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音楽を第一に考え、ファンに最高の体験をさせたかった... Roddy Ricch - Feed Tha Streets III (2022)

デビューアルバム「Please Excuse Me for Being Antisocial」(2019)は、Roddy Ricch(ロディ・リッチ)にとって初の全米チャート1位、2020年に世界で最もストリーミングされたアルバムとなり、収録曲の「The Box」は全米チャートで1位を獲得する大ヒットを記録。

またこの年、Mustardとのシングル「Ballin'」(2019)はグラミー賞にノミネートされ、故Nipsey Hussleとのシングル「Racks in the Middle」(2019)は「ベストラップパフォーマンス賞」を受賞し、ロディ・リッチにとって変革の年となりました。

その後もDaBabyとのシングル「Rockstar」(2020)や、Pop Smokeとの「The Woo」(2020)などのヒット曲を生み出し、2021年にはセカンドアルバム「Live Life Fast」をリリースしています。

そして今回、シリーズ続編となるミックステープ「Feed Tha Streets III」(2022)をドロップ。

ここでは、この作品について解説します。

レーベル  : Atlantic Records & Bird Vision Entertainment
リリース日 : 2022年11月18日
名前    : Roddy Rocch
本名    :    Roddy Ricch / Rodrick Wayne Moore Jr.
年齢    : 24歳


出身地   :    カリフォルニア州コンプトン

リリースまでの軌跡

今作は、キャリア初期から続くミックステープ「Feed Tha Streets」(2017)の3作目となります。

初代の「Feed Tha Streets」は、Meek Mill、Nipsey Hussleから賞賛を受け、収録曲の「Fucc It Up」が、YouTubeで5000万再生を記録。

翌年には続編「Feed tha Streets II」(2018)をリリースし、XXXTentacionが銃殺された夜に書いたと明かした収録曲「Die Young」は、彼にとって初の全米チャート入りを果たし、YouTubeで現在までに1億回以上再生されています。

Roddy Ricch - Die Young (2018)

このミックステープの実績が業界内でも話題を呼び、その後、デビューアルバム「Please Excuse Me for Being Antisocial」で一大ブレークし、ラップスターとしての地位を確立しました。

そして2021年、セカンドアルバム「Live Life Fast」をリリースした数日後、Twitterで「Feed Tha Streets III」を翌2022年にリリースすることを示唆しました。

またこの時、ロディ・リッチは「基本に戻りたいと」話しており、このことが、シリーズの復活につながったように思えます。

次のプロジェクトでは、もっとオープンになって、ファンをもっと自分の世界に引き込むつもりなんだ。
そのバランスを学んでいるところだね。
俺はインスタグラムをやっていないから、もっと俺の生き方を知ってもらって、もう少し俺を感じてもらわなきゃいけないような気がしているよ。
ヒットの心配はしてない。
最近、細かいところにまで気を配るようになったんだ。
自分は完璧主義者なんだと思う。正しいことが好きなんだ。
次のアルバムでは時代を超越したものにしたいね。
大作を出した後だから、基本に戻りたいんだ。
ラップを始めたころの古いファンもいるし、ビッグアルバムやグラミー賞の受賞で増えた新しいファンもいる。
だから、昔からのファンと新しいファンの橋渡しをしたいんだ。
それが、今取り組んでいる次のシチュエーションでの俺のミッションなんだ。

2022年には自身の作品の制作と並行して、The Game2 ChainzElla Maiのアルバムに抜擢され、先日発表されたグラミー賞で「最優秀ラップアルバム」にノミネートされたDJ Khaledのアルバム「GOD DID」(2022)にも2曲に参加しており、その人気が高いことが伺えます。

また、Post Maloneとのシングル「Cooped Up」はR&B/Hip Hopチャート5位を記録し、9月から11月まで行われていた彼のアルバムツアー「Twelve Carat Tour」に同行するなど、多忙な毎日を過ごしていたようです。

余談ですが、このツアー中にポスト・マローンはヒット曲「Circles」を歌う際に、ステージ上に開いた穴に足を踏み入れて転倒し、肋骨を骨折するトラブルに見舞われましたが、その後も彼はライブを続行したようです。

このツアー中、ロディ・リッチ「Feed Tha Streets III」からのリードシングル「Stop Breathing」をリリース。
Spotifyでは1800万再生を記録し、今作で最もストリーミングされた曲となっています。

Roddy Ricch - Stop Breathing

10月にはセカンドシングル「Aston Martin Truck」をリリースし、ミックステープの発売の数日前にLil Durkをフィーチャーしたシングル「Twin」をリリースしています。

Roddy Ricch - Aston Martin Truck

Roddy Ricch feat. Lil Durk - Twin 

今作について

今作では、前述のLil DurkTy Dollla $ignをフィーチャーした楽曲を含む、全15曲が収録され、じっくりと時間をかけて音楽と向き合った結果、非常に満足のいくものになったそうです。

「Live Life Fast」の後、ファンのためにもう1枚アルバムを出さなければと思った。
でも、自分の精神を取り戻すための時間が必要だったんだ。
本当は、あのアルバムのすぐ後にドロップしようと思っていたんだけど、(関係者全員が)時間をかけてプロセスを進めたいと考えていたんだ。
だから、音楽と共にし、音楽と一緒に生活し、音楽が俺たちに奉仕してくれるから、みんなに正しい形で影響を与えることができるんだ。

2曲目の 「King Size」は、エレクトロニックな上音に、テンポの速いビートと、彼らしい緩急のあるラップがとてもグルーヴィーで、クラブで踊りたくなるような曲に仕上がっています。

Roddy Ricch - King Size

ミックステープの最後の「Letter To My Son」は、まだ言葉を理解できない小さい息子に向けた曲で、歌は形として残り、後で気持ちを伝えられると語っています。

(家族についての)歌は永遠に生き続けるような気がするんだ。
俺にとって最も意味がある。俺はただ打ち明けただけだ。
神様が俺がここにいることを許してくれれば、もっと話をすることになるけど、特に若い人たちは、時間を大切にしていないように感じる。
息子は、俺が今言っていることを正確に理解できないかもしれないけど、
歌では、この思いの形を(後に)残すことができる。
この業界では、子供に言いたいことを言えるようになる前に、多くの人が去っていくのを見てきたよ。

Roddy Ricch -  Letter To My Son 

「時間を無駄にされたような気がするよ・・・」グラミー賞について口を開く

これまでの彼のコメントには、「何よりもまずファンを大切にする」という発言が多く、その動機はグラミー賞での出来事にあるようです。

冒頭で触れた彼のデビューアルバム「Please Excuse Me for Being Antisocial」はグラミー賞に6部門にノミネートされ、シングル「The Box」は全米チャートで11週1位を獲得。
さらに、2020年の年間シングルチャートで3位を記録するなど、グラミー賞受賞は確実と思われていました。

しかし、蓋を開けてみると全部門で受賞することができず、ロディ・リッチは当時の心境を次のように明かしています。

正直に言っていい?
時間を無駄にされたような気がするよ。
なぜ、21歳の黒人の子供を6回もノミネートして、最前列に座らせて、何も与えないんだ?
Jay-Zは俺を横に引き寄せ、助けてくれたよ。
そんな事やられたら、もう二度と戻れないよ。
グラミー賞が全てだとは思っていない。
もし俺が仕事に打ち込んで、これだけのことをやって、チャンピオンシップで60点取ったとしたら、どう思う?
俺はここに座っているのにチップももらえないのか?
君も熱くなるはずだよ。

この一件で、彼は批評家やメディアには興味がなく、本当に信頼できるのはファンであり、その後の制作や活動においても、彼らを第一に考えるようになったようです。

グラミー賞は以前からアーティストから疑問視されており、ドレイクも自身の楽曲「Hotline Bling」がポップソングであると主張したにも関わらず、グラミー側がラップ部門にノミネートしたことに抗議し、2017年のショーを欠席しています。
2022年はアルバム「Certified Lover Boy」とシングル「Way 2 Sexy」のノミネートを辞退しており、それぞれ「最優秀ラップアルバム」と「最優秀ラップパフォーマンス」にノミネートされていました。

同様に、ザ・ウィークエンドは大成功を収めたアルバム「After Hours」とそのシングルがノミネートを受けていないことを理由に、2021年のグラミー賞には曲を提出しないことを発表し、ニューヨーク・タイムズ紙に次のように語っています。

秘密委員会のせいで、俺はもう自分のレーベルがグラミー賞に音楽を出すことを許さないだろう。

ザ・ウィークエンドも公式声明を出す前に、選考過程が明確でないことをTwitterで訴えており、ロディ・リッチの件も含め、今後ますますアーティストから忌避されることになりそうです。

グラミー賞は腐敗したままだ。
君たちは俺、俺のファン、そして業界を透明化する義務がある...

おわりに

今回のアルバムについて、ロディ・リッチは「音楽を第一に考え、ファンに最高の体験をさせたかった」と締めくくりました。

ただ楽しむことがこのアルバムでやりたかったことのメインだったような気がする。
現時点で、俺らは心配してないんだ...
ただ、あまり周りのことを気にしたくなかったって感じなんだ、わかるだろ?ただ、それだけ。
スタジオの外のことは何も心配したくなかったんだ。
音楽のことを一番に考えて、ファンに最高の体験をさせたかったんだ。

20代前半でラップスターという栄光を勝ち得ましたが、その裏では満足な評価を得られないことに苛立ちを覚えていたロディ・リッチ
その経験を踏まえ、今では売れる売れないの価値観にとらわれず、ファンを楽しませることを第一に考え制作するようになったと言います。

そんな思いが詰まった、約1年ぶりのプロジェクト「Feed Tha Streets III」で、彼の世界観に浸ってみてはいかがでしょうか。


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今回紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️

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