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ナズのニューアルバム「Magic」が気になる!3作連続でプロデュースを手掛けたヒット・ボーイって何者?

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ご存じの通りデビューアルバム「Illmatic」(1994)で、一躍その才能を開花させ、リリシストしても広く知られるようになったNas(ナズ)

「Illmatic」(1994)は、ヒップホップ史上最高のアルバムのひとつとされ、東海岸ヒップホップの復活に大きく貢献した作品です。

その証拠にナズは2013年にハーバード大学の特別研究員のようなポジションに任命されており、ポエトリー教授に自身のリリックを解説したこともあります。

その後も長らくヒップホップシーンをリードする彼は、アルバム「King's Disease」(2020)で自身初のグラミー賞「ラップアルバム賞」を受賞。

翌年もペースは衰えず、続編のアルバム「King's Disease II」(2021)をリリースし、シーンの最前線に立ち続けています。

そんな2021年を締めくくるかのように、サプライズでアルバム「Magic」(2021)をリリース。

前述した「King's Disease」(2020)「King's Disease II」(2021)でエグゼクティブプロデューサーを務めたHit-Boy(ヒット・ボーイ)が本作でも全曲プロデュースをしています。

今回はアメリカを代表するリリシストであるナズに抜擢された名プロデューサー、ヒット・ボーイをピックアップ。

ナズについての記事はこちら。

レーベル  :   Mass Appeal
リリース日 : 2021年12月24日
名前    : Nas, Hit-Boy
本名    : Nas / Nasir bin Olu Dara Jones
        Hit-Boy / Chauncey Alexander Hollis Jr.
年齢    : Nas 48歳 Hit-Boy 34歳


出身地   :    Nas ニューヨーク
        Hit-Boy カリフォルニア州フォンタナ

Nas - Magic (2021)

Polow Da Donとの出会い

ヒット・ボーイを語る上で外せないのは、プロデューサーのPolow Da Don(ポロウ・ダ・ドン)です。Ludacris(リュダクリス)Ciara(シアラ)Fergie(ファーギー)といったアーティストのヒット曲を手がけ、2000年代半ばのシーンの発展に大きく貢献しました。

ヒット・ボーイは音楽SNS「My Space」でポロウ・ダ・ドンから見出され、

「直接会ってプロ契約の話をしよう」というメッセージを受け取りました。

ポロウとは、チェイス(プロデューサー)に出会う数ヶ月前くらいにマイスペースで出会ったんだ。
ちょうどファーギーの「London Bridge」を聴いたばかりで、誰が作ったのか知りたかったんだ。
ググってみたら、彼だとわかって、マイスペースに追加したんだ。
余計なことは何も考えなかったよ。
翌日、ロサンゼルスのレコードプラントスタジオに行き、60曲ほどプレイした。
彼はその場に座って全部聴いて「よう、お前と契約したい」と言ってきた。
その場ですぐにね。
これが2006年の8月のことで、実際に彼と契約したのは2007年の1月だったよ。


またヒット・ボーイは、ブランド集合体 "Surf Club"(サーフ・クラブ)の創設メンバーの1人でもあります。

サーフ・クラブは、多くのソングライターやプロデューサーなどのアーティストで構成されたチームになっています。

サーフクラブは若いアーティスト、ライター、プロデューサーの集合体だ。みんなで意気投合したチームなんだ。
サーフクラブの中には色んな奴がいるよ。
みんな個々にやっているようなものだけど、それぞれ全部がサーフクラブといえるんだ。
メンバーに関することは、すべてitsthesurfclub.comで見ることができるよ。

メンバーのChase N.Casheヒット・ボーイは2007年、Interscope Recordsのインプリントであるポロウ・ダ・ドンのレーベル "Zone 4" とリンクし、業界へのスタートを切りました。

G.O.O.D. Musicとの契約

当時Kanye West(カニエ・ウェスト)は、5枚目のアルバム「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」(2010)のプロモーションのために「GOOD Fridays」というイベントを実施していました。

これは彼が毎週無料で新曲を発表するもので、「Power(Remix)」「Monster」などのヒット曲が含まれています。

このタイミングでヒット・ボーイはシングル「Christmas in Harlem」をプロデュースし、カニエとの関係を築いていきます。

Kanye West feat. Teyana Taylor & Cyhi the Prynce - Christmas in Harlem (2010)


俺はずっとカニエにビートを送っていたよ。
実は、彼のアルバム「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」(2010)に参加しようとしたんだけど、彼の従兄弟のRicky(リッキー)が『Ye(=カニエ)は君のビートをすごく気に入っているけど、今のサウンドには合わないみたいだよ』って言ってきたんだ。
アルバムがリリースされた夜、まさにカニエがニューヨークの小さな劇場でライブしたその夜、リッキーから電話がかかってきて「よう、カニエがお前のビートでクリスマスソングを録音するみたいだ」って言われたんだ。
俺は「え?そんなのおかしいよ!」って思わず言ってしまった。
だって、あのビートがクリスマスソングだとは思わなかったからさ。「Christmas In Harlem」をやったとき「くそっ、これはヒップホップの歴史だ」って思ったよ。
カニエは「Christmas In Harlem」をレコーディングした後、リッキーに「もっとヒットボーイのビートが必要だ」と言い続けていたらしい。
だから俺らは(Watch The Throneのための)曲を作ったんだ。

2011年にカニエ率いるG.O.O.D. Musicと契約を交わし、カニエJay-Z(ジェイ・Z)の共同制作アルバム「Watch The Throne」(2011)からシングルの「Niggas in Paris」をプロデュース。

R&B/Hip Hopチャート1位に輝き、 第55回グラミー賞で「ベストラップパフォーマンス」と「ベストラップソング」を獲得。現在のクラブでもピークタイムに欠かせない1曲になりましたね。

Jay-Z & Kanye West - Ni**as In Paris (2011)

2012年に同レーベルのコンピレーションアルバム「Cruel Summer」から「Clique」をプロデュース。ジェイ・ZBig Sean(ビッグ・ショーン)が参加し、R&B/Hip Hopチャート2位を記録。

Kanye West, Jay-Z & Big Sean - Clique (2012)

G.O.O.D. Musicを離れた後、メインストリームでも脚光を浴びる

ヒット・ボーイは2013年にG.O.O.D. Musicを離れた後も、アーティストから多数のオファーを受け、音楽業界でその名が注目されるようになりました。世界の歌姫としても知られるBeyoncé(ビヨンセ)の5枚目のアルバム「Beyoncé」(2013)では3曲をプロデュース。発売から3日間で、60万枚以上のセールスを記録して全米チャート1位を獲得。グラミー賞では「アルバムオブザイヤー」を含めた5部門にノミネートされるなど、この年を代表する1作になったのではないでしょうか。

Beyoncé - XO (2013)

2016年にはRihanna(リアーナ)のアルバム「Anti」から「Woo」をプロデュースし、全米アルバムチャート1位を獲得。音楽メディア誌ローリングストーンが選ぶ「500 Greatest Albums of All Time」に選出され、2017年のグラミー賞では「ベストアーバンコンテンポラリーアルバム」を含む6つのノミネートを獲得しています。

Woo - Rihanna (2016)

シングルのプロデュースからアルバムのトータルプロデュースまで

その後もA$AP Ferg(エイサップ・ファーグ)The Game(ザ・ゲーム)Eminem(エミネム)などを手掛け、2018年にはTravis Scott(トラヴィス・スコット)のシングルSICKO MODEをプロデュース。全米チャート1位に輝き、グラミー賞「ベストラップソング」にノミネート。「SICKO MODE」が収録されたアルバム「Astroworld」(2018)も全米チャート1位を獲得し、2010年代のベストアルバムの1つとも呼ばれています。

Travis Scott feat. Drake - SICKO MODE (2018)

勢いに乗ったヒット・ボーイは、Nipsey Hussle(ニプシー・ハッスル)のシングル「Racks in the Middle」(2019)をプロデュースし、グラミー賞「ベストラップパフォーマンス」を受賞。

Nipsey Hussle feat. Roddy Ricch & Hit-Boy - Racks In The Middle (2019)

翌年には、Big Sean(ビッグ・ショーン)のアルバム「Detroit 2」、またナズのアルバム「King's Disease」でエグゼクティブプロデューサーを務めたヒット・ボーイ。どちらもグラミー賞にノミネートされ、ナズはキャリア初の「ベストラップアルバム」を受賞。

Big Sean feat. Nipsey Hussle - Deep Reverence (2019)

2021年にはナズの続編「King's Disease II」で再びエグゼクティブプロデューサーを務め、長らく業界を牽引してきた彼の右腕的存在になったように思えます。

Nasの「Magic」

昨年のクリスマスイブに何の予告もなくサプライズで発売された「Magic」は、全9曲30分弱、1曲4分以内というコンパクトな作品に仕上がっています。

また前作ではLauryn Hill(ローリン・ヒル)エミネムA Boogie wit da Hoodie(エイ・ブギー・ウィット・ダ・フーディ)などバラエティー豊かなアーティストが参加していましたが、今作はA$AP Rocky(エイサップ・ロッキー)、プリモことDJ Premier(DJプレミア)のみがゲスト参加ととなっています。

Nas feat. A$AP Rocky & DJ Premier - Wave Gods (2021)

ゲストの2人参加した「Wave Gods」のイントロでは、DJプレミアが名曲のフレーズをスクラッチし、ナズは自分たちが現代のGang Starrのようだと言われたとラップしているのも印象的です。

Me and Hit-Boy, they say we like the new Gang Starr
俺とヒットボーイ、皆が言う、俺たちは新しいギャングスターのようだと

過去の作品と聞き比べても分かるように、ニューアルバム「Magic」(2021)は、ナズの原点回帰のような作品だといえます。

Mobb Deep feat. Nas and Raekwon - Eye for a Eye (Your Beef Is Mines) (1995)

Kool G Rap feat. Nas - Fast Life (1995)

Dr. Dre feat. Snoop Dogg - Nuthin' but a 'G' Thang (1992)

ニューヨークヒップホップのシンボルでもあるナズと現在のヒップホップシーンに欠かせない才能溢れるプロデューサー、ヒット・ボーイの新作をこの機会に耳にしてみてはいかがでしょうか。

こちらで紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️

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