Sexyy Red: 怒りから始まったラップキャリアの軌跡
2023年も残りわずかとなりましたが、今年のラップシーンでは、Ice Spice、Glorilla、Lola Brookeなど、新進気鋭の女性ラッパーたちが続々と成功を収めました。さらに、カーディ・Bとミーガン・ジー・スタリオンが「WAP」以来のコラボシングル「Bongos」を発表し、Doja Catも2年ぶりに「Scarlet」というアルバムをリリースするなど、著名フィメールラッパーたちも精力的に作品を発表しました。
今回紹介するのは、ミズーリ州セントルイス出身のSexyy Red(セクシー・レッド)です。彼女は、2023年に発表したミックステープ「Hood Hottest Princess」からの楽曲「SkeeYee」が、TikTokで40万本以上の動画で使用され、さらに、Billboard誌から「2023年夏、最もブレイクするアーティストの1人」と評価を受けており、多くの注目を集めています。
ここでは、彼女のブレイクソングである「SkeeYee」と彼女の音楽キャリアについて詳しく解説します。
レーベル : Heavy On It, Open Shift Distribution
リリース日 : 2023年6月9日
名前 : Sexyy Red
本名 : Janae Nierah Wherry
年齢 : 25歳
出身地 : ミズーリ州セントルイス
ディスソングの誕生から始まるセクシー・レッドの音楽キャリア
ミズーリ州セントルイスで育ったセクシー・レッドは、Project PatやJuicy Jなどの男性ラッパーから幅広く影響を受けたようです。
私はProject PatやJuicy Jなどが大好きだわ。
Three 6 MafiaやMemphisのフロウも好きね。
あと、Chief Keefも好きで、Gucci Maneの曲も聴いていたわ。
BoosieやWebbieもね。男性ラッパーが好きで、様々な男性のアーティストの音楽を聴いていたわ。
セクシー・レッドがラップを開始した背景は、意外にも彼女のボーイフレンドの浮気が原因でした。その深い怒りを元に、彼女は彼の浮気相手やその周りの人々をターゲットにしたディスソングを作成することを決意しました。この一件が、彼女を音楽の道へと誘ったのです。
私がラップを始めたきっかけは、彼氏が浮気をしていたことに気づいたから。だから、彼とその女、さらにその友達をディスる曲を作ったの。彼の友達もグルだったから、彼らに関する部分もしっかり歌に入れたわ。その曲を彼に聴かせたら、不思議と「お前、めちゃくちゃラップ上手いじゃん」って言われて。確かに彼を批判してる歌だったけど、彼はそれが気に入ったみたい。その後、彼は友達に私の曲を紹介して、「彼女にラップさせてみて」って。そういうわけで、本格的にラップを始めることになったのよ。
また、セクシー・レッドというステージネームは、彼女が中学生の頃から「Red」と呼ばれており、ラップを始める際にどの名前を使うべきか悩んでいた時、カメラマンが「Sexyy Red」と提案し、それを採用しました。
いつも赤い髪と赤を基調としたスタイルで、そこから私の名前「Red」が生まれたの。中学時代からこの名前で呼ばれ、それからずっと赤い髪をキープしてきたわ。ラップを始め、初めての曲をアップした際に、アーティスト名をどうするか迷っていたんだ。その時、カメラマンが「赤がトレードマークだし、名前がRedだから、Sexyy Redはどう？」って提案してくれたの。
私は「それ、いいね」と感じて、すぐに気に入った。最初は「Red」の前にいくつかの言葉を試してみたけど、彼の言う「Sexyy」が一番しっくりきたのよ。
「Pound Town」の制作過程とヒットの背後にあるストーリー
2018年に本格的な音楽キャリアをスタートさせた彼女は、2021年にデビューミックステープ「Ghetto Superstar」をリリースし、その後、2023年1月にはトラヴィス・スコットやドレイクのヒット曲を手掛けたTay Keithとのシングル「Pound Town」をリリースしました。
「Pound Town」は、友達から新しい曲をレコーディングしようと言われた際、セクシー・レッドが書き溜めたものが何もなかったため、彼女が初めてフリースタイルでレコーディングした曲となっています。さらに、この曲の一節で歌われている「My coochie pink, my booty-hole brown (アソコはピンク、お尻の穴は茶色)」というフレーズは、ネット上でミームとして広まり、TikTokで拡散されて、セクシー・レッドが最初に注目を浴びた曲となりました。
ラップする時、自分の経験や感じることを率直に表現するんだ。
たとえば、きれいなネイルをしている時は、そのネイルや服装について触れることもある。実際、友達と街で過ごす中で、「My coochie pink, my booty-hole brown」というフレーズを思いついたの。それ、本当のことだから言ったんだよ。ネット上のミームやキャプションでこのフレーズを見る度に笑っちゃう。でも、この曲がここまで人気になるとは思ってなかった。
曲のプロモーション時、重点を「Too many bitches, where the n****s at?」のパートに置いていた。だけど、ある部分がスニペットとして公開されて、お尻の穴の部分が話題となり、バイラルになったのよ。
Sexyy Red - Pound Town
この曲は、カーディ・Bやポスト・マローンなどの有名アーティストからも注目を浴び、2023年5月にはニッキー・ミナージュが手掛けたリミックス「Pound Town 2」が登場。このリミックスのおかげでセクシー・レッドは初めて全米チャート入りを達成し、国内多くのファンからも絶大な支持を受けることとなりました。
Sexyy Red, Nicki Minaj, & Tay Keith - Pound Town 2
ラップ界での輝かしいキャリアを築くセクシー・レッド。しかし、彼女のキャリアの始まりは決して順風満帆ではありませんでした。スタジオやライブへの移動手段を確保し、スタジオのレンタル料やガソリン代に頭を悩ませ、時には反応の少ない観客の前でのステージも乗り越えなければなりませんでした。そんな困難も乗り越え、彼女は絶え間ない努力の末、状況を一歩ずつ改善してきたのです。
2019年から始めて、その頃は本当に大変だった。今はサポートしてくれる人たちがいるから助かってるけど、最初は全て自分でやらなきゃいけなかった。スタジオに行く車を手配したり、スタジオ代を自腹で払ったり、ライブの場所への移動やガソリン代まで考えてた。最も厳しかったのは、興味を示さない観客の前でのステージ。だけど、いつも笑顔を絶やさず、最高のパフォーマンスを心掛けていたわ。正直、その頃は「これはキツい」と感じていたけど、だんだんと良くなってきたのよ。
「SkeeYee」が「TikTok Billboard Top 50」での首位獲得
2023年3月には、彼女はNLE Choppaのシングル「SLUT ME OUT」のリミックスに抜擢され、その数ヶ月後にはDaBabyのシングル「SHAKE SUMN」のリミックスをリリースするなど、ラップシーンから着実に注目を浴びる存在へと成長。
NLE Choppa feat. Sexyy Red - Slut Me Out Remix
そして6月には、彼女の2枚目のミックステープ「Hood Hottest Princess」がリリース。この作品には、前述のニッキー・ミナージュとの「Pound Town 2」のほか、彼女の憧れであるJuicy Jもゲスト参加しており、全11曲が収録されています。
このミックステープに収録された「SkeeYee」は、彼女の人気シングル「Pound Town」でプロデュースしたTay Keithが共同プロデュースされています。この曲は、TikTokで現在までに40万本以上の動画に使用され、バイラルヒットとなり、さらにはBillboardが2023年9月16日に新設したチャート「TikTok Billboard Top 50」で首位を獲得しました。
「Pound Town」に続くTikTokでのヒットについて、セクシー・レッドは冷静にそれを受け止めつつ、オーディエンスが騒ぎ立てたり近づいたりすることには好意的でないと語っています。
有名になるのはもちろんいい事だよ。
それでお金も稼げるし。でも同時に私はクールな人間だからさ。
だから、みんなが私に近づいて叫んできたり、トゥワークしたりするのはあまり好きじゃないんだ。
私はただリラックスしたいだけなの。そういうことには乗らないわ、特に知らない人だと、ちょっと怖いからね。敵か味方かわからないからさ。
女たちって妬み深いのよ。誰かが陰で私のことを悪く言っているかもしれないし、彼女たちが私と仲良くしようとしてきて、でも私の仲間が、「あいつと話すな。さっきまであなたのことを悪く言ってたよ」と教えてくれることもあるんだ。でも私はインターネットのこととかあまり知らないから、彼女が誰なのかさっぱりわからないんだ。だから、ああ、と思うわけ、「なんで、インターネットで悪口を言っていた女が、実際には私の前で写真を撮ろうとしているの？」ってね。
Sexyy Red - SkeeYee
ドレイクと親密な関係？
2023年8月、セクシー・レッドはドレイクと21 Savageによるツアー「It's All a Blur Tour」のオープニングアクトに抜擢されました。さらに、このツアーのバックステージで2人が親密な関係である様子を示す写真がSNSに投稿され、注目を集めました。
この出会いから意気投合した2人は、ドレイクの最新アルバム「For All The Dogs」(2023)のゲストにも抜擢され、早くも世界のラップスターから認められる存在となりました。
Drake feat. Sexyy Red, SZA - Rich Baby Daddy
「彼氏の浮気」がきっかけでラップを始め、次第にSNSを中心にバイラルヒットを叩き出すセクシー・レッド。しかし、楽曲が1人歩きする類のヒットではなく、その男勝りな性格とリリック、彼女のド直球な言葉選びが多くのオーディエンスやラップシーンに魅力的に映っているようです。
また、彼女はハングリーにお金を得る姿勢に対して、こんなことを言っています。
実際にウソをつくわけにはいかない。お金が欲しい、そしてお金が必要なんだ、生き抜くために。だから、お金はほしい、全部ほしい。お金を得るためにできることは何でもやるつもり。決して下品なことはしないけど、お金を手に入れるためには何でもやる覚悟がある。例えば、私のショー料が1万ドルだとして、相手が5,000ドルしか持っていない場合、その5,000ドルは受け取るつもりだわ。完全なショーは提供できないかもしれないけど、せめて顔を出して何かを提供するわ。その5千ドルは受け取り、それが積み重なっていく。結局、何もかも手に入れるつもりなんだから。
セクシー・レッドは、自身の成功に向けた情熱と決意を語り、お金を稼ぐためにどんな機会も逃さない覚悟を示しています。その真っ直ぐな言葉は、成功のために尽力する彼女の強い姿勢と努力を反映しているように思えます。
おわりに
2023年、ラップ界は新たなる動きとともに変貌を遂げています。新進気鋭の女性ラッパーたちがその先頭に立ち、熟練のアーティストたちも新作でその存在をアピールしています。その中で、セクシー・レッドの出現は格別なものとして注目され、彼女の音楽と存在は新しい風をもたらしています。彼女の振る舞いやメッセージは、多くのアーティスト、特に次世代の女性ラッパーたちにとっての灯台となっています。
さらに、セクシー・レッドはSNSで独自のキャラクターを築いており、彼女のオープンなコミュニケーションがファンとの強い結びつきを生んでいます。彼女の成功の秘訣はただの才能だけでなく、彼女の人間性や魅力にもあることは確かです。彼女の行動や言葉からは、真実を求める姿勢や自己表現の重要性が伝わってきます。これは、今の音楽業界にとって価値あるメッセージであり、多くのアーティストに新しい方向を示しています。
彼女の曲やパフォーマンスを通じて、私たちは真実のメッセージや情熱を感じることができます。セクシー・レッドがラップ界に送るメッセージは、新しい希望の火を灯し、多くの人々を感動させ続けることでしょう。
今回紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️
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