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Diddyの最高傑作!? 「The Love Album: Off The Grid」 の魅力を探る

ラップ界の巨星、Diddy(ディディ)。音楽だけにとどまらず、ビジネスの才能も絶賛される中、2023年の新作「The Love Album: Off The Grid」が登場。その全貌を、ここで紹介します。

Diddy(ディディ)は、ラッパーやプロデューサーとして成功を収めただけでなく、Bad Boy Recordsなどの音楽レコード会社を設立し、The Notorious B.I.G.Mary J. Bligeなどのアーティストを育て上げました。
彼はまた、これまでに4枚のアルバムをリリースし、その中でもデビューアルバム「No Way Out」(1997)は全米チャートで1位を獲得し、収録曲「I'll Be Missing You」は全米シングルチャートで初登場から1位を獲得した、初のラップ曲となりました。このアルバムは700万枚以上売り上げ、ディディのキャリアで最も成功した作品とされ、さらにグラミー賞では5部門にノミネートされ「最優秀ラップ・アルバム賞」を受賞しました。

また、ウォッカブランド「Cîroc」やテレビネットワーク「Revolt」の設立など、彼のビジネスの手腕も光り輝いています。純資産は10億ドルとも噂される彼の最新作に、どんな魅力が詰まっているのか、一緒に探ってみましょう。

レーベル  : Love Records & Motown Records
リリース日 : 2023年9月15日
名前    : Diddy
本名    :    Sean John Combs
年齢    : 53歳
出身地   :    ニューヨーク


ディディの決断:楽曲権利の売却に込めた意義

2023年9月、ディディは自身が90年代に設立したBad Boy Recordsの楽曲の出版権を、関連するアーティストやソングライターに返還すると発表しました。この楽曲群には、The Notorious B.I.G.、Faith EvansMa$eThe Lox112といった大物クリエイターの作品が含まれています。具体的な詳細はまだ明らかにされていませんが、この楽曲群の価値は数億ドルと見られています。近年、Bob DylanBruce SpringsteenGenesisLuther Vandrossといったアーティストの楽曲権利を高額で売却する動きが増え、楽曲の価値が高騰しているようです。

ビジネス界で著名なディディは、このような状況を理解しながらも、ビジネスの利益よりも目的を優先する決断をしたと明かしています。

2021年の5月か6月に、全カタログの出版権を譲渡することを決めたんだ。
すべてを確定させるのに時間がかかったから、今ニュースになったところなんだ。
俺たちは物事が常に進化している時代に生きている。
そして、それは俺にとって改革だった。
変化を求めてきた人間として、物事を改革する方法を模索していたんだ。
それは正しいことであり、当然のことだった。
ビジネスマンとして、利益よりも目的を選ばなければならない時が来る。
俺はその両面を見てきてよかったと思っている。
ビジネスマンとして、俺は進化し、出版物に貢献できる立場にいることは幸運だったね。

ディディの音楽の軌跡、R&Bからの再生と新たな夢

今回のアルバムリリースに先立つこと約13年前の2010年に、ディディは音楽グループDirty Moneyの1人として「Last Train to Paris」というアルバムを発表しましたが、このアルバムは当初は理解されにくく、彼は自身の音楽で純粋なソウルを表現しようと試みたものの、彼はアーティストとしての表現と、プロデューサーとしての成功の間で葛藤を感じていたと言われています。

「Coming Home」のような曲を作る中で、俺は本当のブラックネスとソウルを犠牲にしなければならなかった。確かに、俺にはヒット曲を生み出すプロデューサーとしての能力がある。だけど、その過程はリスキーだ。なぜなら、その曲が真実を伝えていなかったり、俺の心の中の真の目的がズレていたりすることがあるからだ。実際、俺が目指していたのは、ソウルフルなアルバムよりも、もう一つのトップヒット曲を作ることだったんだ。

そして、時間の経過とともに、ディディは音楽に対する情熱を再び取り戻し、新たなレコードレーベル「Love Records」を設立する決断をしました。彼はR&Bに焦点を当て、このジャンルに不足している要素を取り戻し、ソウル、愛情、黒人文化の要素を表現し、音楽を新たな視点から創造しようとしているようです。

年月が流れるうちに、このアルバムは多くの人々の心に響き、カルト的な存在となったんだ。だけど、その後の数年、次の一歩が見えなかった。インスピレーションが湧かなかったんだ。そんな時、俺は自分自身との向き合う時間を持ち、心の旅を歩むことになった。その過程で「本当に何を求めているのか?」と自問したんだ。答えは「音楽への回帰」だった。そこで「Love Records」という新しいレーベルを設立し、R&Bの真髄を追求することに決めたんだ。真実のソウル、愛、真の黒人のエッセンス、感情の裸のままの表現、そして純粋なバイブを取り戻すんだ。

さらに、彼はR&Bが彼に新しい道を示してくれ、困難な時期を乗り越える力を与えてくれたと語っています。

俺の初恋はR&Bなんだ。
最初に手掛けたプロデュースはJodeciの「Come and Talk to Me」のリミックスだった。その後、Mary J. Bligeとのコラボを経て、ヒップホップ・ソウルの頂点に立った。若かった頃、R&Bは俺を支えてくれた。本当はフットボール選手になるつもりだったんだ。だけど、4年生の時にキャンプでの怪我で夢が壊れた。心が折れて、次のステップが見えなかった。そんな時、音楽が道を示してくれたんだ。NYのクラブでのダンス、バックダンサーとしてのチャンス、そして音楽業界への情熱。それが俺を救ったんだ。人生での困難、大切な人を失う痛み、心の迷い、すべてを乗り越えてくれたのはR&Bだった。だから、今の俺の音楽、成長した俺の声をみんなに聴いてもらいたいんだ。

アルバムについて

今作は、前作「Press Play」(2006)以来17年ぶりのソロアルバムとなりました。この新作には全23曲が収録されており、ラッパーとしては21 SavageBusta RhymesFabolousFrench Montanaなどが、また、業界で30年以上のキャリアを持つディディならではの豪華な顔ぶれであるMary J. BligeBabyfaceThe WeekndKehlaniJohn Legendなどがゲストとして参加しています。

このアルバムは、ディディの自伝的なラブストーリーを音楽的に表現したもので、彼の深い感情や経験が込められています。

今回のアルバムは非常に自伝的な要素が強いと感じる。実際、俺は「自分の魂をさらけ出し、みんなに真実を伝えよう」と決めたんだ。このアルバムは、俺のさまざまな恋愛を通してのラブストーリーだ。それは、若い女性と48時間離れて、電話を切って、ロックインして、つながる経験についてのものだ。俺たちは皆、大切な人と一緒にオフラインの世界に行き、お互いをよりよく知るべきだと思う。そして、俺の物語には音楽的なビジョンがあった。まず、彼女を心地よくさせるためのR&Bのダンスミュージックを作り、次にゆっくりと愛を育む音楽、そして離れないでほしいという気持ちを表現した音楽を作るんだ。そして、俺はR&B界で最高の、一番好きな声が俺の愛の物語を語ってくれる。俺が音楽界に持ち帰っているのは、トレンドやアルゴリズムに従わない、Puffyサウンドだ。世の中にあるものを非難しているわけではないが、多くのものはとても有害なんだ。

収録曲について

「What’s Love」

アルバムの2曲目「What’s Love」には、女性プロデューサーデュオのNOVA WAVが参加しています。彼女たちは、アリアナ・グランデビヨンセリアーナといった大物アーティストの楽曲制作に貢献し、その才能でグラミー賞を獲得しています。この楽曲では、彼女たちが制作を手掛けるだけでなく、その美しい歌声も披露しており、今後のさらなる活躍を期待させる内容となっています。

Diddy feat. NOVAWAV - What's Love

「Stay Awhile」

4曲目の「Stay Awhile」は、ニュージャージー州ユニオン出身のアーティスト、Nijaが参加しています。彼女はシンガーソングライターとしての才能も持ち合わせており、レディー・ガガカーディ・Bへの楽曲提供での実績があります。その実績が認められ、第65回グラミー賞の「ソングライター・オブ・ザ・イヤー」にノミネートされたことも。この「Stay Awhile」では、1980年のThe Policeのヒット曲「Voices Inside My Head」がサンプリングされています。このサンプルは、1996年の702「Steelo」とも共通しており、リスナーには懐かしい感じを与えるでしょう。このサンプリング技法が、曲に特別な魅力とレトロな雰囲気をもたらしています。

Diddy feat. Nija - Stay Awhile

The Police - Voices Inside My Head (1980)

702 feat. Missy Elliott - Steelo (1996)

「Stay Long」

8曲目の「Stay Long」はアトランタ出身のR&Bシンガー、Summer Walkerをフィーチャーしています。この曲では、ディディは登場せず、Summer Walkerがソロで美しい歌声を披露しています。プロデューサーには、ヒットメーカーのTimbalandLondon on da Trackが携わっています。

歌詞は恋人たちの素直な感情と良いコミュニケーションを讃えています。二人はシンプルで直接的なコミュニケーションがどれだけ良いかを歌っており、愛や欲望を伝えるのが難しくないこと、そしてそういうコミュニケーションが関係を良好に保っていることを表現しています。この曲は恋愛の深さと魅力をテーマにしており、Summer Walkerの感情豊かな歌声がそのテーマを一層引き立てています。

Diddy feat. Summer Walker - Stay Long

「Another One Of Me」

10曲目の「Another One Of Me」は、The WeekndFrench Montana21 Savageが参加した曲で、このアルバムから唯一のシングルとしてリリースされました。

この曲は、元々The Weekndのデビューアルバム「Kiss Land」(2013)のために制作されたもので、当初は収録される予定でしたが、最終的には収録が見送られました。その後、The Weekndのラジオ番組「Memento Mori」のエピソード9で一部がプレイされたものの、お蔵入りになると思われていました。しかし、2021年になり、French MontanaがHOT97のインタビューでこの曲の存在を明かし、さらにディディがこの曲を聴き、大ヒットの可能性を感じたと明かしました。また、21 Savageもこの曲に参加していることが判明しました。

そして、待望の2023年8月、The Weekndはドイツツアーでこの曲を初披露。続いて彼は、インスタグラムでこの曲への深い想いを公表しました。

「Another One of Me」... 2012年にたった1人のアーティストを思い浮かべて書いた曲...@diddy
これがレジェンド的なBad Boyの曲になることをずっと想像していた。
この曲では若い@iammariowinansのような気分だ...
もうすぐリリースされるよ!

Diddy feat. The Weeknd, 21 Savage, French Montana - Another One of Me

「I Like」

18曲目「I Like」には、ニューヨークのR&Bシンガー、Mary J. Bligeが参加しています。この曲は、Mary J. Bligeの1994年のヒット「Don't Go」をイントロでサンプリングし、彼女の特徴的なサウンドを取り入れています。

「Don't Go」は、Mary J. Bligeのアルバム「My Life」(1994)に収録されており、このアルバムはディディが大部分をプロデュースした作品でした。そのため、「I Like」Mary J. Bligeディディの初期の作品を思い起こさせる、ファンには懐かしい感じの曲となっています。

Diddy feat. Mary J. Blige - I Like

Mary J. Blige - Don't Go (1994)

おわりに

ディディは今回の新作アルバムの制作にあたり、多くの実績を持つプロデューサーやソングライターを招聘しました。さらに、新進気鋭のアーティストとしてCoco JonesBurna BoyJozzyをゲストとして迎え、多彩な音楽性を展開してリスナーを魅了しています。
アルバムは後半に進むにつれて、心地よいスローなR&Bのトラックが増え、まるでDJが手掛けるミックスを体感するかのような深い没入感を提供しています。

過去にディディが「R&Bは死んだ」との発言をしたことは大きな話題となりました。しかし、彼の真意は、R&Bの再評価と再燃を促すことにありました。彼のこの発言は、R&Bジャンルへの新たな関心を呼び起こし、その輝きを取り戻すための戦略的なものであったと後に明らかにされました。

「R&Bは死んだ」と発言したとき、俺の目的はR&Bの世界に再び火をつけ、その輝きを取り戻すことだった。俺の言葉は、まさにそのためのものだった。今、俺たちはR&Bの新時代を迎えている。R&Bから一時的に距離を置いた後、再びその世界に戻ったとき、俺はそのジャンルの欠点や、ラジオのサポートの不足、そして情熱の喪失を感じた。俺がそう言ったのは、批判の意味でではない。それは、俺たちのルーツ、黒人の文化に立ち返り、テクノロジーから一歩引いて、感情に焦点を当てることを促すためだった。感情がなければ、音楽は生きていけない。だから、俺はその感情を取り戻すためにここにいる。確かに、多くのアーティストが異なるスタイルのR&Bで新しい境地を開拓している。そして、それぞれがその道を切り開いているのを見てきた。この新時代には、Summer WalkerやSZA、The Weeknd、Brent Faiyazといった才能あるアーティストが参加している。だが、俺たちはもっと声を大にして、もっと多くのリソースを手に入れ、競争の場に立たなければならない。R&Bは、その価値を認められ、尊重されるべきだ。R&Bとヒップホップは、同じものではないんだ。

ディディの探求心と独創性は、R&Bの伝統を称えつつも新たな境地を切り開く力となっています。彼の音楽は、過去と現在、伝統と革新が交差する場所で生まれています。最新アルバム「The Love Album: Off The Grid」は、まさにこのクロスオーバーの精神を体現し、彼の愛と尊敬を込めたR&Bへのオマージュとなっています。ディディは、音楽を通じて人々の心に触れ、R&Bの普遍的な魅力を再確認させる存在となりつつあります。彼の努力が、R&Bジャンルの更なる発展と、新たな音楽的探求を促すきっかけとなることでしょう。
ディディのリーダーシップのもと、R&Bは新しい時代の夜明けを迎え、その美しい響きがさらに多くの心に届けられることとなります。


今回紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️

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