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JAY-Zとのビーフに言及!ナズがニューアルバムをドロップ! Nas - King’s Disease III (2022)

デビューアルバム「Illmatic」で鮮烈なデビューを飾り、その後も「It Was Written」「I Am...」と2作連続で全米チャート1位を獲得し、The Notorious B.I.G.の死後、ニューヨークヒップホップをリードしてきたNas(ナズ)

後にJAY-Zとのビーフに発展するも、アンサーソングが高く評価され、当時低迷していたナズの人気を復活させ、その後のアルバム「Hip Hop Is Dead」「Untitled」「Life Is Good」では3作連続で全米チャート1位と、その人気を不動のものにしました。

そんな彼がニューアルバム「King’s Disease III」(2022)をドロップ。

ここでは、このアルバムについて解説します。

レーベル  : Mass Appeal
リリース日 : 2022年11月11日
名前    : Nas
本名    :    Nas / Nasir bin Olu Dara Jones
年齢    : 49歳


出身地   :    ニューヨーク

「King’s Disease」シリーズとは

2020年、ナズはプロデューサーのヒット・ボーイをエグゼクティブ・プロデューサーに据え、アルバム「King's Disease」をリリース。
前作「Nasir」ではDiddyKanye WestThe Dreamといったベテランがゲスト参加していましたが、本作ではLil DurkBig SeanAnderson .Paak, Don ToliverASAP FergFivio Foreignといった中堅から次世代ラッパーがゲスト参加しているのが特徴です。

この人選にはヒット・ボーイが大きく関わっており、彼はその制作過程を次のように語っています。

一緒にやっている仲間たちと自然にできたんだよね。
Big Seanは自分のアルバムを作っていたんだけど、ナズが帰ろうとしているところに、彼が現れたから、バースで参加することにしたんだ。
Don Toliverのフックはすでに持っていたんだ。Donとは何度もジョイントしているからね。このフックはナズにぴったりだと思ってた。
それをかけたら、彼は夢中になってバースを作ってくれたよ。
Dr. Dreの「Full Circle」はナズDreのチームが作ったんだ。
Anderson .Paakの曲は、彼と一緒にリリースすることになったから作ったんだ。すべてが自然だったよ。

若手ラッパーが加わることで、サウンド面で現行のヒップホップを意識した作品となり、アルバムはグラミー賞「最優秀ラップアルバム」を受賞、意外にもナズにとって初のグラミー受賞作となりました。

Nas feat. Don Toliver & Big Sean - Replace Me

翌年には、1996年のシングル「If I Ruled the World (Imagine That)」で共演したローリン・ヒルをはじめ、ベテランのエミネムEPMD、さらにはYGなど、多くのアーティストをフィーチャーしたアルバム「King's Disease II」をリリース。
全米チャート3位、R&B/Hip Hopチャート1位を獲得し、グラミー賞「最優秀ラップアルバム」に2年連続でノミネートされています。

Nas feat. Ms. Lauryn Hill - Nobody

ゲストの不在についてHit-Boyが明かす

2021年のクリスマスに9曲入りのアルバム「Magic」をサプライズリリースしたナズは、収録曲「Ugly」の中で「KD3 on the way, this just to feed the buzz(King’s Disease3が間も無く登場、これは単なる話題作りに過ぎない)」とラップし、「King’s Disease III」の序章としてこのアルバムをリリースした模様です。

Nas - Ugly

それから約1年後にリリースされた「King’s Disease III」は、今作を含め4作連続でヒット・ボーイがエグゼクティブプロデューサーを務め、客演なしの16曲とボーナストラック1曲からなる全17曲を収録。

客演アーティストが全くいないのは、ナズの2002年のコンピレーションアルバム「The Lost Tapes」以来となりました。

ただし、ヒット・ボーイの2歳の息子が「Once a Man, Twice a Child」を含む数曲でバックヴォーカルを担当していると、ヒット・ボーイはInstagramで述べています。

KD3のレコーディング中は毎日お父さんモードだったよ。
2歳の息子C3がアルバムで初めてプロダクションのクレジットされたんだ。
(once a man twice a childの声は彼だよ)
他のジョイントでもバックで参加しているかもしれない😂❤️。
大きな愛と感謝 @Nas !

Nas - Once a Man, Twice a Child

また、ゲストアーティストが誰もいない事について、ヒット・ボーイは次のように明かしています。

正直なところ、アルバムの制作を深く考えてから、誰がその一部となり得るかを考え、コンセプトを練ったんだ。
パソコンにある色々なアーティストのフィーチャリングをいくつか取り出して、いろいろ試してみたけど、俺らがソロでやっているようなレベルでは、何もつながりがなかったんだ。
これはNasにとってフィーチャリングなしの史上初のアルバムだと思うから、それ自体がイルなことなんだ。

こうした背景もあり、今作は「King’s Disease」シリーズの中で最もブーンバップの楽曲が収録されており、多くのサンプリングソースが使用されているのも印象的です。

その中でも8曲目「Reminisce」は、Mary J. Bligeの大ヒット作「You Remind Me」をサンプリングしており、イントロから彼女の歌声が早回しで使われてます。

Nas - Reminisce

Mary J. Blige feat. Greg Nice - You Remind Me (1992)


曲中でJAY-Zとのビーフについて触れる

アルバム3曲目「Thun」は、クイーンズブリッジ団地訛りで「son」という意味で、この曲ではJAY-Zとのビーフについて触れています。

No beef or rivals, they playin’ "Ether" on TIDAL
ビーフもライバルもいない、彼らは TIDAL で「Ether」をプレイしている
Brothers can do anything when they decide to
ブラザーはやると決めたら何でもできる
In a Range Rover, dissectin’ bars from "Takeover
レンジローバーで「Takeover」のバースを分解しながら
Sometimes I text Hova like "Nigga, this ain't over", laughin’
時々俺はHova(JAY-Z)に「これは終わっていない」ってメールを送って笑ってるよ

これは、90年代にJAY-Zからアルバムへの出演依頼があったものの、ナズがドタキャンしたことを発端にビーフへ発展し、JAY-Zは彼へのディスソング「Takeover」をリリース。 それに対してナズはアンサーソング「Ether」を発表、この曲は後にヒップホップ史で「最もワイルドなトラック」と称され、1999年のアルバム「Nastradamus」の失敗を帳消しにして一気に人気を回復させました。

更にこれにJAY-Zナズ「Got Ur Self a Gun」をビートジャックした「Supa Ugly」でさらに応戦。 この曲はナズのガールフレンドと娘について言及し、彼のガールフレンドとの不倫を生々しく語っています。 これを聴いたJAY-Zの母親は嫌悪感を示し、ナズとその家族に謝罪するよう伝え、JAY-Zは2001年12月にHot 97に出演した際に謝罪しています。

母親が電話をかけてきて『あれは行き過ぎだ』って言ったんだ。
母親は音楽のことで電話してきたことは一度もない。
だから『わかった、わかった、わかった。俺が終わらせに行く』ってね。
もう一度、謝るよ。
女性の気持ち(Nasの元恋人の)気持ち、また俺の母親のことまで考えていなかったような気がするんだ。
ただ『相手の無礼のレベルに応えてやろう』って感じだったんだ。

2005年、DiddyKanye WestBeanie Sigelが出演したサプライズコンサートで2人はステージで共演し、ビーフは終結し、翌年、ナズは当時JAY-Zが社長を務めていたDef Jam Recordingsと契約を結んでいます。
今では2人の昔話的な笑い話になっているようで、曲中ではナズJAY-Zを冗談が通じる友人としてラップしているように感じられます。

Nas - Thun


おわりに

Nas & Hit-Boy

これまでの「King’s Disease」シリーズは、サウンドの傾向やアーティストのラインナップでヒップホップのトレンドを捉えることを意識して制作していたように感じられますが、今回はナズのソロ作ということもあり、ニューヨークヒップホップらしいサウンドで、ナズの個性が光る作品となりました。

特に往年のヒップホップ好きや、最近のRAPシーンに物足りなさを感じている人には、一度は体験してほしいアルバムです。

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