる、すばらしいライブだった。
多くのシークレットゲストの演奏だったり、後半のサックス入りのバンドパートなど、色々と語りたいことがある。でも、何だか野暮な気もする。
木村さんがいて、いっしょに歌いたがるアーティストもいて、そしてそれを聞きに来る観客がいる。それだけで、音楽って成立するんだなと、そう思えた夜だったから。音楽っていいよなぁと、ありきたりなことばが思い浮かんだ夜でした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?