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亡き歌姫の新曲は賛否両論?! Aaliyah & The Weeknd - Poison (2021)

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亡くなった今でも「R&Bのプリンセス」と呼ばれるAaliyah(アリーヤ)

ビルボードは全世界で2400万枚以上を売り上げ、グラミー賞に5回ノミネートされた彼女を、過去25年間で最も成功した女性R&Bアーティスト第10位に選出しました。

輝かしいキャリアを築いていた道半ばの2001年、アリーヤは飛行機事故に巻き込まれ、22歳になったばかりの若さでこの世を去りました。

事故についての記事はこちら。

2021年でアリーヤの死から20年が経ち、彼女が生前に残したシングル「Poison」(2021)がリリースされました。

The Weeknd(ザ・ウィークエンド)をゲストに迎え、新旧スターによる夢の共演が実現。

ここでは、「Poison」の解説とリリースに至るまでの背景をご紹介します。

レーベル  :   Blackground Records 2.0
リリース日 : 2021年12月17日
名前    : Aaliyah & The Weeknd
本名    : Aaliyah / Aaliyah Dana Haughton
                            The Weeknd / Abel Makkonen Tesfaye
年齢    : Aaliyah 22歳 (2001年死去) The Weeknd 31歳


出身地   :    Aaliyah ミシガン州デトロイト
        The Weeknd カナダ、トロント

Aaliyah & The Weeknd - Poison (2021)

アリーヤの叔父

「Poison」(2021)がリリースされた背景には、アリーヤの叔父Barry Hankerson(バリー・ハンカーソン)の存在が大きいようです。

彼は、姪のアリーヤをメジャーレコード会社と契約させようとしましたが失敗し、1993年にBlackground Records(ブラックグラウンド・レコーズ)を自ら設立。

当時マネージメントをしていたR. Kelly(R.ケリー)とのコネクションを生かし、アリーヤのデビューアルバム「Age Ain't Nothing but a Number」(1994)を大手レコード会社のJive Records(ジャイブ・レコーズ)から配給する契約を取り付けました。

このアルバムが好評だったため、彼女のプロデューサーであるTimbaland(ティンバランド)はブラックグラウンド・レコーズと契約。
その後ブラックグラウンド・レコーズは、Tank(タンク)JoJo(ジョジョ)Toni Braxton(トニー・ブラクストン)などのトップアーティストと契約を交わしています。

そんな幸先の良いアリーヤファミリーのスタートの裏には闇の部分もありました。

R.ケリーはアメリカを代表する大物シンガーですが、実はアリーヤと偽のIDを使用し偽装結婚をしたことで問題視されていました。当時15歳だったアリーヤを18歳と偽り、27歳のR.ケリーとの結婚許可証を提出。

検察は、R.ケリーが未成年者との性行為に関連する刑事告発から身を守り、彼女が自分に不利な証言をするのを防ぐためにこの結婚を利用したと言っています。後に結婚は取り消されています。

R.ケリーは、1994年から2018年にかけて11人の少女や女性に対する虐待の疑いに関する22の容疑でも起訴され、2021年9月にすべての容疑について有罪判決が下されました。

これは2019年にドキュメンタリー番組「サバイビング・R.ケリー:全米震撼!被害女性たちの告発」が公開されたことによります。

この番組はアメリカの優れたテレビ番組に与えられるエミー賞にノミネートされるほど注目を集め、これをきっかけに本格的な捜査が開始されました。


別件では、2007年にトニー・ブラクストンが元マネージャーのバリー・ハンカーソンに対し1000万ドルの訴訟問題を起こしています。

彼女の訴えによると、バリー・ハンカーソンは個人的な利益を優先させるために、両者に嘘をつき、彼女の元レーベル(Arista Records)(アリスタ・レコード)と彼女との関係を悪化させたということです。

この訴訟はお互いの和解により決着しましたが、これによってトニー・ブラクストンが契約できるレーベルが一時的に制限されてしまいました。

過去作がストリーミングサービスなどで再リリース

ブラックグラウンド・レコーズは、2021年にブラックグラウンド・レコーズ2.0として再始動。

2021年8月、同社とカリフォルニアのレコードレーベルEmpire Distribution(エンパイア・ディストリビューション)は、かつてのアーティストのディスコグラフィーをフィジカル、デジタル、ストリーミングサービスで再リリースする契約を締結。

しかし、アリーヤの母親と兄は、ブラックグラウンド・レコーズ2.0の発表に先立って声明を発表し、再リリースについて

アリーヤの音楽を透明性や完全な説明なしにリリースしようとする不謹慎な試み」

と非難しています。

これまでストリーミング・サービスでは、デビューアルバム「Age Ain't Nothing But a Number」のみ配信されていましたが、2021年8月20日に「One In A Million」が再リリース。

その数週間後にはアルバム「Aaliyah」(2001)がリリースされ、同時にタンクティンバランドジョジョトニー・ブラクストンの作品もストリーミング・サービスで配信されることになりました。

バリー・ハンカーソン「Age Ain't Nothing But a Number」以外のアリーヤのアルバムの原盤を所有しており、家族の反対を押し切って、より現代の音楽シーンにマッチしたビジネススタイルに転換したようです。

Poison

このアルバムは、2008年に亡くなったプロデューサー、Static Major(スタティック・メジャー)アリーヤへ楽曲提供したもので、二人の遺作になりました。

スタティック・メジャーについての記事はこちら。


楽曲はアリーヤらしいスローなR&Bナンバーで、ザ・ウィークエンドとの掛け合いが心地よく、まるで今も生きているかのような錯覚に陥るほどです。ここでは、アリーヤの1バースを抜粋してご紹介します。

How can I explain myself to you?
Questions keep lurking through my mind
Is it the lover for the time?
I've given my heart, my joy, my soul to you
If it is real, I sure can't see
Gotta start lookin' out for me
And in my, my heart won't take no more
I know it seems that I don't care
Sometimes my wave of love is there
I feel it's time for me to take a stand
See, you have given me no choice
I feel I must exercise my voice and say

※和訳
どうやってあなたに説明したらいいんだろう?
私の心の中にはいくつかの疑問が潜んでいる
その時だけの恋人なの?
今でも私の心、私の喜び、私の魂をあなたに捧げているわ
もしそれが本当でも、はっきりと目で確かめることはできない
私は自分を大切にしなきゃならない
私の心はもう耐えられない
気にしていないようにしているのは分かっている
ときどき、愛のさざ波がそこにあるの
まさに今が1歩踏み出すときだと思うわ
ほら、あなたは私に選択の余地を与えなかったでしょう
私は自分の声をふり絞って言わなければならないと思う

落ち着いたビートの曲ですが、2人のハーモニーで心を鷲掴みされるような気分です。

このバースの後にザ・ウィークエンドのコーラスが入りますが、その続きのリリックは、

This feeling, there’s no drug that can compare
この感情、どんなドラッグにも代えられない

これが示すように曲の中では割り切れない恋愛の気持ちが綴られています。

1バース目では恋人への複雑な感情を打ち明けていて、2バース目では、愛する気持ちを捨てきれないままお互い別の人生を歩んでいる様子を歌っています。

「それまでは、友達としていよう、ああ、いつの日か」
とその関係に無理やり終止符を打っているような表現が印象的です。

アリーヤが歌い上げる切ないリリックは、多くのリスナーの共感を呼んだと思います。

ファンからのクレーム

今作は当初、アリーヤのボーカルの音質が非常に悪いとされ、特にザ・ウィークエンドのボーカルの鮮明さに比べ、反発を招いたようです。

アリーヤのファンからは

デモのアリーヤのボーカルが不明瞭すぎる。エンジニアがミックスして良い音に仕上げることができなかったのなら、この曲はリリースされるべきではなかった。
曲自体はいいけど、アリーヤの音質はクソだし、それに彼女は20年前に死んでいる。
彼女を休ませてあげてほしい、利益のために彼女を搾取しようとするのはやめてくれ。

とSNS上で多くの苦情が寄せられ、それを見た今作のオーディオエンジニアであるMIKE DEAN(マイク・ディーン)が、よりクリアになったアップデート版をリリースしました。

ミキシングとマスタリングを行ったよ。
今新たにミックスアップしているけど、アップル・ミュージックのみでね。
他のDSPでも近々アップデートするよ。
Appleはいつも更新が早いよ。
Baby Girls(=アリーヤ)のパートでより良いアカペラ(=歌声)が提供されたよ。

終わりに

Poisonは、2012年にDrake(ドレイク)と共演したシングル「Enough Said」以来、約9年ぶりの新曲となりました。リリースに際し、バリー・ハンカーソンは次のように明かしています。

アリーヤの)音楽を生かし続けてくれた彼女の多くのファンの皆さんに感謝するよ。
時間がかかってしまったことは残念だけど、家族を突然失うと、そのような悲しみに対処するのに時間が掛かるんだ。
彼女の遺志を継ぐために、アリーヤの音楽をリリースすることにしたんだ。

またインタビューでは「Unstoppable」というタイトルの4枚目のアルバムをリリースすると明言し、ドレイクスヌープ・ドッグニーヨクリス・ブラウンフューチャーが参加することも明かしています。

アリーヤの未発表ボーカルが使用されるようですが、これもまた様々な論争が巻き起こりそうです。

残念ながら亡くなったアリーヤのコメントを聞くことはできませんが、彼女が遺した作品たちが素晴らしいことに間違いはありません。これからも後世に語り継がれていくことでしょう。

こちらで紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️

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