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トランスポーターから酵素へ。物理シミュレーションと酵素デザイン、融合のお話し。

株式会社digzymeの社員インタビューコンテンツ『digzyme Deep Dive』
前回に引き続き、今回もインフォマティクススペシャリスト田村 康一 さんへのインタビューです。
前編ではAlphaFold導入前後のお話などを伺いました。今回はどんなお話が飛び出すでしょうか?ぜひ最後までご覧ください!
(※記事中の組織名・役職等はすべて取材時のものです。)

ーー前編でも色々お仕事のお話しをお聞かせいただきましたが、次は改めて、田村さんのdigzymeご入社経緯を教えてください!

化学専攻で 2016 年に博士号を取得後、神戸の理化学研究所でポスドクを5年経験し、その後の進路についてアカデミア・民間の両方を考慮していたところ、 digzyme にご縁があり、 2021 年 5 月に入社しました。
ちなみに現在は完全リモートワークにて、神戸で働いています。

ーーなるほど。ではまず遡って、大学時代はどんなことを研究されていたのですか?

理学部の化学専攻で、理論化学研究室というところに所属しており、そこでは主に物理のシミュレーションで分子の性質を計算機で予測しようという研究をしていました。
当時も酵素について扱うことはありましたが、専門にしていたのは『トランスポーター』についてです。

ーートランスポーター?トランスポーター阻害剤などで名前は耳にしたことがありますが・・・。

はい。細胞って膜に囲まれていますよね?この細胞膜には、物質を通すためのトランスポーターというタンパク質が刺さっているのですけれど、その働きに関して研究していました。
トランスポーターはこういう形(図1)になっていて、細胞に刺さっています。例えば僕たちが食べ物を食べて摂取した栄養はそのままだと細胞膜を通過しません。

(図1.wikipediaより引用・https://en.wikipedia.org/wiki/Transport_protein)

このように栄養を外から取り込んだり、異物など不要なものを排出するのがトランスポーターなんですけれど取り込む時は上を向いていて、排出時は下を向いて、というようにパカパカ動くんです。

例えば、トランスポーターの形が取り込むときの型しかわかっていないときに、排出時の形はどうなっているんだろうなどということを解析していました。それがわかると、どうやって物質が輸送されるのかが詳細に分析できるので。

ーー非常に興味深い働きのタンパク質ですね!教えて頂きありがとうございます。その後、神戸の理化学研究所でポスドクになられたんですよね。

はい。理化学研究所は全国にあるのですが。
国家プロジェクトとしてのスパコン開発のなかに地球シミュレーターという系譜があるんですれど・・・神戸にはスパコン『京』がありまして、これを用いてすごい計算をしましょう!という仕事の募集があったので、いくことにしました。

ーーすごい計算。内容が気になります。
どのようなお仕事だったのでしょうか?

連携して研究をしていた実験家の方々の興味が『ヘムのトランスポーターについて』だったので、鉄を必要とする細菌が、どのように鉄を取り込むかということをテーマにしていました。
「ヘム」は中心に鉄を持っている物質で、その「ヘム」のトランスポーターがどういうふうに形を変えながら物質を輸送するのかということを、ずっと研究していました。
当時、直接酵素を扱っていたわけではないですが、トランスポーターがタンパク質であるという部分は酵素とも共通しているので、ここで得られた様々な知見は、今もとても役に立っています。

ーーなるほど。詳しくありがとうございます。
その後の進路について、アカデミア・民間の両方を考慮されたとのことでしたが最終的にdigzymeを選ばれた理由を教えて頂きたいです!

まず、アカデミア・民間の比較ですが、アカデミアだと様々なことに関して、自分で申請しなければならない項目が多いんですね。
スパコンひとつ借りるにしても大変ですし、研究資金も自分で取ってこなければならない。純粋に研究に没頭できたほうが良いなと感じていたので、
では民間を選択しようとすると、自分が関わっている分子シミュレーションの就職先は主に二択くらいありまして。
創薬関係、もしくは材料関係ーー太陽電池の材料などーーになるのですが、
digzymeの「酵素」はこのふたつのどちらでもないところが突出しているなあと。
自分も結構ひねくれているところがあるので(笑)
普通じゃないところに行きたいなということで、
digzymeに応募するに至りました。

後編に続きます!


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