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バンギャの特権

ビジュアル系バンドのライブに行ってきた。シドとかABCとか、そういう超大物というよりは、もっとゴリゴリのビジュアル系。俗に言われる「バンギャ」の人たちがたくさん参加するような客層のバンドのライブに。

当然、普段聞く音楽とは違うのだが、昔からの友達がそのバンドに所属しているということで、参戦してきた。当然会場の客層の90%くらいは女性。友達と3人で行っていた良かった。ソロ参戦だと間違いなく気まずくなっていた。


演奏自体は久しぶりにメタルっぽい音楽を聞けて楽しかったのだが、それよりもあの界隈の独自の文化が非常に面白かった。

噂には聞いていたが、観客が本当にきれいにヘドバンをあわせる。「協調性を大事にする日本人」の国民性を感じる。普通のメタルライブだと、各々好きなタイミング振り方でヘドバンするので、あんなに揃うことはない。

後方上段の少し離れた席で見ていたので、ライトアップの光景も含めて少し神秘的だった。知らない人が見たら、新たな宗教だと勘違いしそう。


あと、ここも普通のライブと違うなぁ、と思うのが声出しのタイミング。普通のライブだと、演奏が終わったら野次(いい意味での)はバンバン飛んでくる。観客は各々好きに声だす。なんなら演奏中も。だけども、バンギャたちは沈黙を維持する。

ボーカルがMCで「声出していこーぜ!」的な煽りをしたときですら、沈黙を保つ。「え!?ここは反応してあげないの!?」と思ってしまった。彼女たちが声をあげるのは、暗転してステージ上が暗くなったときのみのようだった。恐らく、そうした何らかの声出しのルールがあるっぽい。

最初、女性100%の観客からの声というのを聞いたことがなかったので、暗闇も相まってSEかと思ってしまった。すごく面白い文化。

普通のライブと違って、しっかりとルールがあり、自己の感情よりも、その全体の規律を優先するという、そこもすごく宗教っぽい。批判するつもりはない。ライブに行くやつなんてのは、程度の差こそあれ、そのバンドの信者みたいなものだと思っているので、むしろすごいなと尊敬できる。


女の子が暴れられる空間

そんなライブで、すごく印象に残った言葉がある。
ボーカルがウォールオブデス※風に会場を左右に分けさせた時にMCで喋っていた言葉。

※ウォール・オブ・デス(英: Wall of Death)は、主にロック・コンサートにおいて見られるモッシュの形態の一種。ライブコンサートの観客が、大昔の合戦の如く左右に分かれ、曲が始まった瞬間に全員が体ごと突撃する最も危険なモッシュ

Wikipediaより


一言一句覚えているわけではないが、こんな感じ。

「今日は思いっきり暴れてね!女の子は普段暴れられないから!思いっきり暴れられるのは、バンギャの特権だから!!」

ハッとした言葉だった。野郎はいくらでも暴れられるライブは存在する。モッシュやらサークルピットやらに気兼ねなく参加できる(自分はしないが)。でも、確かに女の子が、思いっきり「暴れられる」ライブって、こうしたビジュアル系のライブしかないんだなと。

歌声を聞いて感動することや、良い音楽を聞いて体を揺らすことはできる。でも、女性しかいない空間で思いっきりモッシュすることって、バンギャにしかできない。あの空間でしかできないことなのだ。


最近はめっきり数が少なくなってしまったゴリゴリのビジュアル系バンド。日本独自の音楽文化だと思うので、このままなくならないで欲しい。最後に行ったバンドの紹介をして終わる。こうしたビジュアル系バンドはやはり音楽シーンに存在してほしい。


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